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百年法*山田宗樹

1945年太平洋戦争終結。日本には原子爆弾が6発投下され都市部は壊滅、人口は半減。日本全土を支配下に置いたアメリカは天皇制を廃し共和制を敷く。GHQはすでにアメリカで実用化されていたヒト不老化技術(HAVI)を日本に導入することを決定する。HAVI導入時に併せてある法律が制定された。生存制限法、通称 『百年法』 。HAVIを受ける者は処置後百年を経て生存権を始めあらゆる権利を放棄することに同意せねばならない、とする法律の、最初の施行の年が迫っていた。ほぼすべての人が不老となった時代に、百年法の施行は人々にどのような決断を迫るのか。
(山田宗樹)1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了。製薬会社勤務後、『直線の死角』で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。主な著書に 『嫌われ松子の一生』 『天使の代理人』 など。

近未来物が大好きな私には、かなりの期待の設定。みんな年を取らず、代わりに百年経ったら死ななきゃならない国!どうなるどうなる…と読み始めたのですが。最初の方はすごくいいです、みんなとりあえず若くて体力はあるものだから、ますます能力のある者とそうでない者の格差社会化が進み、ルーチンワークをする者は永遠にその仕事だし、そうでないものは優遇されるし、結局同じ不老なはずなのに平等なんてどこにもない。

ただ、大事なところをちょっと飛ばし過ぎかも。これだけ人々が長生きすれば、一番問題となるのはその心の有り様、精神の問題。もっともっと宗教、信仰に走る人が多く出てきて多くの諸派が入り乱れ、それが元でもっともっとおおきな争いが起こるはずなのに、宗教信仰の部分は一切書いてない。そんなわけないと思うのですが…。それから格差が目立つようになってはもっと格差間の争いが顕在化するでしょうに、だから違う階級の人々が同じ社会にいることはトラブルの素だからそうはならないでしょうに、この本ではみんな同じ社会になってる。それもちょっと甘いのでは…。その点、村上龍 『歌うクジラ』 は明確でしたね、あの社会では階級の違う人々は一切交流できない仕組みになってました。そうでないともっと殺し合いとか起こるでしょう。

順番だから、百年生きた人は残された人のために死になさい。という百年法。それにみな同意していたはずなのに、いざ最初の年の適用者が出ることになると、それを先延ばししようとする。政治家達は社会を崩壊させないために是が非でも法律の施行を遂行しようとする。それはそうだと思うのですが、終盤の展開はなかなかにショッキングというか若干それは強引すぎるだろうという想いも。

社会とは、民主主義とは、そういうことを全く無視した本の中の日本政府のやり口には、唖然とします。山田宗樹氏のアイデアは斬新なのかもしれないけど、私には非現実的としか思えず、ちょっと残念。こういう設定の物語が好きなだけに、余計に残念です。

評価:(5つ満点)
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その日東京駅五時二十五分発*西川美和

終戦のまさにその日の朝、焼け野原の東京から故郷広島に汽車で向かったぼく。悲惨で過酷な戦争の現実から断絶された通信兵としての任務は、ぼくに虚無と絶望を与えるばかりだった。滅亡の淵で19歳の兵士が眺めたこの国とは何だったのか。広島出身の著者が伯父の体験を元に、確かにあったあの戦争を描く。
(西川美和)1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。映画監督、作家。映画作品に 『蛇イチゴ』 『ゆれる』 『ディア・ドクター』 『夢売るふたり』  。

西川美和監督が大好きなので、新作小説も読みました。正直なところ若干ぼやけるというか、よく伝わらなかった。伯父の戦争体験を描いた作品、として桐野夏生の 『玉蘭』 を思い出しましたが、あそこまでのインパクトは残念ながら感じませんでした。しかし先の戦争は確実にあったことであり、それを体験してきた人々がいること。そのことを私達戦争を体験していない世代は決して忘れてはならない。という西川監督の想いは、伝わりました。

