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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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海猫ツリーハウス*木村友祐

05b44e24.jpg25歳の亮介はファッションデザイナーを目指しながら実家の農業を手伝うかたわら、親方の元でツリーハウス作りに精を出す毎日。だが人気者の兄 慎平の帰郷で穏やかな均衡が崩れはじめる。すばる文学賞受賞。
(木村友祐)1970年青森県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。本作ですばる文学賞を受賞しデビュー。
 

主人公 亮介が 『生かされてる』 でもなく 『自立して生きている』 でもなくただ自分は 『生きてる』 ということに気付く物語。というのは人類の歴史上数限りなく紡がれていますが、やはり物語として今もなお綴られる、綴られて古く感じないのは、それが自明でありながら自覚することが最も難しい、人生のテーマの一つだからでしょう。

と最初から何言ってんだ調で始まりましたが(笑)、久々に純文学です。多くの書評に南部弁の会話が活きているとあった通り、南部弁で地方の閉塞感を見事に表現しています。海、山、川に囲まれた自然豊かな八戸の地を背景にしているところが、しっかりした情景を描き出しています。文章が巧いです。

この正統派純文学がどう作者 木村氏流に化けていくのか、三崎亜記、金原ひとみ、中島たいこといった作家陣を生み出してきたすばる文学賞だけに楽しみです。うまく化けるのかそれともこのままフツーの純文学として消えてしまうのか。正直読了後は純文学的なイライラ感(笑)は足りないというかさほど感じませんでした、もっとイライラ感があっても良かったのに。

評価:(5つ満点)
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孤高のメス

kokounomes.gif1989年、ある市民病院に外科医 当麻鉄彦が赴任する。見栄と体裁を気にかけ簡単な外科手術ひとつまともに行われないその腐敗した病院で、次々と困難なオペを成功させる当麻。彼の 『目の前の患者を救いたい』 という信念はやがて病院を、そして人々を動かしていく。そんな中、病に倒れた市長が市民病院へ搬送されてくる。彼を助ける方法は唯一、脳死状態の少年から肝臓移植を受けること。しかし、それは日本の法律ではいまだ認められていない禁断のオペだった。当麻の決断は。

堤真一はじめ夏川、余、平田、柄本といったキャスト陣がみんなしっくりくる配役というところがまず素晴らしいですね。キャストらがそれぞれのカラーを意識した見事なチームワーク。夏川、余の両氏の存在感が厚いので、ややエキセントリックな役柄の堤さんが浮かないです。テレ朝らしく生瀬、吉沢というブラッディマンデー(ドラマ)メンバーも勢揃いですけど。生瀬さんは悪役もなかなかいいのですが、もう少し凄みが欲しかったですねぇ。どうしても矢部警部(トリック)のイメージが強すぎて笑ってしまう…。

ストーリーは急死した母の日記を元に回想していく、という構成がまた見事。時代は89年、平成元年。病院のたたずまいや人々のファッションはまだまだ昭和。かといってテーマは昭和は良かったというノスタルジーではなく、時代を経ても人の想いや信念というものは何も変わらないのではないか、変わらないだろうというのが大きなテーマ。手術シーンも割愛せず表現しています、うごめく内臓(!)の様子とか、今の映画の技術は本当にスゴイ!の一言です。

脳死間移植の是非を問う、という映画ではないと各メディアの宣伝にあったとおり、押しつけがましさは特に感じません。脳死移植法制定前という時代設定も効いていると思います。ただひたすらに、余さんの演技に泣かされます。それも余さんだからあざとさを感じさせない、実に上質の日本映画です。

評価:(5つ満点)

真綿荘の住人たち*島本理生

mawatasou.jpgレトロな下宿に暮らす奇妙な人々。青春と恋の始まりのはずだったのに。真綿荘に集う人々の恋はどこかいびつで滑稽で切ない。不器用な恋人達、不道徳な純愛など様々な愛情の形を描く。『別冊文藝春秋』 掲載を単行本化。
(島本理生)1983年東京生まれ。立教大学文学部中退。『シルエット』 で第44回群像新人文学賞優秀作、『リトル・バイ・リトル』 で第25回野間文芸新人賞を受賞。主な著書に 『生まれる森』 『ナラタージュ』 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』 など。
(収録作品)青少年のための手引き/清潔な視線/シスター/海へむかう魚たち/押し入れの傍観者/真綿荘の恋人

正直2章を読み終わって、何で今更島本氏がこんな群像劇を書くんだろう?と思ってしまいました。ありふれた、自信過剰な大学生になりたての少年と、ありふれた女性しか愛せない、それもうまく愛せない20代後半の女と、何も島本氏が書かなくても?

