女手一つで娘を育ててきた姉 吟子と、大阪で芸人に憧れながら破天荒な暮らしを送る弟 鉄郎との再会と別れを描く家族ドラマ。長らく消息不明だった鉄郎が吟子の娘 小春の結婚式に突然現れ泥酔して披露宴を台無しにしてしまう。戦後に生まれ育った姉弟のきずなをバブル景気直前に生まれた娘を通して、現在と今後の日本の家族の姿を映す。10年ぶりの現代劇となる山田洋次監督が市川崑監督の 『おとうと』 に捧げたオマージュ。
この映画の最大の見どころは 『べてるの家』 であり、そこで人生の最期を迎える人の半生を振り返ってみるとこうかな?ということでできた作品です。中年姉弟の姉弟愛だと思って観ていると一体どうなの?何かブレてない?という感覚がぬぐえませんが、ラスト舞台がべてるの家になってからようやく映画の趣旨が見えてきました。
全体としてはよい映画ですが、吉永さん主演の映画をまともに見るのはこれで2本目で、それでようやく違和感の理由が分かってきました。彼女はやはり、女優というよりスター
なのです。どこにいても何に出演しても彼女は 『吉永小百合』 。だから、吟子という役柄になりきれていない、どころか最初っからそういうことは誰も求めていないわけです。この際どの映画に出ても役名は 『小百合』 にしてはどうか、とまで思うのですがいかがでしょうか(ウソ)。
若手の加瀬亮、蒼井優が今回もとても良かったです。誰の視点でこの作品を鑑賞するか、でだいぶ印象が変わってくる作品ですが、配役のことはさておき山田洋次監督の直球な作品作りはやっぱりいいですね。ただ、しつこいけど吉永さん鶴瓶さんではない配役だったらもっとどうだったろう、と思ってしまいました。
ちょっとキレイすぎる関係の描き方で、この姉弟にはもっとずっとドロドロの罵り合いとかして欲しかったですね。
評価:(5つ満点)
最終日の混雑必勝法
確定申告に行きました、しかも申告最終日の3月15日!言うまでもないことですが最終日なんて行っちゃダメです、予想通りものすごい混雑でした。
『相談しながら申告書を作成する(手取り足取りコース)』 の長蛇の列を見ていると帰りたくなりましたが、
『自分で申告書を作成する(自立コース)』 だと時間が早い、ということで電卓片手に私も社会人となり10数年目にしてついに自立コースで自己作成することに。
結論はと言いますと、自立コースで行くなら自宅で国税庁のホームページで試算をしてくることを強くオススメします。きっと来年も私のことだから忘れるでしょうからここに書かせてください。まずは国税庁で試算をしそのページを印刷、持参し申告会場で提出書類に書き写してチェックしてもらえばほぼ間違いなくスムーズに行くはずです。
というのも申告書を手書きで作成し意気揚々とチェックの列に並んで見てもらったところ
『ここ。計算間違ってる。』 ええーっ?
『この位だと¥***位になるはずだからねぇ』 うう…さすが税金のプロ、わずかな納税額も見逃さず徴収とはさすがマルサ(違)。ということで書き直しをして、再度列に並んだという経緯から来た反省です。
確定申告はもちろんお早めに。そしてお出かけの前には国税庁ホームページで必ず試算ページを作成して印刷してお持ちください。来年こそこの方法で行くぞ!
国税庁ホームページ
http://www.nta.go.jp/
【仕事が終わったらやりたいこと】
3月で任期が終了し、春休みじゃなくて無職期間に入ります…。まだ嬉しい気分が先立ってますがこの無職期間が続くと自分の精神状態が毎回不安定になるのは避けられず。そんな中でもせっかくの時間を有効に使うために、毎回普段働いている時にはできない 『やりたいこと』 をピックアップしておくのですが、果たして1ヶ月2ヶ月後にはどうなっているのやら?実現できているか、チェック
寺山修司記念館/映画鑑賞/通信大学レポート/英語学習(TOEIC受験)/マラソン練習/水泳強化/フリーペーパーライター応募/一人旅(KJ市遠足)/運転免許AT限定解除
こう書いてみるとここ10年近く(!)やりたいと思っていることもあったりして、その夢が叶わない方がいいんじゃないか、叶ってしまうと何か天変地異が…とまで思ってしまうことがこの中に2件ほどあります(爆)。どうなりますやら。
人の想いは死んでなお、愛する人によびかける。18歳の時に両親を亡くし家業の葬儀屋を継いだ森野。弔ってきた死者達の遺された思いがまだこの世に残っているのだろうか。死者の幽霊を見たり届くはずのない死者からの贈り物が届くなどの様々な事件を葬儀屋の森野が巡る連作短編集。 『MOMENT』 続編。
(本多孝好)1971年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業。『眠りの海』 で小説推理新人賞を受賞。主な著書に 『真夜中の五分前side-A/side-B』 『正義のミカタ』 『チェーン・ポイズン』 など。
前作MOMENTで主人公だった神田とその幼なじみの葬儀屋の娘 森野は、まるで男同士のようなサバサバした友情関係だと思ってたのに、MOMENTから7年余いつのまにか2人はアメリカと日本という遠距離恋愛中だそうで。それでも相変わらず森野はハードボイルド女子だったりします、そんな森野ちゃんがどうやって神田くんと恋人同士、と自認するまでに至ったのか、それもかなり気になるんだけどそこは割愛されてます。
アラサー森野は18で継いだ葬儀屋を守り続けて早10年。頼りになりすぎの番頭(父親の代からの社員)と全く頼りにならない丁稚(元バンドマンの新入社員)を抱えた女主人、という設定がハマリすぎだけど、その設定で巻き起こる様々な幽霊騒動や葬儀にまつわる不可思議現象を、前作同様主人公が冷静に論理的に解き明かしていくシリーズ、としてすっかり定着です。