評価:(5つ満点)

桐野夏生 『玉蘭』

ビブリア古書堂の事件手帖1/2*三上延

鎌倉の片隅でひっそりと佇むビブリア古書堂。店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性。初対面の人間とは口もきけない人見知りだが古書の知識は並大低ではない。本に対し人一倍の情熱を燃やす彼女の元にはいわくつきの古書が持ち込まれることが多い。彼女は古書にまつわる謎と秘密を名探偵のごとく解き明かす。北鎌倉の古書店を舞台に、アルバイトとして人見知りの美人店主と店をやりくりすることになった主人公、五浦の視点から、古書に関わる様々な事件を描く。
(三上延)1971年横浜市生まれ。武蔵大学人文学部卒業。ライトノベル作家。『ダーク・バイオレッツ』 で電撃小説大賞三次選考を通過し同作でデビュー。本書で2012年本屋大賞にノミネート。主な著書に  『ダーク・バイオレッツ』  シリーズ、『偽りのドラグーン』 シリーズ。

友人さつきさんが、中学生の息子さんが欲しいと言ったので買ったんだけど、かなり当たった~!と貸してくれた本書。巷の話題に上っていたので大喜びでお借りしました、いつもありがとうございます。作者の経歴を見ると分かるようにライトノベルなのですが、古書に関わる謎の組み方はなかなか秀逸でよくできてます。古書には人の想いが宿る、というテーマに沿い、必要以上に入り組んでないところがまたいいです。

こうしたライトノベルが売れるか否かの大事なポイントの1つは、、表紙を初めとする挿画だそうですが、この本ももれなく表紙のイラストは、美人古書店主である栞子(しおりこ)さんがどーんと出てます。栞子さんは、この人です。このイメージです。でなくてはなりません。こりゃあ美人…アルバイト青年 五浦くんじゃなくてもクラッと来るわ。

ビブリア古書堂は両親(父は他界、母は失踪)の遺した古書店を、高校生の妹を抱えながら切り盛りする26歳位の店主 栞子さんと、その栞子さんに惚れちゃってたまたまアルバイトをすることになった無職(じゃなくて求職中)の青年、五浦くんの物語。多分こういう姫と侍従、みたいな設定もライトノベルのお決まりなのかも?いわゆる 『萌え』 ってやつですかね(←自分でも分かってない)。古書に関わる謎も、よくこんな古い本知ってるなーと作者の目の付け所には驚かされ、楽しませてもらえます。章ごとに古書に関わる事件が起こり、それを栞子さんが解決していくのですが、事件が解決する毎にそれまで孤軍奮闘だった栞子さんにも徐々に仲間が増え、確実に周囲との絆が深まっていくという物語。いい話だー。

さらに話は進むと10数年前に失踪した彼女と妹の母親との確執が、徐々に明らかになっていく模様です。古書に関わる謎と、美人の謎多き店主 栞子さんの秘密を暴く、という2本立てのストーリーで楽しめる、本好きにはお得なシリーズ。これからの続きが楽しみです。

評価:(一応五浦くんとの恋愛模様もありますがそれはあんまり注目せず、笑)

お父さんのラッパばなし*瀬田貞二

ニューヨークでは窓ふきチャンピオン、イギリスではサーカス団で大活躍。バグダッドでは大泥棒を捕まえて、エアーズロックではブロントサウルスとご対面。ほらのうまいお父さんが吹きまくるゆかいな14のラッパばなし。1977年刊の再刊。
(瀬田貞二)1916年東京都生まれ。1979年没。東京帝国大学卒業。児童文学の翻訳、創作、評論や 『児童百科事典』 の企画・編集などに取り組み日本の児童文学界に多大な功績を遺す。児童書の著書多数。
(収録作品)富士山の鳥よせ/ミスタ・レッドクロス/ふりこ一発/ビーバーの谷/パンパのラッパ/きじの花たば/名前をかえた山/指輪をもらった時計像/アフリカのたいこ/バグダッドのおおどろぼう/インドの夢うらない/大きい石と大きいとかげ/プアプアのくじら舟/海賊たいじ

