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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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お友だちからお願いします*三浦しをん

「お友だちからお願いします」 と言ったことも言われたこともない。友だちってのは気づいたらなっているものだ。どこを切ってもミウラシヲン(よそゆき仕様・自社比)がほとばしるエッセイ集。読売新聞夕刊、日本経済新聞夕刊、VISAジャパン掲載他を単行本化。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『秘密の花園』 『光』 『風が強く吹いている』 など。

久々にしをんちゃんのエッセイ。これはよかった。やっぱりしをんちゃんは文章が巧い、エッセイはこう小気味よくなくっちゃ。

ちょっとおちゃらけているようで心は乙女のしをんちゃん、ところどころ詩的な表現が素晴らしい。

春のさびしさ
庭の片隅で桜が咲いていた気がする。でもそれは勘ちがいで、蟻が運ぶ鮭のピンク色と混同しているだけかもしれない。

花見、というものに子どもの頃連れて行ってもらった記憶がない、というしをんちゃん。でももしかしたらあれが花見だったのかも、鮭のおにぎりを母が作ってくれてみんなでお弁当を食べに行った。その時桜を見たようなきもするし、もしかしたらその記憶は、私の落としたおにぎりの鮭を運ぶ、蟻の姿だったのかもしれない。

というくだり。ぐあーーと来ちゃいました。私が見たピンクは、桜ではなく鮭!!

屋根の下で眠るもの
三好達治の詩 『雪』について、しをんちゃんとお母さんの会話。

太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
二郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ。(三好達治「雪」)

この素晴らしい詩を見てお母さん一言。『太郎と二郎って、犬?』
この一言だけで、もう崩れ落ちてしまうしをんちゃん。お母さん、本当にその辺のお笑い芸人よりはるかに高度なテクニックを!

太郎と二郎が犬かどうかは、もはや三好達治氏しか分からないのでありました。
本当に、この詩はいいですよね。北国に暮らしていると、毎晩静かに雪が降り積もる音が、聞こえてくるようです。

朝の循環バス
しをんちゃんは超ものぐさなので(失礼)、毎朝ゴミを出すのが一苦労だそうです。そこで編み出したのが、ゴミを出すついでに循環バスに乗り、ワイルドシティまほろ駅前まで行き、朝ご飯を食べるというプラン。

こーゆー考え方が、ものすごく私は共感してしまいます!すごー気持ち、よく分かる!そしてそこまでしないとゴミが出せないというしをんちゃんの気持ちも、よおおく分かる!

私もいつも出かける前に異様に時間がかかるのは、少しでも時間があればその合間にあれをやってこれをやって…というスキマ時間活用のための本やら書類やらを持って行くので、出かけるまでに時間がかかるのです。更に荷物は重く、そしてその荷物は結局出かけた先で開かれることはほとんどなく……。

だから、しをんちゃんがゴミ出しのために循環バスに乗る、という行動を行うことに、ものすごく共感してしまうのです。

同時発売のエッセイ 『本屋さんで待ちあわせ』 も読まなくちゃあ。

評価:(5つ満点)

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逆回りのお散歩*三崎亜記

確かに起こったはずなのにそのデモは無かったことにされてしまった。ネットでの炎上、ステルスマーケティング、ネット右翼。市町村合併を巡って自治体における市民の 『見えない戦争』 が始まる。『となり町戦争』 前夜を描く 『戦争研修』 も併録。『すばる』 『小説すばる』 掲載 『統合前夜』 を改題、単行本化。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。主な著書に 『失われた町』 『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』 『海に沈んだ町』 『コロヨシ!!』 。
(収録作品)逆回りのお散歩/戦争研修

逆回りのお散歩
今回の作品でも西域とか居留区という言葉は出てきますが、雰囲気はかなり私達が現実に生きている現代社会に近いです。普通の小さな市が、隣の市と合併をする。入り乱れる賛成派と反対派。それぞれの主張はどうも噛みあわない…。

