耳が聴こえない青森一の不良娘が筆談だけで銀座No.1ホステスになった。 難聴者としての人生や想い、家族のこと、これからの夢などを綴るほか、筆談での接客術もあわせて紹介。
(斉藤里恵)1984年青森県生まれ。病気の後遺症で1歳10ヶ月で聴力を完全に失う。銀座のクラブで人気ホステスとして活躍。著書に 『筆談ホステス67の愛言葉 青森一の不良娘が銀座の夜にはぐくんだ魔法の話術』 『筆談ホステス母になる ハワイよ61の愛言葉とともに…』 。
職場で本の話になり、本書の話が出てそう言えば話題になった時読んでみたかったけど読まなかったんですよ、と言ったら先輩が貸してくれました。ありがとうございます。
ということでさっくり読みました。こういう自身の体験談で大事なのは、いかに読者に負担をかけず自分の話を読ませるか、ですね。構成も巧くサクサクよめました、やはり構成が大事ですね。斉藤さん自身の負けん気の強さというか芯の強さが成功の一番の秘訣だったとは思いますが、大事なのは決して夢を諦めないこと、お客様の心に沿う努力を常に続けること、これに限ります。
そしてそれはどんな仕事に就いていても、当てはまることなのでした。機会がありましたらご一読を。
評価:(5つ満点)
上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは10歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンの伯母の元に帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる第2次大戦下の上海へと舞い戻るが。記憶と過去を巡る一人の探偵の冒険譚。
(カズオ・イシグロ)1954年長崎県生まれ。5歳の時父親の仕事の関係でイギリスに渡る。ソーシャル・ワーカーとして働きながら執筆活動を開始。著書にブッカー賞受賞作 『日の名残り』 『わたしを離さないで』 など。
カズオ・イシグロの代表作と言われる本作、 『私を離さないで』 に感銘を受けた私は読んでみたのですが。ミステリーと思わせておいて実は…という作品で、読了後かなりの重苦しさが残ります。私にはシビア過ぎました。
列強の支配下にあった中国、上海の描写はとても魅力的に書かれているのですが、社会の最も見たくない醜い部分、偽善の部分をこれでもかと押しつけてきます。社会にはびこる様々な偽善について問われると、その答えを探すのに相当な覚悟が必要です。バンクスの立場、父と母の立場、周囲の人々の立場。複雑な環境で繊細に育ったバンクスが、上海に戻り見た風景は。
主人公バンクスのこれからの人生が、本当に心配です。ひたすらに、重いです。
評価:(5つ満点)
讃岐国 丸海藩。不幸な身の上のほうは、金比羅代参を言い訳にこの地に置き去りにされる。捨て子となったほうは藩医を勤める井上家の親子に引き取られ可愛がられるもある日突然井上家の娘が頓死したことで運命が大きく動き出す。折しも幕府の要人であった加賀が丸海藩に流罪となる。幽閉の日々を送る加賀様の怨念が次々と丸海藩に厄災を運んでくるのだと信じ怯える丸海藩の人々。ほうはその加賀様の屋敷の下働きとして働くことになる。加賀様は本当に鬼なのか。一方水面下では加賀様預かりと同時に藩の存亡を賭した秘策が進んでいた。大きな歴史の渦の中で力強く生きる無垢な少女、ほうの姿を描く。宮部みゆきの真骨頂、時代小説の最高峰。
(宮部みゆき)1960年東京都生まれ。 『我らが隣人の犯罪』 でオール讀物推理小説新人賞、『魔術はささやく』 で日本推理サスペンス大賞、『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、『火車』 で山本周五郎賞、『蒲生邸事件』 で日本SF大賞、 『理由』 で直木賞、 『模倣犯』 で毎日出版文化賞特別賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、『名もなき毒』 で吉川英治文学賞を受賞。書ききれない。
久々の宮部時代物です、公文の教室のKG先生に貸していただきました、ありがとうございます。さて読書家でいらっしゃる先生のおかげでうちの教室の公文文庫の本棚には絵本も大人向けの小説も良書が揃っているのですが、わざわざこの本は先生から直々にお借りしたのです。それはなぜかと言えば(長いよ前書きが)。
中学校時代から本っ当に本を読まない第1王子、もはや彼の読書人生はこれまでかと諦めかけていたところ、ある日突然本を読むようになりました!きっかけは日本アカデミー賞 『八日目の蝉』 (映画)です。一緒にテレビで日本アカデミー賞を見ていて、この映画そんなにいいのか、というので良かった良かった、なんてったって劇団ひとりの演技がすこぶる良かった(自説)、とか話していて、やっぱりこれは原作読まなきゃ、原作のラストの希和子のセリフが素晴らしいのよね、と話したことがきっかけで、一緒に古書店に文庫本を買いに行きました。
そして見事 『八日目の蝉』 にハマりました第1王子!もっと読む本ないかと言うので(失礼ながら)当たり外れのある角田光代は避け、高校生男子に何を勧めるべきか?映画原作だと読むのか?とまずは 『容疑者Xの献身』 を買いました。
そして再び当たりました!こうなると第1王子、ママのオススメする本はなかなか面白いじゃん、と学習し一気に読書生活へ!みんながテスト自習してる間も読んじゃってオマエ余裕だなとか言われちゃったよ…と言いつつも、読め読めヨメヨメ第1王子。普段自分のために文庫本は買わなくてもムスコのためなら買ってしまう(笑)。そのうち自分でも買ってくるようになりました、私の未読本もありなかなか興味深いです。
角田光代 『八日目の蝉』
東野圭吾 『容疑者Xの献身』
薬丸岳 『天使のナイフ』
東野圭吾 『白夜行』
鈴木光司 『リング』 ※ブログ以前既読
吉田修一 『悪人』 ※未読
万城目学 『プリンセストヨトミ』 ※未読…いつ読める
などなど。私も読まないと。それにしても人に本を薦めて 『面白かった~』 と言われることって、なんて快感なんでしょうねぇ!そのために読んでるのか私。あー本読みで良かった(笑)。
ということでやっと本作の感想。さすが宮部みゆき、本当に読者を裏切らない素晴らしい展開。終章は先生お勧めの通り、涙涙でした。宮部の作品はどれもそうですが、前半がかなり綿密で若干読むのが辛い時があります…私も今回上巻に2週間位かかってしまいました。ところが中盤から一気に本が手放せなくなり、下巻は一日で読了(笑)。この頃宮部はいつもこのパターンです。
ほうを始め登場人物らの描写が実に綿密で、しかもそれが後半に入ると必然だとつくづく感じてしまうのです。やっぱり小説は人物描写が一番大事ですね。みなしごのほうは 『阿呆のほう』 と言われても優しく見守ってくれる井上家の人々と幸せに暮らしていたのに、なぜ鬼と言われる加賀様の屋敷にやられることになるのか。我が身を嘆くほうに、加賀様と触れ合う機会が与えられる。徐々に加賀様の人柄を理解していくほう。ほうの生きる狭い社会が、加賀様を取り巻く幕府、丸海藩重鎮らの陰謀という大きな社会とどう交わるのか、を様々な登場人物らを描くことで大きくしっかりと描ききった本作。
宮部みゆきを読み終わるといつも思うことですが、今回もしみじみ思ってしまいました。宮部を日本語で読める日本人で本当に良かった。KG先生、ありがとうございました、またお勧め教えてくださいね。
評価:(日本人なら宮部を読め)