監視下の生活、偽装経歴、脱出の誘惑。戦争の恐怖、飢餓と配給。拉致被害者の著者が 『北』 での24年間を綴った迫真の手記。北朝鮮の招待所生活で接した人達や平壌市内の市民についても叙述する。『波』 連載を加筆修正して単行本化。
(蓮池薫)1957年新潟県生まれ。中央大学法学部3年在学中に拉致され24年間北朝鮮での生活を余儀なくされる。帰国後中央大学に復学。新潟産業大学専任講師。『半島へ、ふたたび』 で新潮ドキュメント賞受賞。主な著書に 『蓮池流韓国語入門』 『私が見た、「韓国歴史ドラマ」の舞台と今』 など。翻訳書に 『孤将』 始め多数。
前作 『半島へ、ふたたび』 よりも、具体的な 『北』 の地での生活について書かれていて興味深い。実際のところ、蓮池氏とご家族は、本書にあるとおりスパイ的な活動とはそれほど深く関わっていなかったということだろう。もちろん今までもこれからも言えないこと、は多々あるのかもしれないが、それでも氏がこれまで経験したことを自分の言葉で伝えよう、という気持ちは本書でもよく伝わってくる。
拉致問題が解決に向かうには、蓮池氏をはじめとする被害者の方々が声を上げ続けていくしかない。その覚悟が表れている本書。市井の人、しかもまだ大学生だった氏と夫人が経験したことは、決して他人事ではない、という事実。
蓮池氏の感情に流されない文章が、かえって心を打ちます。
評価:(5つ満点)
栞子さんと消えない絆
鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂はその佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や困惑するような珍客も。4冊の本が見えない絆をあらわにした時、栞子さんの母親への想いは変わるのだろうか。
(三上延)1971年横浜市生まれ。武蔵大学人文学部卒業。ライトノベル作家。『ダーク・バイオレッツ』 で電撃小説大賞三次選考を通過し同作でデビュー。本書で2012年本屋大賞にノミネート。主な著書に 『ダーク・バイオレッツ』 シリーズ、『偽りのドラグーン』 シリーズ。
ビブリア古書店も3冊目。今回もマニアックな本が4冊。今可愛いキャラクターとして有名なあのチェブラーシカは、ロシア(ソ連?)のキャラだったとは!しかもふるーいチャブラーシカは、何だか可愛くないらしい。オリジナルを見てみたい。
今回のテーマは 『絆』 。栞子さんは小さい妹と自分を置いて出て行ってしまった母親に対して激しい感情を抱いておりますが、その母親ともやはり絆があるらしい…ということに気付くという展開。栞子さんのおかあさんはなぜ家を出たのか?その、不可解なスパイ的活動は、何のためだったのか?とまぁ物語は徐々に探偵風。
引っ張り方が上手いのは、さすが。続きも楽しみにしています。
評価:(5つ満点)