幽霊騒動も葬儀やり直し事件も、話だけ聞けば十分に怪奇現象であるのに実は…という謎解きは、MOMENTの時はあまりに理路整然過ぎてちょっとな、と思ったけど今回はそれを楽しめるようになりました。人の思い込み、怖さとか恨み辛みってやっぱり思いもかけない方向へ走ってしまうものなんですね。本多孝好の面白さが私にも少し分かってきたのかもしれません。
作中、恋人である神田からは 『森野』 、番頭である竹井からは 『お嬢さん』 と呼ばれ続けてきた森野をラスト、アメリカから迎えに来た神田が初めて下の名前で呼ぶシーン。葬儀屋の娘に付けられた名前が、あれだったとは!ちょっとした驚きが待ってます。
気になる方はぜひご一読を。
評価:(5つ満点)
人は似たような2つの写真、例えば 『毛がもこもこの羊』 と 『毛がすごく短い羊』 を並べると否応なしに 『この間に何があったのか?』 を想像し始めてしまう。大掛かりな人工物から身近な出来事まで 『あいだの出来事』 を面白く想像できる写真を集めた。予想通りのものが表れた時でさえ独特の嬉しさがこみ上げる。佐藤雅彦+ユーフラテスの 『中をそうぞうしてみよ』 『なにかがいる』 に続く科学絵本の第3弾。
(佐藤雅彦)1954年静岡県生まれ。東京大学教育学部卒業。メディアクリエーター、東京藝術大学大学院教授、慶應義塾大学客員教授。主な著書に 『佐藤雅彦全仕事』 『クリック』 など。
(ユーフラテス)慶応大学 佐藤雅彦研究室の卒業生からなるクリエイティブグループ。2005年12月活動開始。
福音館書店の月刊絵本も22年度に入りました。例年4月号はどのシリーズも結構力が入ってるんですよ~ということで皆様も4月号(3月発売分)は要チェックですよ。
今月のかがくのともは、ピタゴラスイッチでおなじみの佐藤雅彦+ユーフラテスの科学絵本第3段。 『なにかがいる』 も結構おはなし会で使ってきた私は楽しみにしてました。Aという写真とBという写真があった時、この間に起こった現象は何か?という写真絵本です。次の見開きページに間に起こった現象の写真が載ってます。解説文にある通り、大体何が起こったかなんて見れば分かるんですけど、それでも 『こういうことだったんですね~』 という種明かしのページを見ると安心するというか納得するというか。大人も子どもも楽しめる絵本です。
またこの 【Aに何らかの現象が起こりBに変化した】 とは、数学的に言えば 【関数】 ということになりますね。ということでこの本、幼児~小学生だけではなく、中学校でのブックトーク(数学)にも使えるんじゃないの!と張り切ってます。折り込み付録の解説は茂木健一郎とこちらも福音館、気合い入ってます(笑)。本当に最近の写真絵本、科学絵本は単なる図鑑絵本ではなくこのように工夫がなされたものが増えてきて、ますます楽しみです。
評価:(5つ満点)
普通のサラリーマンだった耕平は会社の倒産をきっかけにじわりじわりと落ちていく。日雇い派遣、サラ金、インターネットカフェ宿泊と切迫していく中、まだ戻れる、まだ間に合うと思いながら。いったん失った 『明日』 をもう一度取り返すまでの物語。『IN☆POCKET』連載を単行本化。
(乃南アサ)1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。
この頃こういうテーマの本によく当たるような気がしますが…時代でしょうか。それにしても耕平のこの転落ぶりはすごくリアルというか身につまされるというか。そして耕平の性格のいいかげんさ、根性のなさ、無気力さがまたまた実に今の若者らしく、乃南氏の人間観察の鋭さ、人物設定の見事さにまた今回も脱帽です。
どうしようもない若者だった耕平も、多くの散々な経験を通じて徐々に成長していきます。この 『成長ができる』 という人間とは、何て素晴らしいんでしょう。作中ほんっとうにどうしようもなく、数々の失敗もどうにも同情できない、救い難い若者だった耕平にも、実家の母親やばあちゃん、住み込み先で出会った杏菜など変わらず彼に優しく接してくれる人がで周囲にいてくれて、その人たちからの断ち切れない愛情と呼べるものがあって、それが徐々に彼の考えや生き方を変えていく。耕平が徐々に心を入替え大人になるのです、どんな人もやがて大人になるのだという事実。
誰からも見ても救い難い、馬鹿者だった耕平ですら様々な経験を経てようやく大人になり、自分も周りの人も幸せにしようとする道をつかみかけてきた。人は誰でも成長しやがて大人になるのですがその間様々な試練がある。そのために家族や友人といったセーフティネットがやはり、誰にでも必要なのですね。
耕平の最大の強みもここにあったのでしょう、帰る故郷があり、家があり、友がいる。当たり前に思えることでもそれを持たない人はたくさんいるのです、作中の天涯孤独の杏菜のように。当たり前のように思える自分の財産(家族、友人)を持っていること、恵まれている自分に感謝をしなくてはならない、というのが本作のテーマでしょうか。そしてその財産を持つ自分自身が、財産を殖やすためにも努力し続けなくてはいけないのです。耕平が自分の持つ当たり前の家庭、幸せを、杏菜にも与えたい、と思うようになるところで物語が終わります。
乃南氏の小説はたとえどん底を経験してもいつも、明るい方を向いて終わります。それが何より、読者として心救われる思いです。
評価:(5つ満点)