奇譚、それは不思議な、妖しい、ありそうにない話。しかしどこかあなたの近くで起こっているかもしれない物語。『新潮』 掲載に書き下し1編を加えて単行本化。
(村上春樹)1949年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ジャズ喫茶の経営を経て作家へ。『風の歌を聴け』 で群像新人文学賞、『羊をめぐる冒険』で野間文芸新人賞、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞、『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞、『約束された場所で―underground 2』で桑原武夫学芸賞を受賞。また朝日賞、早稲田大学坪内逍遥大賞、フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、世界幻想文学大賞、エルサレム賞などの海外の文学賞を受賞。翻訳多数。
(収録作品)偶然の旅人/ハナレイ・ベイ/どこであれそれが見つかりそうな場所で/日々移動する腎臓のかたちをした石/品川猿
読書会3月テーマ本。私にとってハードルの高い村上春樹ですが、新幹線の中だとよく読めました。品川猿、がよかったです。あとは奇譚集というより異譚集というイメージでした。
村上春樹の小説の登場人物はみんな、すごく自立している人が多いです。人に頼らず自分の足で世界のどこまでも歩いていく。迷わない。強い。その人物像に読者はみんな自分を重ねるのか、それとも憧れるのか、どちらなんでしょう。
評価:(5つ満点)
日系アメリカ人ジェド・豪士はベトナム、アフリカの各戦線を渡り歩いた傭兵。ある事件をきっかけに傭兵を引退した彼は民間軍事顧問機関CMAで戦闘インストラクターとして様々な事情を抱える人々に戦闘をレクチャーしている。数々の戦歴を持つ彼は次第にヨーロッパ全体を脅かすテロに巻き込まれてゆく。原作:工藤かずや、作画:浦沢直樹。ビッグコミックオリジナル連載(1985~1988)を単行本化。
(工藤かずや)長野県生まれ。漫画原作者。主な代表作に 『ゴルゴ13』 『信長』 など。
(浦沢直樹)1960年東京都生まれ。明星大学卒業。漫画家。『YAWARA!』 『MONSTER』 『20世紀少年』 で小学館漫画賞、『MONSTER』 『20世紀少年』 『PLUTO』 で文化庁メディア芸術祭優秀賞、『MONSTER』 『PLUTO』 で手塚治虫文化賞、『20世紀少年』 『21世紀少年』 で講談社漫画賞、日本漫画家協会賞大賞、星雲賞を受賞。代表作はやっぱり誰が何と言っても 『MASTERキートン』 。
火消し屋小町に続きマンガ天国。冗談でなく20数年前から揃えたいと思っていた本作、突然古本屋で集めることにしました。連載は80年代、30年以上も前だ!しかし今なお色褪せない浦沢作品の魅力。浦沢直樹はこの作品で連載がスタートしたのではないでしょうか、記念すべき作品ですね。舞台は80年代アメリカが中心。日系アメリカ人の豪士はベトナム戦争帰りの傭兵。ベトナム戦争に行ってたってことは少なくともその頃20代だったわけで、となると豪士は1950年生まれくらいになります!今生きてたら60代だ。今も元気でいてくれそうな気がします。
凄腕の傭兵だった豪士、ある事件をきっかけに傭兵を辞めて戦闘インストラクターとなる。1巻の最初の4作位は読み切りだったそうです、そこで人気が出たので連載となり、1巻の最初からいきなりアメリカ軍のクーデターというやたらに大きな内容になってます。傭兵時代の仲間が豪士を慕って続々と集結する様子は、まるで特攻野郎Aチームですね。きっとこれにインスパイアされたに違いない。
物語の中盤から徐々に現れる謎の日本人テロリストの存在。豪士を目の敵にする彼はついにヨーロッパ壊滅計画を打ち立て、豪士らAチームは、じゃなくて仲間達はそれに立ち向かう!それにしても時代を感じるのはベトナム戦争もですが各国の大統領、レーガン、ミッテラン、そしてゴルバチョフなどが続々出てくるところですね!そうだったそうだった…まさに歴史の勉強です。
全8巻ですが、8巻のラストが1巻の最初につながっている、というちょっとした仕掛けも最後まで楽しめます。この後あの 『MASTERキートン』 が始まります、浦沢氏は豪士に文型の要素を加えたヒーローを描きたかった、と連載初期の頃話してました。あのキートン先生は、豪士という存在から生まれたのです。そういう意味でも非常に感慨深い作品です。
今なお色あせない、初期の浦沢作品。上質なマンガを読みたいあなたにぜひオススメします。本当に昔のマンガは面白かった…プロット、作画、すべてが完璧です。
評価:(この素晴らしい作品が全8巻で1,020円!バンザイ!)