小学生の頃、うちにこの本のハードカバーがありました。ラッパ、というのはほら話のことです。ほら吹き父さんが毎晩子ども達に話して聞かせる若い頃の武勇伝、という設定なのですが、私はこの本が大好きで何度も読み返してました。大人になってから瀬田貞二の作品で、しかも挿画は堀内誠一、という2大作家による作品と知ったのと同時に絶版になっていることを知り、残念に思っていたのですが。

福音館は文庫版として復刻してくれました、それが数年前。それを改めて第2王子に読んで聞かせたというわけです。文庫版ですが挿画も当時のカラーのまま、贅沢な文庫です。昭和の作品なのでところどころ表現も古いのですが、第2王子も私も十分に楽しみました。

収録作品↑にある通り、お父さんは若い頃船に乗りまずはハワイを目指します。あちこちで大活躍、『ふりこ一発』 は表紙絵の通り、当時世界で一番高いビル、エンパイヤ・ステート・ビルで窓ふき大会に出場、見事優勝を勝ち取る!というお話。とまぁほら話が続くのですが、人を愉快にさせるほら話なら、大歓迎ではないでしょうか。第2王子も 『ホントの話?』 とは決して聞きませんでした、子どもはこういう世界観を自然と理解するものなのでしょうね、かつて子どもだった頃の私がそうだったように。

短いお話が14編、夜寝る前に読むのに実にちょうどいいです。結構2話読まされましたが(笑)。昭和の時代の正しい日本語も好ましいです。

評価:(5つ満点)

ふがいない僕は空を見た*窪美澄

fugainai.jpg彼女との関係は性欲だけなのだろうか、それとも恋なのだろうか?高校1年の斉藤卓巳は好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいつもいっぱい。二人の逢瀬はやがて助産院を女手一人で営む母、痴呆症の祖母を1人で介護する同級生など、周囲の人々の暮らしと想いに波紋を広げ彼らの生き様までも変えていく。 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞受賞作 『ミクマリ』 を含む著者デビュー作。
(窪美澄)1965年東京都生まれ。カリタス女子中学高等学校卒。フリー編集ライター。『ミクマリ』 で女による女のためのR-18文学賞大賞、本作で山本周五郎賞受賞。著書に 『晴天の迷いクジラ』 『クラウドクラスターを愛する方法』。
(収録作品)ミクマリ/世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸/2035年のオーガズム/セイタカアワダチソウの空/花粉・受粉


『晴天の迷いクジラ』 でこれからも私の必読作家だと確信した窪美澄、デビュー作が後になりましたが読了しました。これも当たりですよ当たり!『ミクマリ』 で始まった斉藤くんとアニメオタク主婦あんずの情事が、続く短編で次々と広がりを見せる。実に見事な連作短編集です。

高校生の息子の情事で始まった物語が、離婚して一人で助産院を営む母の生き様まで示して終わるとは、一体誰が予想したでしょうか。今回健康診断の合間に健診センターで待ちながら読んでましたが、あやうく号泣しそうでした(笑)。

社会のマイノリティである、忘れられた狭間で生きる人々が多く登場します。他人と上手くコミュニケーションの取れない夫、そして同じ状況にあるアニメオタクの妻、夫婦として成り立っていない二人。両親が離婚しいつも何かが足りないような気がする高校生。必死で助産院を経営し一人息子を育てながらも失踪した夫の面倒も見る母。貧しい家族ばかりが暮らす団地で教育も愛情も満足に与えられず、自分達の境遇を嘆くことすら知らない子ども達。

登場人物らは誰しも、決してスポットライトは当たらずむしろ惨めな状況でありながら、それは特別なことではないとする窪氏。そう、つらい厳しい状況にいる、ごくごく普通の人々を描いているありふれた日常であるのに、なぜここまで響くのでしょうか。

それはどんな状況でも人は人を求め、愛し、つながろうとする、それが人間だというのが、窪氏のテーマだからではないでしょうか。愛憎と言うとおり愛と憎しみは本当は、一体なのかもしれません。

哀しくも愛おしい、社会の狭間に生きるごく普通の人々を描いた物語。窪美澄、今年一番のおすすめ作家です。ぜひぜひご一読を!

