まほろ駅前に集う愉快な奴らが帰ってきた。便利屋を営む多田とはた迷惑な助手の行天の活躍をはじめ、経済ヤクザの星、自称まほろ小町だった曽根田のばあちゃん、小生意気な小学生の由良公、バス停を見張り続ける岡老人の細君などスピンオフ版を収録。『別冊文藝春秋』 連載を単行本化。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『風が強く吹いている』 『光』 『三四郎はそれから門を出た』 など。
(収録作品)光る石/星良一の優雅な日常/思い出の銀幕/岡夫人は観察する/由良公は運が悪い/逃げる男/なごりの月
多田と行天が帰ってきました。本シリーズは軽めのフリして案外深く書かれてます。私は曾根田のばあちゃんの若かりし頃のロマンスの章(思い出の銀幕)が気に入りましたね、間違いなくコレはばあちゃんの妄想なんだろうな、というオチも。人は皆曾根田のばあちゃんのように人生という劇場の主役になりたいと常に心の奥底で願っているのでしょう、そんな思いをボケついでに語ってしまったばあちゃんはむしろ天晴れだと思います。
岡夫人の章(岡夫人は観察する)もいいです、前作ではただ変人扱いだった岡老人がこんなに奥さんに愛されているなんてねぇ。毎回ながらしをんちゃんの登場人物らに対する愛情の注ぎ方はいいですね。終章は行天のトラウマに迫り続編アリ!の雰囲気濃厚。ゆっくり続編を待つとします。
評価:(装丁がやっぱりイイ)
2009年、太陽の活動が活発化し地球の核が熱せられた結果3年後に世界は終わりを迎える。この驚愕の事実をいち早く察知した地質学者エイドリアンはすぐに米大統領 主席補佐官に報告。やがて世界各国の首脳と一握りの富裕層にのみ事実が知らされ人類を存続させる一大プロジェクトが極秘に開始される。そして2012年。売れない作家のジャクソンは子ども達とキャンプにやってきた国立公園で政府の奇妙な動きを目撃。世界に滅亡が迫っていることを偶然知ってしまう。やがて一部の人類を救うための 『方舟』 が世界のどこかで制作されていることを知りジャクソンらはそこへ向かうのだが。 『インデペンデンス・デイ』 『デイ・アフター・トゥモロー』 のローランド・エメリッヒ監督作品。
試写会当たりましたSFXの技術の高さには感動しました、が…ストーリーはやはりディアフタートゥモロウの監督、何が言いたいのかイマイチ??とにかく津波はスゴイんだなーって結論ですね、映画でもtidle waves じゃなくて tunamiって言ってました。ツッコミどころは非常に多くその点でも大変面白かったのですが、映画のテーマはすべての人を救おうという【人類愛】じゃなくて、もっとずっーと狭小な、うちの家族だけは守ろうという【家族愛】に移ったのは確かですね。そして、そうでないと共感が得られない時代になったということでしょうか?運命は自分の力で切り拓け、というテーマとして捉えようとすればできなくもないけど、それもムリのある内容でした。
突っ込みどころ満載ではありますが、大スペクタクル映画はやはり大型スクリーンに限りますね。SFXの凄さはさすがです。
評価:(5つ満点)
(以下ものすごくネタバレ&ツッコミ)
さくらんぼ算とは?