反対派は地道に集会を企てデモを行うも、行政の巧妙な手口によりそのデモは 『なかった』 ことにされてしまう。人々の憤りはやがてどこへ向かうのか。私達は知らず知らずのうちにこの物語の市民のように、何も分からないまま自分達の意識すら持つことも許されず、ただ流されてはいないでしょうか?かつて地方公務員であったという著者 三崎氏の、市町村行政への思いがより強く込められた作品という思いがします。

でも、ラストの裏切りがやっぱりやるせなく、読後感は悪いです。

戦争研修
対してこちらの方が爽やかな感じ。三崎氏のデビュー作にして最高傑作(だと今でも思う)『となり町戦争』 の戦争前夜を描いた作品。あの、戦争推進室(だったっけ?)の香西さんが戦争のための研修に行く物語。

香西さんも戦争をしたくてしていたわけじゃないことはよく分かっていたけど、どうもあの感情のない人形のような香西さんがどうやってできあがったのかが不思議だったので、また香西さんに会えてその謎が少しは解けたような気がします。

自治体の活性化のための、戦争事業。そのバカバカしいほどの響きに、著者の行政への痛烈な批判を感じます。

評価:(5つ満点)

鮫島の貌*大沢在昌

新宿署刑事 鮫島。警察内の不祥事に巻き込まれたが一人屈せず、上層部や同僚には疎んじられ、食いついたら離れない単独捜査で新宿鮫と恐れられる男。新宿署異動直後の鮫島を襲う危機や、腐った刑事や暗殺者との対決、人気コミック 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉、『エンジェル・ハート』 の冴羽リョウが登場する異色作など、鮫島の魅力を集めた短編集。
(大沢在昌)1956年名古屋市生まれ。慶応義塾大学法学部中退。『感傷の街角』 で小説推理新人賞を受賞しデビュー。『深夜曲馬団』 で日本冒険小説協会最優秀短編賞、 『新宿鮫』 で日本推理作家協会賞長篇賞、吉川英治文学新人賞、「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞、 『心では重すぎる』 で日本冒険小説協会大賞、『パンドラ・アイランド』 で柴田錬三郎賞を受賞。
(収録作品)区立花園公園/夜風/似た者どうし/亡霊/雷鳴/幼な馴染み   /再会/水仙/五十階で待つ/霊園の男

新宿鮫の短編集。大沢先生の作品はどれもサクサク読めますが、短編集ということでいつも以上にサクサク読めます。しかもこち亀の両さんとの絡みや、シティハンターの冴羽リョウまで出てくる!更に、解説を読んで初めて分かったのですが、冴羽リョウの後日談として 『エンジェル・ハート』 ってマンガやってるんですか?あれってまんま冴羽リョウなの?それも読んでみなければ…と往年のジャンプ読者の私は思うのでした。

マンガの話はさておいて、大沢先生に書かせると両さんもシティハンターもやたらカッコよくなります(笑)。ファンも大喜びだね。両さんが出てくる短編は 『こち亀短編小説集』 で既読なのですが、もう一度読んでもやっぱり面白いです。

それにしても鮫、すかしすぎだ!カッコイイのが決まりすぎだ!と思いつつも、だからこそ鮫島だ!と思うのでした。

評価:(エンタメを愛するあなたに)

クラウドクラスターを愛する方法*窪美澄

さとこはイラストレーターの仕事を細々としながらもうじき30歳を迎える。誕生日を間近に控えた大晦日の朝、結婚を考えていたはずの彼が家を出た。大人になってから再会した実母との距離感もうまくつかめない。どうすればうまく生きられるのか。書き下ろし、『小説現代』掲載に加筆修正して単行本化。
(窪美澄)1965年東京都生まれ。カリタス女子中学高等学校卒。フリー編集ライター。『ミクマリ』 で女による女のためのR-18文学賞大賞、『ふがいない僕は空を見た』 で山本周五郎賞受賞。著書に 『晴天の迷いクジラ』 。
(収録作品)クラウドクラスターを愛する方法/キャッチアンドリリース

