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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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月に囚われた男

tukini.gifサムは地球で必要なエネルギー源を採掘するため、3年間の契約でたった1人で月に滞在する仕事に就く。地球との直接通信は衛星の故障で途絶え、話し相手は1台の人工知能コンピュータだけ。ついに任務終了まで2週間に迫ったある日、サムの周りで突然奇妙な出来事が起こり始める。

主人公サムの孤独感、そして憤りと諦め。狭い空間での一人芝居(+ロボット)で見事な演出。お金をかけなくても本当に映画は面白いですね。

『サム』 の人格がそれぞれ様々なところもなかなか興味深いです。ラスト、 『サム』 が 『俺たちは人間なんだ』 とロボットの相棒ガーディに言うシーンがいいですね。ロボットのガーディの妙な人間くささも面白いです、将来人工知能はここまで人間に近くなるものでしょうか?

ルナ・インダストリーの基地内に英語とハングルが混在してますが、メッセージで 『アンニョンハセヨ』 と言うシーンがありました、どうやらこの会社は韓国系企業という設定らしいです。スターウォーズでも言っていましたが、どんなにロボットの人工知能が発達してもあくまでもそれはプログラムされた内容が多様になっただけであって、やはり自分で考え判断のできる人間のする仕事には、敵わないのだそうです。だからスターウォーズではクローン兵を作ったのですね。って違う映画の話か。

B級エンタメながら、人の孤独とそれより優先される巨大な企業の利益追求について、考えさせられます。

評価:(なかなかにオススメです)
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借りぐらしのアリエッティ

karigurasi.jpgイギリスの児童文学 『床下の小人たち』 をスタジオジブリがアニメ映画化。舞台を50年代のイギリスから現代の日本に移し、古い洋館の床下に暮らす14歳の小人の少女アリエッティと、その家に病気療養に来た少年との交流を描く。監督はこれまで多数のジブリ作品に携わってきたアニメーターの米林宏昌が初監督。

第2王子とジブリ映画に行きました。やはりジブリは子どもと一緒に見られる作品が一番ですね。ノートン 『床下の小人たち』 すみません未読ですが…。舞台が東京、武蔵野ということころがまたいいですね。東京は23区のきらびやかなイメージが強いですが、郊外はほとんどH市と変わりませんのよ(本当に?)。

舞台を現代に置き換えても違和感がなく、小人と小人の暮らす家の人々との心温まる交流を描けていると思いました。映像も美しいし、特に派手さはなくてもこういう落ち着いた物語が子どもにも大人にも必要なのではないでしょうか。

『借り』 と発音する時のアリエッティの家族、そのままニュアンスは 『狩り』 。狩りもとい借りに出掛けたアリエッティが初めて見る台所の大きさ、ドールハウスの美しさ、どれもよく伝わってきます。アリエッティら小人が必死に生き抜く様子、というより自分達が人より小さいこと、その文明の恩恵に頼らざるを得ないこと、敢えて 『借りて』 生きていること、それらすべての自覚が素晴らしいですね。なかなか自覚ってできないものです。

家を離れたアリエッティと家族がどこへ向かうのか、もう少し観たいと思わせて終わるのもまたいいですね。第2王子はこにょこにょしゃべりながら観ていて、途中何度か 『しーっ』 と言いました。でも夢中になって観ている様子のムスコを見るのは本当に、嬉しいものですね。

評価:(5つ満点)

岸辺の旅*湯本香樹実

kisibe.jpg3年間失踪中の夫がある夜ふいに帰って来た。その身は遠い水底で蟹に喰われたと彼は言う。妻は彼と共に死後の軌跡を遡る旅に出るが。文學界』掲載に加筆して単行本化。
(湯本香樹実)1959年東京都生まれ。東京音楽大学卒業。オペラの台本執筆からテレビ、ラジオの脚本家を経て小説家に。 『夏の庭 The Friends』 で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞、『くまとやまねこ』 で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。主な作品に 『ポプラの秋』 『西日の町』 など。