最近王子達は元気なの?と聞かれますが、元気にしております、いつもお気遣いありがとうございます。単に私の王子日記が更新されないだけなのでございます…。さて第2王子の小学校生活も、当初心配していたよりはずっと順調でどうにか毎日の宿題もこなしております。それにしても第1王子から数えること7年、やはり学校の勉強の仕方は大きく変わっているようです。
第1王子の時も漢字の書き順があまりにも私と違うのでちゃんと教えてんのか?担任の先生に確認したら、なんと時代を経て 『書き順の変更がある』 との事実を知りビックリ仰天しました。文科省により数年に一度漢字の書き順は見直しがあり、私達が子ども時代に習った書き順と明らかに違う書き順の漢字が既にいくつもあるそうです。皆様もお子さんとのバトルにならないようご注意(笑)。
さて第2王子が小学校に入り、私が特に驚いたのは以下の2つです。
◆さくらんぼ算
くり上がりのある足し算8+7などはどのように考えるか。
8+7=8+(2+5)=(8+2)+5=15
と考えるよう指導しています。
つまり、最初の8にいくつを足せば10になるか?そこで、足す数7から2を先にもらって計算して10を作り、残った5を最後に足す。この内容を記述する方法を 『さくらんぼ算』 と言っています。って知ってましたか?私は第2王子が持ち帰ったプリントで初めて見ていたく感心し、先生に第1王子の頃はこんなのはなかったですとお話ししたら、結構昔からやってますけど…とのお話。ええっそうなのか?ちなみに面倒くさがってさくらんぼを省略するとテストでは減点の対象になります… 『分かってるから書かなくてもいいんじゃない?』 なんて指導してごめん、第2王子。
◆マインドマップ
更に驚いたことに、ある日国語のノートにマインドマップを書いてきました。
マインドマップとはトニー・ブザン氏が提唱した図解表現技法の一つ。表現したい概念の中心となるキーワードやイメージを図の中央に置き、そこから放射状にキーワードやイメージを繋げていくことで発想を延ばしていく図解表現技法。この方法によって複雑な概念もコンパクトに表現でき非常に早く理解できるとされている。 人間の脳の意味ネットワークと呼ばれる意味記憶の構造によく適合しているので、理解や記憶がしやすい。本来は紙とペンで描くものだが、コンピュータ上で描くための専用ソフトウェアもいくつか存在する。なお 『マインドマップ』 という呼称は日本国内においてブザン・オーガナイゼーション・リミテッド社によって商標登録されている。
だ、そうです。このブザン氏の名前とか定義とかの部分は読み飛ばしていただき、マインドマップという言葉を聞いたことがある方は私含め多いのではないでしょうか。最近始まった自己啓発手法の一つですね。でこれが第2王子のノートにあったからビックリというわけです。小学1年生にもマインドマップか…時代が変わったのをまざまざと感じました。図解しますと、
すきなもの>めろン プリン
がっこうのこと>しんぶんかかり
とくい>さんすう ぴあの
それにしても自分で 『ピアノ』 と 『さんすう』 を得意だと言う第2王子、その自信もスゴイぞ?私も書いてみようかなマインドマップ。と常に新しモノ好きの私。
◆マイ・スケジューラー
1年生になり本格的に字が書けるようになったら楽しくて仕方がない様子、でも未だに 『た』 と 『て』 をしょっちゅう間違えますが…なんでだろう。 『~だす(です、の間違い)』 とか書いてあるとかなりガックリ来るのですが(笑)。メモ帳に自分のスケジュールを記入したり、ママ宛にお手紙を書いたりするようになりました。この前くれたお手紙には 『ままはなにがすきなの。パパをすきなの?』 とあり、かなーり返信に困りましたけど…(この件についてはツッコミはご遠慮願います)。
文章作成能力を伸ばすために交換日記でもやろうかしら?と考え中。私が小学校の頃、私と兄はそれぞれノートを用意してもらって母と交換日記をしたことがありました。1年も続かなかったと思うけど。こう思うと、私がアレコレ考えついてはすぐにやってみようとするのは、やっぱり母に似ているのでしょうか?
たくさんの買い物客がうごめく。みんな、あんなに生きている。あたしたちはスーパーマーケットの白くあかるい照明にひとしく照らされている。誰かのいい日にともしびを。北海道のスーパーマーケットを舞台に、それぞれの人生の1日を描いた連作短編集。
(朝倉かすみ)1960年北海道小樽市生まれ。北海道武蔵女子短期大学卒業。 『コマドリさんのこと』で北海道新聞文学賞、『肝、焼ける』 で小説現代新人賞、『田村はまだか』 で吉川英治文学新人賞を受賞。
連作ってただ舞台を同じにしたり現象をつなげればいいものでなく、前章のあれがこことつながっていたなんて!というひっそりとした意外性がないとつまらないし意味がないと思われるのですがどうでしょうか。本作は 『ともしびマーケット』 というスーパーマーケットを舞台にそこに集う人々をそれぞれクローズアップした作品集になっているのですが、それぞれのつながりがあまりにも見え見え過ぎて、門田新子の章などいい感じのものもあるのに段々と陳腐になっていき終章なんて…どうしてわざわざラストに短編に出場した人々をオールスター集合にする必要性があったのか?となってしまっていて、逆効果な感じがしてしまいました。
花見の章もなぜこの時期に花見に行くのか、そのおかしみが作者の独り善がりにしかなっておらず、読んでいてつまらなくて辛い。せっかくの単行本化にあたりもっともっと改稿したら良かったのに。正直、舞台である 『ともしびマーケット』 の存在感がほとんどないです。別にこれならともしびマーケットじゃなくてどこでもいいかんじ。しかも舞台が札幌なんて!1、2章まで東京大田区とかその辺かと思ってたので中盤から大層ビックリしました。それほど、札幌という雰囲気も土地勘も情緒も全く出ていないように感じてしまった…。作者は北海道出身なのに、なんで??