段々に一癖も二癖もある住人らのバックボーンが見えてきて、人と人との関わり合いのありようについて書きたかったのだと分かりますが…正直押し入れ → 真綿荘の展開は、唐突過ぎやしないか?むしろ複雑な千鶴の背景を最初から丁寧に綴った方が良かったのでは?と感じてしまいました。

瀬名さんと千鶴の複雑な愛情がラストまでイマイチ伝わらない。大和くんの成長もくじらちゃんの成長もかなり加速度が付いていてちょっと納得できない。連作なのにつながっていないというか、私の読みが浅いのでしょうが。人物らに愛情もあまり感じられず、読後感が悪くないだけに何かもう一つパンチが欲しかった気がしてもったいないような気ばかりしてしまいます。

もう1回読めば違うかもしれません。

評価:(5つ満点)
 

週末、森で*益田ミリ

moride.jpg畑を耕すわけでもナチュラルライフでもないけれど。てくてく歩けば毎日がキラキラ。田舎暮らしを選んだ早川さんの家に、週末毎に訪れる都会暮らしを選んだマユミちゃん、せっちゃん。森を歩くとそれだけで気持ちが清々しくなるのはなぜなんだろう。
(益田ミリ)1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に 『すーちゃん』 『結婚しなくていいですか。』 『上京十年』 など。
 

早川さん、マユミちゃん、せっちゃん。都会でOLを続ける2人は結構日常生活でイライラしていて、うんうん分かるという感じ。そのイライラを早川さんの住む田舎(森)で毎回浄化していく、というストーリー。早川さんが翻訳家として自立しており、その他にも 『生活の足し』 として家庭教師や着付けをしているところもいいですね、そう足しについて考えておくことは常に必要です、自立してる早川さんはエライ。

イライラすることは考えようだ、とも言えるけどひとところにいるとなかなかそうした考えの切り替えってできないものです。マユミちゃん、せっちゃんのように早川さんのうち(森)がある人は、羨ましいなぁ。

評価:(5つ満点)
 

失踪日記*吾妻ひでお

sissou.jpgマンガ家 吾妻ひでおの体験を描いたノンフィクションマンガ。仕事を放りだし野外生活をしていた 『夜を歩く』、再びホームレスとなり配管工として働いていた 『街を歩く』 、アル中で入院した前後を描いた 『アル中病棟』 。いずれも家族に迷惑かけっぱなしの吾妻氏のセキララな日々を描く、セキララすぎる。
(吾妻ひでお)1950年北海道生まれ。『失踪日記』 で日本漫画家協会賞大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞、日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞。不条理、SFマンガからロリコンマンガまで執筆。
(収録作品)夜を歩く/街を歩く/アル中病棟

読みたいとずっと思っていた本書をついに読了。ホームレスしたりガス会社の下請け会社で働いたりアル中で入院したり。それをネタとして供出する吾妻先生スゴイ…じゃなくて奥さんがスゴイ!エライ!秋田書店メインの吾妻先生は手塚先生との絡みなどもありそちらでも楽しめます。

先生は完全にうつ病と思いますが、そうなってしまう原因は手抜きができないこと。マンガもすごく力を入れて各コマ丁寧に描いてしまうそうで時間がかかる。見てみると確かにそう、丁寧な背景にコマ割り。背景もないテキトーな最近のコミックエッセイ(失礼)を見ていると、吾妻さんもテキトーにしたら良かったのに…とそれができていればここまで行かないですね。

ホームレスにになってもガス会社でガテン仕事してもアル中で入院しても、やっぱり生活の重点を占めるのは人間関係。すごいところばかりだけどそこでもガマンして居続ける?吾妻さん。だから悪くなるんじゃ?
世の中はまだまだ広く、知らない世界がいっぱいあることを知ることができる、一冊です。

評価:(5つ満点)
 

お嬢さまことば速修講座*加藤えみ子

ojousama.jpg一般にお嬢さまと呼ばれる人々の会話を分析し実践を第一に簡単で使用頻度の高い順にお嬢さまことばを紹介。読んで笑いながら自然にお嬢さまことばが移ってしまう困った本。97年出版の愛蔵版を組み替えた新装版。 
(加藤えみ子)桑沢デザイン研究所インテリア住宅専攻科卒業。インテリアデザイナー。空間構造代表取締役。主な著書に 『上質生活 品格ある暮らしのルール』 『気品のルール』  『和のルール』 など。

速修、すなわち付け焼き刃ではありますが、お嬢さま言葉を修得したい人のための実践集。と紹介されている記事を切抜き、早速図書館から借りました(やっぱり買わない、笑)。

ことのて、の結び、わたくしと 『さま』 の掟、丁寧な肯定とあいまいな否定、大げさな褒め言葉と婉曲的な言い回し、などナルホドと思う丁寧な観察力が面白いです。
ことのて、というのは
『~ですこと?』 とか 『~ですの。』 とか『~ですって。』 とか語尾に付けると、一気にお嬢さまらしくなるということ、だそうです。