久々に途中、泣きました。読み終わってずーんと来る一冊。この重さは川上弘美と同じですね、しんどいですが味わっていたい余韻です。

失踪した夫 優介と瑞希の関係が語られていますが、それが本当は瑞希が語る通りの事実ではないかもしれない、という含みを途中敢えて持たせながらも、ラストまで瑞希の視点が揺るがないところがいいですね。失踪し恋人がいたことが発覚し、それでもなお3年ぶりに自分の所へ帰って来た優介をただ受入れる瑞希。2人の旅も、旅先で出会う人々も、ただただ美しいです。公園で餃子のタネをこねている中華屋の主人やひなびた農村でたばこ農家を続ける老人達といった、ごくごくなんでもない市井の人々が、限りなく美しい存在なのです。

人は誰しも岸辺を歩き続けているのでしょう。その旅路を、わずかな期間でも共に歩むことができた瑞希と優介は、幸せだったのではないでしょうか。

評価:(5つ満点)

夜行観覧車*湊かなえ

yakou.jpg父親が被害者で母親が加害者。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺された子ども達はどのように生きていくのか。2つの家族の物語を軸に、高級住宅地に暮らす人々の現代の生き辛さを描く。小説推理連載に加筆、訂正し単行本化。
 (湊かなえ)1973年広島県生まれ。武庫川女子大学卒業。『聖職者』 で小説推理新人賞、『告白』 で本屋大賞を受賞。他の著書に 『少女』 『贖罪』  『Nのために』 。

一気に2時間で読んでしまいましたが、やはりこの後味の悪さ、が残る不思議な読了感。湊お得意の 『みんな嫌なヤツ』 ばかり出てくるのですが、今回はみんな 『自分なりに精一杯頑張っている』 のに、なぜ悲劇が起こるか?というのがテーマなのかな。悲劇が起こるっていうのはやっぱり何かが間違っているってことなんだけど、誰もそれを認めたくない、ということでしょうか。

人を追い詰めるのはやはり人、というのが本書のテーマでしょうか。ということは人を救うのも人、というテーマだと、信じたいです。

そろそろ暴力から脱却した湊作品を読みたいですが、次回作はどうでしょう。

評価:(5つ満点)

炎上する君*西加奈子

enjou.jpg恋に戦う君を誰が笑うことができようか?何かにとらわれ動けなくなってしまった私達に訪れる小さくて大きな変化。奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい短編集。野性時代掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』  『さくら』  『うつくしい人』  『きりこについて』 など。
(収録作品)太陽の上/空を待つ/甘い果実/炎上する君/トロフィーワイフ/私のお尻/舟の街/ある風船の落下

西加奈子ファンタジーに挑む。ちょっとほろ苦くてもの悲しい短編集、という感じ。 『ある風船の落下』 が一番ファンタジー色が濃くて私好みです。基本的に私はファンタジーは好きですが、西加奈子にはもうちょっと現実味の溢れる、ちょっと毒もあるファンタジーを書いて欲しいです、『こうふく あかの』 みたいな。 

評価:(5つ満点)

インセプション

inception.gifコブは人の夢に入り込みアイディアを盗むという犯罪技術のスペシャリスト。しかしこの才能が原因で最愛のものを失くした上、国際指名手配となっている。人生の一発逆転を狙い最後の仕事に挑むが、それは盗むのとは反対に夢の中で考えを植え付ける(インセプション)というものだった。完璧なチームでの完璧な計画がスタートするが、コブとそのチームを次々と危機が襲う。

デカプリオ再び。シャッターアイランドと比べてホントに分かりやすい内容でした(笑)。夢の階層が2層、3層と進んで行くに連れて現実の世界での時の流れは遅くなっていく、という設定が効いてますね。つまり夢3層の中では10年経っても、現実の世界は半年しか経っていなかった、というようなことです。宇宙時間と地球時間の違い、みたいな感じ。

夢の世界であまりに長く暮らしているとそちらが現実のように感じられてしまう…マトリックスですね。そりゃあ誰だって自分が作り上げた世界の方が居心地いいですからね、でもそこはやはり現実ではないということです。

渡辺謙やはりいいですね、重厚さが素晴らしい。老人になったシーンは必見です。

それにしても映画狂の知人が 『デカプリオの映画はどれも同じ印象』 と言っていましたがそれは私も感じました。シャッターアイランドとこのインセプション、再来年辺りはきっと印象はいっしょくたになってしまっていることでしょう。デカプリオがスター過ぎて印象が強すぎるのか、それとも単に大根なのか!?