評価:(酷評ごめんなさい)
パリにあるルーブル美術館はさながらパリの中にあるもうひとつの街のようだ。何10kmにも渡る地下の回廊、30万点に及ぶ美術品、2800室分もの鍵、10500段の階段。そしてそこで働く人々。学芸員、電気工事士、指物師、錠前師、室内装飾師、大理石職人、金めっき師、庭師、事務職員、食堂のコック、案内係、物理学者、化学者、資料係、修復師。ルーブルには1200人もの職人らがそれぞれの分野の仕事を受け持つプロなのだ。その様子を追ったドキュメンタリー、1990年フランス。
3年ほどまえにH市でも劇場公開されていましたが、上映がたったの1週間で見逃してからずーっと観たいと思い続けていた本作。こういうマニアックなドキュメンタリーはレンタルビデオにもなかなかないのですよ。郊外のNG図書館にDVDがあるのですがなんとNG図書館のDVD類は禁帯出なのです。ということでついに時間をとって本作を観に、NG図書館へ行くことができました!もう絶対に今日はこのDVDを観る。と堅く決心して行ってきました。
ルーブルは大英博物館と並ぶ世界に誇る大美術館。そこで働く人々は実に自然体ですね。無造作に絵画・彫像を運ぶ人々、日本の学芸員みたいに手袋なんてしてない(笑)。巨大な絵を巻いて保存してある状態から開いて行く作業、カビで一部分がハゲてた!でも修復師らは大胆に塗り、削り、ニスを重ねていく。ドキドキしないのか?この技と大胆さのおかげで今日も明日もこれからもルーヴルで作品が観られるのですね。
新しい制服のサイズ合わせ、額の修復(金箔塗り)、消火訓練など様々な日々の雑事の中、展示替えは進んで行きます。絵の組み合わせ(展示)について相談する学芸員ら、絵に関する膨大な知識と、それを更に上回る作品への愛情が必要な、美術館において最も重要な作業ですね。
職員らの日常が面白いです、館内にあるトレーニングジムや職員食堂の様子、昼休みにゲーム(クリケット?)をしてくつろぐ様子。重い彫像を苦労して台車で数人がかりで運び、設置して展示案内プレートを貼ろうとして、これはどっちに貼る?分からないよ聞いてくる、というやりとり。一人一人が皆ルーブルという美術館、人類の宝庫での仕事に誇りを持ち楽しんでいる様子がよく伝わってきます。
『ルーヴルとは何度も参照する大きな書物だ』 という学芸員。だからより多くの展示物を見せたいのだと彼は言う。そんな彼らを筆頭とする職員は1200人、所蔵資料は30万点。そしてそれらを運ぶための地下通路は、全長15キロ!ルーブルの裏側見学ツアーなどもあったらぜひ行きたいですね。これからルーブルに行かれるご予定の方はぜひご覧ください。
評価:(5つ満点)
寄せ集めの10人でいきなり箱根駅伝出場を目指そうと言うハイジの一言を聞き、かつて高校陸上で活躍した走は愕然とする。しかしその一見無謀な計画の裏には陸上の監督としての才能をフルに開花させた見事な練習計画があった。陸上未経験者がほとんどのアオタケのメンバーを率いて寛政大学陸上部が箱根に挑む。三浦しをん原作。
原作三浦しをん。ということでしをんちゃんファンの私は必見です。事前に読了してから映画に挑もうと思っていたのに映画が先になっちゃったわ。
さて映画、実に昭和な内容で特に陸上部の寮、竹青荘(アオタケ)のセットがすごいです!更にエキストラの動員数がすごいです!本当に一言で言って昭和、ストーリーも展開も何もかも。舞台設定も昭和でしょうか。
初回の練習からアオタケのメンバーが割と走れちゃうところがスゴイですが、それ位じゃないと1区間20キロ前後の箱根駅伝走覇はムリですよね。ハイジが寮生全員の食事を作り、掃除(トイレ含む)をし皆の面倒をみる甲斐甲斐しさのところはやっぱりBLなのか?と、とにもかくにも三浦しをん作品の場合はBL要素を見いだそうとしてしまう私(笑)。
でも映画としてもダンテ・カーヴァーがもっとふざけているのかと思ったらかなり真面目に演技していて良かったり、若手俳優さんばかりでスターはいないのですが(失礼)それがかえってとてもいい感じだったり、長い原作(未読)上手にまとめてさすがの構成も見事でした。序盤からラストまでの展開もクライマックスもその演出が実ーに昭和的で、大変満足ですね。やはり若者は走らなくちゃ!次は原作読んでお正月の箱根駅伝(テレビ鑑賞)ですね。
評価:(5つ満点)