自分のことは 『わたくし』 と言い、お友達も 『ヒカルさま』 とか 『ノリカさま』 とか、 『さま』 を付けて呼びかけましょう。ってどこの世界の言葉だ!?と盛り上がり、肯定はとにかく丁寧にしつこく、そして否定は実にあいまいにすること。
『いやです』 →  『よく考えておきますわ』
と言い変える。つまりお嬢さまに 『よく考えておきますわ』 と言われたらすなわちそれは否定と受け止めよ、だそうです。あと 『さあどうだったかしら』 とか 『よく分からないけど』 もほぼ同様の意味だそうです。
確かにこういういい方をするマダムを知ってます…あれは否定だったのか(汗)。

褒めるときは大げさに、どうしてもけなさなくてはならないときは婉曲に、も鉄則。婉曲にけなされたらそれは、お嬢さまからの最大の攻撃と心得よ。ですね。
その他にはよく使われるお嬢さま的言い回しも載っていて、それをまず駆使することから始めましょうとあります。 『よろしくってよ』 といつも使われている方が身近にいますね、やはりこの方はお嬢様だったわ。

そして極めつけは、コーヒーではなくお紅茶を召し上がるのが、お嬢さまでございます。なぜなら紅茶は 『お紅茶』 と言えますが、コーヒーは 『おコーヒー』 とは注文できないからで、ございます!だそうですよ。

実践できそうですか?さあどうだったかしら。忘れてしまいましたわ(爆)。
お嬢さまを目指す、すべての美しい女性の皆様へオススメします。

評価:(5つ満点)
 

紅雲町ものがたり*吉永南央

benikumo.jpg歳を取っても自分の夢にかけ、和食器と珈琲豆の店を営む大正生まれのお草。ある日ひょんなことからとあるマンションの一室で虐待が行われていることに気付き、探偵のまねごとを始めるが…。おばあちゃん探偵お草さんの活躍と周囲の人々との温かい交流を描く。
(吉永南央)1964年埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部卒業。本作収録の 『紅雲町のお草』 でオール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に 『オリーブ』 『誘う森』 『Fの記憶』 。
(収録作品)紅雲町のお草/クワバラ、クワバラ/0と1の間/悪い男/萩を揺らす雨

短編集 『オリーブ』 で感銘を受け、早速吉永南央の著作を片っ端から読むことに。デビュー作を含む本書もアタリです。また新刊が楽しみな作家が1人増え、嬉しい限りです。

お草さんは本当に普通のおばあちゃん、独身で友人や人との距離を上手に取りながら好きな店を営む。理想の暮らしです。そのおばあちゃんがなぜ探偵に?というところがとても巧い。毎朝決まった道を散歩するお草さんだからこそ気付くことができた事件の数々、見事な解決への道、それも大活躍!というよりはああこういう解決の方法もあったのか!と読者を唸らせる、見事な仕掛け。

日常の中にこそ、事件は潜んでいて他人はそれを見過ごしがちだけれども、当人にとっては大事件であるということがなんと多いことか。お草さんが周囲の人からボケてしまったと勘違いされるくだりのお草さんの悲哀ぶりなど、もう身につまされます(涙)。 『オリーブ』 でも隅々まで感じた物語構成の巧みさが、デビュー作でもしっかりと感じられます。

大きな事件ではないからこそ感じる、人の縁の不思議さ。女性作家ならではの丁寧さが沁みます。

評価:(5つ満点)

八日目の蝉

nhkyoukame.jpg

不倫相手の生まれたばかりの子どもを衝動的に誘拐してしまった希和子。幼い命を育てることを決意した彼女はただひたすらに母となる道を歩み続ける。二人が引き離されるまでと、その後両親の元に戻った 『誘拐犯に育てられた子ども』 である恵理菜の邂逅により、それぞれの心を描き出す。原作 角田光代。

久々に連続ドラマを見ました、録画していたのを一気見ですけど。
原作は角田光代 『八日目の蝉』 。この本を読み涙した人は多いはず…と読了直後は思いましたが、どうも涙するのは子育てを経験した女性が多いようです。確かに偏りのある視点と言えなくもない。しかしながら子育てというのはそういう偏見に満ちているものなのですよ(なんちゃって)。

ということで本作。ドラマでは視点が一貫して誘拐犯である母、希和子で描かれているため、原作とは異なりどうしても希和子に感情移入してしまいますね。それが気にくわない、という意見も多数拝見しました。しかしいいんじゃないでしょうか、子育ては偏見に満ちているものですから(またかい)。
キャストについては、友人は岸谷五朗が泣ける~いい~と言っていましたが私は断然、坂井真紀です。坂井真紀は映画 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 でも素晴らしい演技でした。女優として素晴らしいです。また、希和子がこんなに長い期間逃げ切れた理由として大きなものの1つ、エンジェルホームという怪しげな宗教団体の寄宿舎があるのですが、あの描き方もいいです、映像で見るとますます興味深いです。

来年は誘拐された子どもである恵理菜の視点で描かれた映画も公開されるそうで、そちらも楽しみです。

評価:(5つ満点)

八日目の蝉*角田光代 2008/03/27

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急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
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年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
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