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読書と映画と観劇と

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待機晩成*笹野高史

taiki.jpgあえて自らをワンシーン役者と自称する笹野高史。『武士の一分』 で日本アカデミー賞 最優秀助演男優賞を受賞した男はどんな半生を送り、その節目でどんな壁にぶつかり乗り切ってきたのか。自伝的仕事論。
(笹野高史)1948年兵庫県生まれ。日本大学芸術学部中退。ミュージカル『ミスサイゴン』、映画 『男はつらいよ』 シリーズで活躍。『武士の一分』 徳平役で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。出演作品に 『おくりびと』 『剣岳 点の記』 など多数。

軽いノリの文章でサクサク読ませますが、ポリシーある役者人生を歩まれてきた笹野さんの半生がよく分かる一冊になっています。人生は出会いですね、やっぱり。私もこれまでの数々の出会いに感謝しつつ、これからもどんどんよい出会いを探さないと、と思いました。

『ワンシーン役者』 を自称されている笹野さんですが、何の何の、です。武士の一分のみならず、おくりびと、歌舞伎ニューヨーク公演(歌舞伎役者じゃないのに出演!)、そしてあのミス・サイゴンではエンジニア役を!それは知らなかった!あの、I氏(と本文にはある)とダブルキャストでエンジニアを!既に大物一流俳優さんじゃないですか…歌もダンスも沢山あるエンジニアを演じてらしたとは。笹野さんはやはり只者じゃなかった。

その笹野さんがH市の市民大学講座に講演で来てくださったのです。その折も 『もっと自分は良くできるはずだ、というのは思い上がりなのです』 という一言が、沁みました。芝居をしていてももっとあのシーンでは巧くできたのに、と後悔するのはとんでもない思い上がりだ。自分が今できる精一杯をやれば、それが自然と認められるようになることを、武士の一分で学んだ、と言われていました。人生の様々なシーンに当てはまる、名言をいただきました。

温厚に見える笹野さんも、お若い頃は結構いろいろあったそうです、ケンカもなさったそうです。それでもなお周りの方々に感謝し、若い俳優も尊敬し続けるその姿勢が、今の笹野さんを作ったのですね。

よい邦画に貢献し続ける笹野さんのご活躍も、これからも期待しております。

評価:(5つ満点)
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イニシエーション・ラブ*乾くるみ

initiationlove.jpg目次から仕掛けられた大胆な罠、全編にわたる絶妙な伏線、そして最後に明かされる真相。80年代を舞台にほろ苦くてくすぐったい恋愛ドラマ…だったはずが最後の2行ですべてが覆る。大仕掛けがメインの小説。
(乾くるみ)男性。1963年静岡県生まれ。静岡大学理学部数学科卒業。 『Jの神話』 でメフィスト賞を受賞。他の著書に 『匣の中』 『塔の断章』 など。

まず著者乾氏は男性、だそうです。ペンネームも女性的だけど、こんな本を男が書いたのか…という意味でもゲッソリ来るような、内容です。最初に申し上げますが、本当に読書がお好きな方は読む必要がないですよ。内容としてはほんっとうにつまらない本です。しかしあえて読んだのは、ラスト2行ですべてがひっくり返る、というこの本の大仕掛けを見てみたかったからです。いったい何がラスト2行なのか…で絶対に最後の2行を先に読んではいけません。読んだらもう、絶対読みたくなくなるから(笑)。

という長い前書きは置いておいて、SIDE AとSIDE Bという2つのストーリーがあります。正直SIDE Aはものすっごくつまらないですが、我慢我慢して読んでください。それもラストの大仕掛けのため。そしてSIDE Bに入り徐々に感じてくる数々の違和感、その正体が段々と明らかになってきて…。

私は文庫版を読んだので、最後に解説が付いていて本当に良かったです。この解説がなかったら今でもこの小説の意図が分かってなかったと思います、解説の方本当にありがとうございます。あったまいい方は目次で分かるのでしょうね、このトリック。本書はトリックそのものを楽しむ小説なので人物描写とかかなりステレオタイプですが、そういうことを突っ込んではいけません。これは小説ではなくゲームだと思って読み進んでください、ですから小説としての評価は低いですが、こういうエンタメもたまには面白いかな、と思います。

評価:(つまり小説としての評価は2ってこと?)