評価:(大当たり!)
 

七夜物語*川上弘美

sitiya.jpg小学4年生のさよは母さんと二人暮らし。ある日図書館で出会った 『七夜物語』 という不思議な本に導かれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷い込む。そこで出会った大ねずみのグリクレルと共に、二人は現実ではない夜の世界を旅することとなる。二人の旅の行方は、そしてその旅に絡む二人の周囲の人々の存在は。『朝日新聞』 連載に加筆修正して単行本化。新聞連載時の酒井駒子の挿画も併せて掲載。
(川上弘美)1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。『神様』 でパスカル短篇文学新人賞、『蛇を踏む』 で芥川賞、『溺レる』 で伊藤整文学賞、女流文学賞、『センセイの鞄』 で谷崎潤一郎賞を受賞、『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。 主な著書に 『竜宮』 『古道具中野商店』 『ニシノユキヒコの恋と冒険』 など。


いつも言っておりますが私は川上弘美の小説を読むと、いつも読後激しく泣きます。そのため体調が良い時に限って読み始めるよういつも気を遣っております…そのくらい、川上文学私にはキツイです。でも本書は新聞連載の上、対象が 『小中』 学生、とあったのでさほど警戒せず読み始めました。読んでいくうちに思ったのですが、これちっとも小中学生向きじゃないです。一体どういう意図で対象を小中にしているのか?さっぱりです。

まず、さよと仄田くんが現在小4であるのは、1970年代初頭です。この場面を70年代にした意図も最後までよく分かりません。ラスト、現代では大人になったさよと仄田くんが出てくるのかと思いきや、そんな展開ありませんでした。読んでいくうちにこれは 松谷みよ子 『小さいモモちゃん』 シリーズみたいだな、と思いました。あの作品は、対象は小学生でありながら、その内容は離婚して苦労して子どもを育てながらも別れた夫の幻影に悩まされるママの姿を描く、なかなかシビアな内容となっています。でも松谷さんはそこがうまくて、キツイ内容をさらっと上手に表現してました。

川上さんはやっぱりちょっと毒があります。そこが魅力なのだとは思いますが。展開は、異世界に入り込んださよと仄田くんが、お互いの存在を疎ましく思ったり愛しく思ったり、また両親の若い頃の幻影に会ったことで両親への複雑な想いを捉え直したり、と小4の二人には過酷と思える精神の旅が続きます。和製ネバーエンディングストーリー、と言えばそうなのですが、私としては子どもにこんなに過酷な想いをさせる必要あるのか?とまたしてもフィクションなのに思ってしまったりして、何とも言えない読後感でした

でも、それが川上文学の魅力なのだと、思います。

評価:(今回は泣かずにすみました)


エマ*森薫

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1890年代ヴィクトリア朝イギリス。エマは良家の家庭教師を引退した老婦人ケリーの使用人であったがかつてのケリーの教え子で有力な貿易商ジョーンズ家の跡取りウィリアムと出会い恋に落ちる。ケリーの死により仕事を失ったエマは、身分違いの恋も諦めロンドンを去り生まれ故郷を目指す。偶然にもハワースの貿易商メルダース家でハウスメイドの職を得たエマは熱心な働きぶりで主人やメイド長らに評価され、ある日メルダース夫人に同行してロンドンへ出かけることとなる。そこで再びウィリアムと出会うのだが、その場はウィリアムの婚約披露パーティだった。階級社会に生きる若い2人の波瀾万丈な身分違いの恋を描く。
(森薫)1978年東京都生まれ。漫画家。同人誌活動を経て本作でデビュー。主な作品に 『シャーリー』 『乙嫁語り』 『森薫拾遺集』 。


