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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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死命*薬丸岳

simei.jpg榊信一は大学時代に恋人を殺しかけ自分の中に眠る女への殺人願望に気づく。自分が病魔に冒され余命僅かと知りその欲望に忠実に生きることを決意する。それは連続殺人の始まりだった。『別冊文藝春秋』 連載を単行本化。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。主な著書に 『闇の底』 『悪党』 『刑事のまなざし』 など。


連続殺人鬼が主人公。となれば一体どんな狂ったヤツなのか…と思いきやそこが薬丸岳。殺人鬼の心の闇を主人公として描くことで見事に描ききってます。どんな事情があるにせよ殺人を犯すことの理由にはならない。という大前提を踏まえてもなお、主人公である榊の心情を思うと涙が出ます。様々な状況をかいくぐりなぜ榊が連続殺人鬼となり得たのか。つまり連続で殺人を犯し続けることができたのか(=殺人が発覚しなかったのか)。この辺りの設定、トリックも実に見事です。

上質なミステリーとしても、かつ愛情に飢えていた子どもの物語としても読ませる一冊。東野圭吾 『白夜行』 を読んだときと全く同じ感想ですが、親としての責務は子どもに 『幸せな子ども時代を送らせること』 これに尽きると思った一冊です。薬丸岳にはハズレなし、ぜひ皆様もご一読を。

評価:(新作が本当に楽しみ)
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よろずのことに気をつけよ*川瀬七緒

yorozu.jpg被害者は呪い殺されたのか。変死体のそばで見つかった呪術符。その意味は。殺害された老人の孫娘と共に、呪術の研究を専門にする文化人類学者 仲澤は殺人事件の謎に挑む。第57回江戸川乱歩賞受賞作。
(川瀬七緒)1970年福島県生まれ。文化服装学院服装科デザイン専攻科卒。子ども服デザイナーを経て作家。本作で江戸川乱歩賞受賞。


江戸川乱歩賞、ダブル受賞、しかも2人とも女性作家。ということで話題になった一冊。だいぶ図書館で待たされました。ストーリーは若干荒削りですが登場人物らの魅力がバッチリカバーしてます。呪術研究家の仲澤(呪術の研究で本当に大学に籍をもらえるのか?)、その友人の怪しすぎる占い師 湯山、アドバイザーとして登場する鳥類研究者の野呂など、設定もキャラクターもいいです。

しかしラストはなかなかな衝撃で、これはちょっとどうかなと思いますが、最後まで読者を飽きさせないのはお見事です。

評価:(5つ満点)

文明の子*太田光

bunnmei.jpg地球、そして地球とは別の進化を成し遂げた星の過去と未来に秘められた謎。新たな文明へと踏み出すために動き始めた子ども達。果たして人類の行く末は生か死か?絡み合うパラレルワールドが紡ぎ出す壮大な物語を斬新なスタイルで描く。書き下ろし。
(太田光)1965年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退。お笑いタレント、漫才師、エッセイスト。田中裕二と 『爆笑問題』 結成。著書に 『パラレルな世紀への跳躍』 『マボロシの鳥』 他多数。


小さな短編の組合せで綴られてます。そのうち 『大いなる計画』 がベストですね。今回も実験的な小説で細切れにストーリーを織り交ぜてあり、結構読みにくいです。しかしオリジナルの世界観を持ちそれを表現しようとする太田さんの姿勢が好きなので、今回も良かったです。

この 『大いなる計画』 のようなSF物をもっと書いて欲しいですね。小松左京か星新一か、と思いました。物語は赤ちゃんポストが設置され多くの子どもが預けられるようになって数十年。体外受精の技術も進み、人口減少が大きな問題だったわが国で、突然その問題が解消し始める、という設定。つまり、人口が増えてきたのだ。なぜか…それはこの大いなる計画の結果だったのだ。という物語。すべての社会現象は、その抱える問題に原因がある。ということに鋭く切り込んだ一篇。この部分だけもっと膨らませて書いて欲しいですね。

次回作も楽しみです。

評価:(5つ満点)