手帳切り替えの時期

hoboniti.png1年だけのほぼ日手帳さようなら
10月が終わりました。いつもにまして怒濤の1ヶ月でした。ブログをもう辞めたのかと思われた方も多かったと思います…すみませんでした。読書+映画感想は追々UPします…年末の集計までには何とか!

10月は小中学校の行事が満載であることに加え、9月からのアルバイト先での人間関係であまりにも疲弊しており、この月を無事に(でもなかったけど)こなせたことには本当に感謝です!皆様本当にありがとうございました。アルバイトは11月一杯で退職させてもらえることになりました、そちらでも本当に感謝です。

さて少し前のブログのひとこと欄に書きましたが、どうやら私には 『そのうち暇になったら』 という時期は、永遠に来ないと見た方がいいようです。友人にそう話したら  『うん、今頃気付いたの』 と言われてしまいました(笑)。
そのうち暇になったらあの勉強をしよう、という若干大掛かりなものから、暇になったらこの雑誌を片付けよう、といった微細なことまで、どれ一つとして 『そのうちやりましょう』 を片付けられたことがありません。ということでこういった 『急務ではないがいつか片付けるべき案件』 も、予定としてスケジュールに組み込まない限り、永遠に片付けることができないのではないかという事実に気付きました。
 

オーケストラ!

orchestra.png1980年ロシア ボリショイ交響楽団から多くのユダヤ人が連行されそれに反対した天才指揮者のアンドレイも楽団を解雇されてしまう。アンドレイはいつか復職する日を夢見て30年にもわたり劇場清掃員として働いていたがある日パリのシャトレ座から送られてきた出演依頼を見つけ偽のオーケストラを結成することを思いつく。

ロシア語が飛び交う映画ですが、フランス映画です。フランス風のギャグが満載なのでロシアの人観たら怒らないかな?と思ったり。

全然上記のようなストーリー内容を把握しないで観に行ったら、最初のうちは意味がよく分かりませんでした。ユダヤ人が連行されたことに反対して解雇された、なんてシーンは最初は全く出てこないから、なんでなんで?と思っているうちにややウトウトしちゃって…ダメじゃん(笑)。

やや単調な部分も多いのですが、最後にオーケストラに奇跡が起こるシーンはやっぱり観ていていいものですね。

評価:(5つ満点)

優しいおとな*桐野夏生

yasasii.jpg近未来の渋谷でしたたかに生き抜くホームレスの少年イオン。彼は家族を持たず信じることを知らない、唯一の家族鉄と銅の兄弟を除いては。ある日鉄と銅が渋谷に現れたことを知ったイオンは彼らを捜し始めるが。読売新聞連載を単行本化。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞、『女神記』 で紫式部文学賞、『ナニカアル』 で島清恋愛文学賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。

待ちに待った桐野氏の新刊。今回はYA向けかな。いやこれはやっぱり大人社会への警鐘か?近未来の渋谷に暮らすホームレス少年イオンを主人公に、ホームレスの少年少女ら、彼らから搾取する大人、複雑化した社会を鋭く描いています。

アンダーグランドと呼ばれる地下鉄の空洞に暮らすホームレスが出てきますが、地下は暗いし寒いし食料もない劣悪な環境であるのに、なぜ彼らはそこを選んだのか。それは不自由な地下であれば、誰もが平等だからだ、というアンダーグランド組のリーダーの理論にはかなりショックを受けました。平等とは、同じ不自由を共有すること、なのでしょうか?それは絶対に、違いますね。

それにも関わらず、その道を選ぶしかない、他に選択肢のない彼らは、その平等をあえて 『選んだ』 。本当にショックです。格差とは、平等とは。イオンらホームレス少年に未来はあるのか。若干続編も出そうな雰囲気のラストに期待してます。

劇画調の表紙、挿画が効いている一冊です、YA(高校生以上)にオススメしてもよいと思います。

評価:(5つ満点)

竜が最後に帰る場所*恒川光太郎

ryusaigo.jpg異世界の入り口は近くにあるのか遠くにあるのか。様々な異世界を描いてきた恒川が送る短編集。
(恒川光太郎)1973年東京都生まれ。沖縄県在住。 『夜市』 で第12回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。主な著書に 『雷の季節の終わりに』 『秋の牢獄』 『草祭』 など。
(収録作品)風を放つ/迷走のオルネラ/夜行の冬/鸚鵡幻想曲/ゴロンド