森薫デビュー作。純愛モノではありますがイギリス19世紀末のヴィクトリア朝時代の風俗へのスポットの当て方が、とにかくオタク目線でスゴイ作品です。メイドさん服のフリルとかこれでもかこれでもかと描かれています。デビュー作らしく1、2巻は画もあんまり巧くなくストーリー展開もイマイチなのですが、3巻くらいから画も巧くなり話が乗ってきて俄然面白くなってきます。本編は7巻で一応完結で、8、9、10巻は他の登場人物らのスピンオフを集めた短編集、という作りになっていますが、実はこの8巻以降の方が面白かったりするという、本末転倒な作品です。
emmaguide.png
森薫氏の作画へのこだわりと登場人物ら一人ひとりに対する愛情の深さをこれでもかと知ることのできる作品です。ヴィクトリア朝の風俗について描かれた副読本 『エマ・ヴィクトリアンガイド』 もこれまた内容すごすぎ。ここまでやるかっ。のオタク的展開で潔いです(笑)。本編と併せてお楽しみください。

全10巻、貸出可能です。こだわりのある作家が好きな私にピッタリの漫画家ですね(笑)。

評価:(5つ満点)
 

氷山の南*池澤夏樹

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2016年1月、18歳のジン・カイザワは南極海の氷山曳航を計画するシンディバード号にオーストラリアから密航する。乗船を許されたジンは厨房で働く一方、クルーや研究者たちのために船内新聞を作る記者となった。多民族、多宗教の船内でジンはアイヌの血を引く自らのルーツを強く意識する。様々な知的冒険と難問に出会い、ジンが最後に見たものは。『東京新聞』 ほか連載を単行本化。
(池澤夏樹)1945年北海道生まれ。都立富士高校卒業、埼玉大学中退。詩人、翻訳家、小説家。翻訳はギリシア現代詩からアメリカ現代小説など幅広く手がけている。 『スティル・ライフ』 で中央公論新人賞、第98回芥川賞、『母なる自然のおっぱい』 で読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』 で谷崎潤一郎賞、 『花を運ぶ妹』 で毎日出版文化賞を受賞。主な著書に 『キップをなくして』 『静かな大地』 『きみのためのバラ』 など。


池澤夏樹の、しつこさが好きですね。今回も結構しつこいです。このくどくどした感じが好きなのでくどくどした文章が好きじゃない方にはお勧めできません。ができたら読んでいただきたいです。

ちょっとだけ近未来。水不足の世界では南極の氷山をオーストラリアまで持ってくるという巨大プロジェクトが行われる。ジンはその船に密航することにした。年若いジンはアイヌの血を引いていることで幼い頃から家族が苦労する姿を見て育ち、自身は狭い日本を飛び出し高校からニュージーランドで暮らしている。その彼はもちろん英語には自信があり、生きぬく力はその辺の18歳と比べると抜群にある、という設定。いいねぇそういう若者を敢えて描く。狭い船内での権力闘争、恋愛模様、また巨大プロジェクトに対するクルーそれぞれの微妙な思惑の違い、そしてプロジェクトそのものに反対する謎の環境団体の攻撃など、飽きさせません。多くの困難に出会いながらもジンは自身の持つ 『生き抜く力』 で乗り越えていく、こういう若者が21世紀もわんさかいればいいんですけど。

ちょっと近未来でファンタジーでありながら、現代に対し希望を失うまいとする池澤夏樹の文学、私好みです。この本映画化したら面白いだろうなぁ、氷山引っ張ってくるところとか。

評価:(5つ満点)
 

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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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