晴天の迷いクジラ*窪美澄

seiten.jpgただ死ぬなよって、それだけ言えばよかったんだ。心療内科の薬が手放せない青年、倒産しそうなデザイン会社の孤独な女社長、親の過干渉に苦しむ引きこもり少女。壊れかけた3人が出会い、転がるようにして行き着いた海辺の村で彼らがようやく見つけたものは。入り江に迷い込んだクジラを見るために連れ立った3人の旅を描く。 『yomyom』 掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
(窪美澄)1965年東京都生まれ。カリタス女子中学高等学校卒。フリー編集ライター。『ミクマリ』 で女による女のためのR-18文学賞大賞、同作所収の 『ふがいない僕は空を見た』 で山本周五郎賞受賞。
(収録作品)ソラナックスルボックス/表現型の可塑性/ソーダアイスの夏休み/迷いクジラのいる夕景


秀作。ぜひご一読を。うちで取っている地元紙の記事に、著者 窪美澄氏の記事がありました。震災後、何をしていいのか分からなかった時期に、窪氏も本に救われたとありました。その記事から。

デーリー東北 2012/3/4より
著者に聞く 小さくても強い物語の力 「晴天の迷いクジラ」 窪 美澄さん
「昨年の震災で憂鬱な気分だった時も、今村夏子さんや西加奈子さんの作品を読んで、ああ面白かった、いい日だったと、小さくても強い力をもらった」と振り返る。


ここが、私と同じだ!と思いました。今村夏子、西加奈子。

「いい物語は、ぽーんと遠くに飛ばしてくれて、戻って来ると今の自分が少し変わっている。私もそんな本を書きたいですね」

その通りだ !! ということで早速本書読んでみました。大当たりですまた素晴らしい作家に出会うことができて、まことに幸せです。

ソラナックスルボックス
あまりにも忙しいデザイン事務所で働く由人は給料未払い24時間以上勤務。女社長は鬼のような人、先輩には 『俺たちもみんな行ってるから』 と心療内科にまで行かされる。ついに由人はもらった薬を一気に飲んでしまう。その由人を救ったのがなぜか鬼の女社長。社員のことなど虫けらのように思っていたはずの彼女がなぜ…?

表現型の可塑性
その社長がなんと第2章の主人公 野々花。彼女の壮絶な過去がここで語られる。正直この2章が一番辛いです。あんまりすぎます。野々花はただ、表現すること、絵を描くことが好きだっただけなのに。

ソーダアイスの夏休み
その後第3章では女子高生 正子が主人公。正子は名前の通り母親には常に正しいことをするよう求められている。なぜか、それにも深い事情があった。母親の立場から見ると正子の母の異常なまでの正子への執着は、理解できる部分が多くこれまた辛いのです。

迷いクジラのいる夕景

そして終章でみんなは出会い、小さな海辺の村の入り江にはまってしまったクジラを見に行こうということになる。クジラ…その象徴する意味は。と書くと、いかにも苦労連続の人々の話を集めたようですが、この作品のすごいところは由人も野々花もそして 正子も、すごい環境にありながらもその環境は決して荒唐無稽ではなく、誰しも陥る可能性のある状況だということです。ものすごいリアリティが迫ってきます。3人の環境は誰にでも、つまりこの私にもあり得る状況だという状況です。

3人の置かれた過酷な、そして実にありふれた状況を、ぜひ本書を読んで確認してください。その3人が出会い、なぜクジラを見に行くことにしたのか。クジラを見に行くことに何の意味があるのか。結局【人を救えるのは人しかいない】ということを強く訴え感じさせてくれる、力強い一冊です。必読です。

評価:(満点!)
 