それぞれカラーが異なる短編を集めた一冊。ということでそれぞれは今回は連作にはなってないです。正直なところ印象がバラバラなのですごく良かったとは言い難いですが、『夜行の冬』 と 『鸚鵡幻想曲』 は私好みでした。

恒川ファンは必読ですが、そうではない方はあわてて読まなくてもよいです。他の著作から読んでね。

評価:(5つ満点)

悪の教典*貴志祐介

akuno.jpg学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の容姿を持っていた。高校を襲う血塗られた恐怖の一夜。極限状態での生への渇望が魂を貪り尽くす。学園を舞台にした戦慄のサイコホラー。別冊文芸春秋連載を単行本化。山田風太郎賞受賞。
(貴志祐介)1959年大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業。岸祐介名義で 『新世界より』 の原点となる短編 『凍った嘴』 でハヤカワSFコンテスト佳作。『十三番目の人格-ISOLA』で日本ホラー小説大賞長編賞佳作、『黒い家』 で日本ホラー小説大賞、『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞長編賞、本作で山田風太郎賞を受賞。主な著書に 『青の炎』 『狐火の家』。

『新世界より』 で感動した私は楽しみに新刊を読み始めましたが…主人公がサイコパスという物語、あまりに恐ろしすぎます。あんまり酷いので誰にも勧められないと思っていたら、本読みの友人から 『悪の教典、読んだ?』 とメール…。みんな読みたい作家はおんなじですな。

『新世界より』 で教育をテーマに驚愕の世界を描いた貴志氏、今回もテーマはおなじく 『教育』 。舞台は現代の高校。教育の現場を斬新な切り口で描いてます、かなり斬新過ぎますが。

蓮見が高校教師になった理由というのがまたすごい、自分の思い通りになる人間が欲しかったから、だそう。それは担任するクラスの生徒、ということだそうだ。確かに生徒というのは先生に対して一度尊敬の念を抱けばかなり妄信的になることは否定できず…。しかし蓮見という男の描き方が実に徹底していて本当に恐ろしいです。蓮見は自分の計画の障害となるもの(人)を確実に除外することしか考えていません、つまりそれが人であれば除外、ということはすなわち…。

ラストの含みある終わり方も、恐怖心を煽ります。読了して本当に、ため息つきました。あんまり私好みではないですが、すごいプロットなのは確かです。

 評価:(5つ満点)

海辺のカフカ*村上春樹

umibe.jpg長身で寡黙、世界でいちばんタフな15歳になりたいと思っていた少年は、15歳の誕生日に家を出た。中野区に暮らす迷子ネコ探しの老人ナカタも西へと向かう。暴力と喪失の影を抜け、世界と世界が結びあうはずの場所を求めて2人は二度と戻らない旅に出た。長編書き下ろし。世界幻想文学大賞受賞。
(村上春樹)1949年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ジャズ喫茶の経営を経て作家へ。『風の歌を聴け』 で群像新人文学賞、『羊をめぐる冒険』で野間文芸新人賞、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞、『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞、『約束された場所で―underground 2』で桑原武夫学芸賞を受賞。また朝日賞、早稲田大学坪内逍遥大賞、フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、世界幻想文学大賞、エルサレム賞などの海外の文学賞を受賞。翻訳多数。

全然訳が分からない話でありました。ですが不思議なことに、普通は訳が分からない本を読了すると面白くなかった、と思うのですが、本作は訳分からないのですがすごく面白かったのです。そういう本はこのように確実に存在し、そしてそれが村上文学の魅力なのでしょうね。と少し分かったような口をきいてみたり。

『人はみな自分の図書館を生きている』 というのが本書のテーマ(と思う)。自分の図書館とは何か。生きるべき世界とは何か。そしてその世界で生き続ける使命とは、何か。カフカ少年、ナカタさん、カフカ父、ホシノ青年、佐伯さん、大島さん。それぞれの図書館は、どこに。そして私自身の図書館も、どこに。

ちょっとずつ村上春樹にはまりそうです。まだまだ著作は沢山未読がありますので、死ぬまでになんとか読了したい(笑)。

評価:(5つ満点)

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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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