評価:(CG万歳)

ビタミンF*重松清

vitaminf.jpgFather、Friend、FightなどFで始まる言葉をキーワードにした7つの家族の物語。小説新潮掲載の短篇を単行本化。直木賞受賞作。
(重松清)1963年岡山県生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。 『エイジ』 で山本周五郎賞、本作で直木賞を受賞。主な著書に 『流星ワゴン』 『ナイフ』 『送り火』 など。
(収録作品)ゲンコツ/はずれくじ/パンドラ/セッちゃん/なぎさホテルにて/かさぶたまぶた/母帰る

やっぱりイマイチで、何が問題でつまらないんだろうと考えてみたら、全然行間がないところだと気が付きました。主人公の心情が逐一書かれているのでそれ以上想像のしようがなく、だから同情も反発もしにくくて、正直つまらなかったです。

主人公は皆37歳の男性で、それがみんなつまらない、魅力を感じないっていうのは一体どうなんだ。どの主人公も割合単純すぎるというか、人の心ってもっと複雑なんじゃなかろうか?家族に対して、家族と生きることについてもっと真摯さがないと、リアリティを感じないというか…。

とにかくどの短編も 『おっこれはこれから面白くなるのか?』 と思ったところで唐突に終わりになり、あっけにとられました。『セッちゃん』 はまあまあ良かったですが、他は特記事項がありません。酷評すみません。

評価:(5つ満点)

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

mosidora.jpg野球部の女子マネージャーのみなみは偶然ドラッカーの経営書 『マネジメント』 に出会う。初めはは難しさにとまどうが野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付き始める。ドラッカーの教えを元に女子マネージャーが野球部の甲子園出場を目指しマネジメントをする青春物語。ライトノベル的盛り上がりもあります。
(岩崎夏海)1968年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。放送作家、AKB48のプロデューサーを経てマネジャーとして吉田正樹事務所に勤務。

まず、非常によくできた構成だと思います。ドラッカーの文章なんてこの本を読まなければ一生読まなかったことでしょう…岩崎さんどうもありがとう。

表紙のオタっぽい女子高生のマンガ(挿画)といい、展開のノリがライトノベルなところといい、エンタメの要素を見事なまでに随所に盛り込んだ上でドラッカーの 『マネジメント』 をここまで楽しく読ませるとは。もしや天才?(笑)組織の経営について書かれた本を、社会におけるあらゆる組織(人の集合体)に応用できると説いた本書の功績は、大きいですね。

言い換えればここまで分かりやすくストーリー形式(というよりマンガ的展開)にしないと、理解できない大人(※私)が増えてしまったのか…ということですが。

組織は常に顧客を意識し、顧客の満足を第一義に考えなくてはならない。マネジャー(管理職)は人事、報酬で応えなくてはならない。マネジャーに何より大切なことは 『真摯さ』 である。真摯であること…それが全体を見通せることより人柄よりリーダーシップより、何よりも大切だ、と説くドラッカー。あなたのために精一杯やってます!という 『誠意』 。が何よりも大切。だそうです。

ここでいつもお中元、お歳暮でお世話になっている東京の老舗デパート●越の対応を思い出しました。ほんのわずかな注文だと言うのに、のしがおかしくないかとか包装はなしでよいとあったが個別に袋を付けるかとか、わざわざ電話で聞いてくるのです。電話で出ないとメールを寄越してきます。この 『恐れ入りますが…』 と控えめながらお客の間違いを正して差し上げねば、というプロ精神、果たして私は持ち合わせているのか?

『マネジメント』 を教本に、野球部マネージャーみなみは部員一人ひとりにコーチングを行い、それをフィードバックし、一人ひとりの強みを活かしそれが組織(野球部)の活性化につながるよう様々なプロジェクトを仕掛けていきます。まず組織の構成員を知る。活かす。組織を育てる。そして組織が社会で貢献する道を模索し、実行する。

どんな組織も一人では成り立たず、一人ひとりに責任を負わせる、それも喜んでやりがいとして負わせることで組織を成長させる。うーん上司として理想ではないか、みなみちゃん!この 『人に任せる、責任を持ってもらう』 というのが一番難しいですよね。でもそれができないと組織は育たない。

私はどんな組織に属しているでしょう。サークル、学校ボランティア、家庭。あらゆる場面で組織に属している現代人には、ドラッカーの理念が応用できる。ということに気付かせてくれる、スゴイ一冊です。社会学、文化人類学的視点から見ても、面白いです。

評価:(しかしすぐ内容を忘れてしまうのはナゼ…)

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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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