獅子頭*楊逸

sizu.jpg幼い頃は雑伎団の訓練校で技を鍛えた二順。夢破れてからは一流の料理人を目指し奮闘、腕が認められて日本へ行くこととなる。大出世を果たしたはずの二順だったが、大連に残してきた妻子と日本でできた恋人との間で揺れ動く日々に。 二順の行く末は。純朴な中国人青年 二順の波瀾万丈の日々を明るく描く。『朝日新聞』 掲載を改稿し単行本化。
(楊逸)ヤン・イー。1964年中国ハルビン市生まれ。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社勤務を経て中国語教師。『ワンちゃん』 で文學界新人賞、『時の滲む朝』で芥川賞受賞。主な著書に 『金魚生活』 『すき・やき』 『陽だまり幻想曲』 。


今回も綿密な設定でこれは楊逸氏にしか書けないなと思わせる、見事な設定でした。生まれ育った貧しい農村では雑伎団の学校に入ってスターになるしか華やかな未来はなく、そこで将来を嘱望されていたにもかかわらずケガをしてしまう二順。しかしひょんなことから料理人を目指す道を見つけ、そこでも腕を磨く二順。そして一流の店でシェフとして働き始める…。ここで終われれば二順の人生もっと幸せだったはずなのに。

大連の店にやってきて二順の料理を食べて感動した日本人にヘッドハンティングされる二順。日本へ行く!国の代表として!なんと名誉なこと!と盛り上がる二順と二順の周囲の人々の描写が非常におもしろいです。国の代表として行くのだから恥ずかしくないように、と共産党員にまでさせてもらっちゃう二順、中国の人々の考え方が実に興味深いですね。そんなこんなにして愛しい妻子まで置いて日本に来たというのに…。

実際は日本人の料理人の半分ほどの給料で、狭い寮(アパート)に押し込められひたすら店と寮の行き来をするのみの日々。それでいいのか二順よ…と思っていたらまたまた事件勃発、なぜか日本人の恋人ができてしまう!このくだりもハッキリいって二順は思いっきりだまされているわけですが、そのことすら気付かない、しかもいつまで経っても気付かない二順の純朴さというか愚鈍さというか。もうあきれたを通り越して愛しくなってきます。あんまりな二順の境遇にこの先どうなるのか…と思っていたところに、ついに二順の反乱が!

山あり谷あり過ぎて、飽きさせません。たった一人の純朴な青年の物語ですが、日中の関係や双方の国民性を見事に描いており、日本人としても考えさせられます。中国の人のおおらかさにも、やはり大陸の人だなぁと感動を覚えますね。楊逸氏は一作ごとに作品に深みが出てきて毎回新作が本当に楽しみです。

評価:(5つ満点)

隠し事*羽田圭介

kakusigoto.jpg僕らには秘密なんてなかった、彼女のケータイを盗み見るまでは。同棲する彼女のケータイを見てしまったことをきっかけに疑いのループにはまってゆく男。 『文藝』 掲載作品を単行本化。
(羽田圭介)1985年東京都生まれ。明治大学卒。『黒冷水』 で文藝賞受賞。主な著書に 『走ル』 『ミート・ザ・ビート』 など。


新聞の書評を見て借りてきた本書ですが、正直どこがポイントなのかサッパリ?と思ってしまいました。主人公 『僕』 の陰湿とまで思える彼女のケータイ盗み見の手段とか、自分で考えずすぐに会社の同期女子の小橋に1から10まで話して相談して答えを出してもらおうとするところとか、ひと言で言ってもうかなりウザイ。こういうウザイ若者が増えていて、そういう人が読むとそうそう俺もだ!と共感できるということでしょうか…?

この主人公 鈴木の人生にとって、恋人茉莉との生活というか彼女の行動を把握することが人生のすべてであって、仕事やその他の趣味(の話は一切出てこない)は、二の次どころかもはや存在しないかのよう。だからこの鈴木の人物像は全くつかめない。それが現代の若者像ということなのだろうか。

あまりオススメしません(笑)。

評価:(5つ満点)

姉の結婚*西炯子

aneno.jpg都会での生活に疲れ、結婚や恋愛はもう卒業と故郷へ戻り司書職についたヨリ。年の離れた妹の急な同居に惑わされつつも穏やかな毎日を送っていたが、そこへ突然イケメン精神科医の真木が現れ熱烈に求愛される。妻帯者である真木とややこしい関係を始めたヨリだったが。
(西炯子)にしけいこ。1966年鹿児島県生まれ。都留文科大学国文科卒。漫画家。主な作品に 『娚の一生』 。


これは誰に向けて描かれたマンガなのだろう?アラフォー独身女子向けなのか、本当に?これってもはやファンタジーを越えて単なる妄想ではないのか?と読了直後思ってしまいましたが…。話題作  『娚(おとこ)の一生』 もだいぶ非現実的(主人公が営業職なのに在宅勤務とか)と思ったけどこれは更に上を行く展開です。このマンガのどこが、多くのマンガ書評家に 『このマンガを読め!』 と言わしめているのかな?ようするにアラフォー男女はまだ大人になりきれていない、ということを言いたいのでしょうか。

絵もキレイですしキャラクターが面白いので読んでいて楽しいですが、あまりに現実とかけ離れているので読了後はちょっとあれっと思ってしまいます。今後この着地点をどうするのか、ある意味目が離せません(笑)。

評価:(5つ満点)

陰山英男の英語学習「再入門」*陰山英男

sainyumon.jpg忙しい大人が最低限の時間で最大の効果をだす勉強法
自分が話したい内容だけを英語にして覚える、質のよい発音を繰り返しヒアリングする。著者が50歳から英語を学ぶために考案した、大人が英語を学習するための新メソッドを紹介。
(陰山英男)1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。立命館大学教授、立命館小学校副校長、大阪府教育委員会委員。小学生のための学習メソッド 『陰山メソッド』 考案者。主な著書に 『家庭力』 『学力は1年で伸びる!』 『若き教師のための授業学』 など。


陰山メソッドで有名な陰山先生が、自らが50歳を越えて本格的に英会話を習得するために考案した、陰山メソッド大人の英語学習版を自らの実践と共に紹介した本書。自分がまずやってみる、の陰山先生、立派だわぁ。英語を初めて勉強し始めたのは小6の時、あれから30年近く(!)経っているのですが自らの英語学習にいつも疑問を感じている私に、力強いアドバイスとなった一冊です。

サブタイトルにあるように 『忙しい大人が最低限の時間で最大の効果をだす勉強法』 。本当に大人って忙しいんです、自分の仕事、家事、子どものこと、すべてをこなしてその上自分のための勉強もしようなんて、よほど気合い入らないとできないものです。そこをうまく自分を騙しつつ?続けて行くにはどうしたいいか。本書では陰山先生が50歳を過ぎてアジアの教育に関する国際会議に出た時に感じた、出席者の中で自分だけが、会議の場で通訳なしで自分のメソッドを説明できないことのもどかしさ、悔しさをバネに、英会話力を上げようと考えるに至った経緯とその方法について書かれています。

自分が困ったことと、なりたい自分(英語で自分の陰山メソッドを説明する)、それが見えていれば道が見えてくる。逆にそれが見えていなければ道が見えてこないのは当たり前だという陰山先生。まずは自分のビジョンをしっかり持つこと。どんなことを英語で話したいか、その理想を自分でしっかり想像する。そしてその想像した自分に近づくためにどんなことが必要かを、1つ1つ考えていく。

ポイントは実にシンプルです。

学習を続けること。
ネイティブスピーカーに自分が言いたいことをまとめたフレーズを見てもらい、おかしな表現はその都度改めてもらう。
繰り返しそのフレーズを、使う場面を想像して覚える。


この3つです。まずは、なりたい自分というビジョンだという陰山先生の説得力ある言葉に、がーんと来ました。そうか何となく勉強しててもダメなんだ…当たり前ですけど。あと、どんなにブランクが空いても自分は英語学習者であることを辞めないこと。とにかく続けること。語学上達にはゴールは本当にありません。

まずは自分の自己紹介から。自己アピールですね。自分を人に知ってもらうには自分は何を得意としていて何を生業としているかをハッキリと認識しなくてはなりません。これは語学学習と別にしても常に考えておいて損はないことですね。自分を見つめ直すことが、何事も学習の基本です。そしてなりたい自分を想像すること、そこへ向かってひたすらに歩むこと。

やはり1つのことを極めた方の発言は、重みがあります。私も諦めずに英語学習を続けたいと思った一冊です。

評価:(5つ満点)
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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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