クラウドクラスター、というのは積乱雲のことだそうです。積乱雲のようにかつて家を出た母、大人になってから再会しても自分にとって母はやはり積乱雲のように激しく付き合いにくい存在であった。それでも12歳の時に家を出た母と、母の再婚相手との3人で、まるで家族のような付き合いを続けるさとこ。

さとこには3年同棲した向井くんという恋人がいるが、彼の家に住んでいるというのにケンカして出て行ってしまったのは向井くん。この彼との関係もまた一歩踏み出せない。

一歩踏み出せないのは、さとこが家庭というものに常に不安定感、不安を感じているから。子どもの頃にそれが確立していないと、大人になってこうも苦しむものか。『キャッチアンドリリース』 も同じく片親同士の小学生の交流を描いた作品ですが、親が離婚した子どもってこういう想いでいるんだろうなぁと切実に感じてしまい、切ないです。

家族。人間関係の根本である、家庭。親という存在の責任は、重いです。それでもなお子ども達は自分の力で生きていこうとする、そのたくましさも同時に感じました。

評価:(5つ満点)

最果てアーケード*小川洋子

天井は低く奥行きは限られショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない。そこは愛するものを失った人々が想い出を買いにくる店が集まるアーケードだった。『BE・LOVE』連載の同名コミックの原作を単行本化。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞、『ミーナの行進』 で谷崎潤一郎賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』『人質の朗読会』 など。
(収録作品)
衣装係さん/百科事典少女/兎夫人/輪っか屋/紙店シスター/ノブさん/勲章店の未亡人/遺髪レース/人さらいの時計/フォークダンス発表会


私が読む小説のうち、こういう 『おかしな話』 を書くのは小川洋子と川上弘美かな。今回も非常におかしな話です。表紙絵の通り、こういうおかしな物がショーウィンドウに並んでいる商店街のお話。

収録作品一覧にある通り、それぞれ一癖も二癖もある店主が、一体何の役に立つのかという物を売る商店街。舞台衣装を作る店とか、勲章だけを売る店とか。ひょっとして商店街はもうとっくの昔に廃屋になっていて、そこにいる人々は実はかつての店主達の想いが亡霊のようになっているというオチなのではないか、とも思ったのだけどそういうオチではないです。

物、とくに人がこだわった物には人の想いが宿りやすい。ある人にとってはそれが百科事典であったり、買っていたウサギの目であったりする。誰しも自分の中に大切な思い出があり、それを共有してくれる人を探している、ということを商店街の店は教えてくれているのかもしれません。

怖い話が嫌いな方は読まないことをおすすめします。

評価:(5つ満点)

逃走*薬丸岳

閉店後のラーメン店で店主が何者かに暴行され死亡した。通報した若者を容疑者として始まった捜査は早期解決が確実視されていたが。『佐賀新聞』『大阪日日新聞』などで順次掲載された作品を加筆修正して単行本化。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。主な著書に 『闇の底』 『悪党』 『刑事のまなざし』 『死命』 など。

単純だと思われた事件の真相に実は複雑な事情があった。という物語。登場人物ら一人ひとりの心情をもっと深く考えながら読めれば良かったんだけど、薬丸岳の文章はあんまり良すぎてついつい夜更かしして一気に読んでしまう。

小説の醍醐味は行間にあると思うのです。少し読んでは本を置き、仕事の合間などにふとあの部分は実はこういうことでは?と創造を膨らませる作業、それが面白い。なので一気読みしてしまうと面白かったのだがどういう話だったっけ?と思ってしまうことも多々。

多くの書評に二時間ドラマ的展開、とあるように、犯人像が途中でひっくり返り読者に同情を誘う設定になっているが、それもちょっとどうかなという意見には、少しうなづいてしまいます。小説のエンタメ性は大事だと思いますが、デビュー作 『天使のナイフ』 のような作品をまた読みたいです。

評価:(5つ満点)

ツナグ*辻村深月

突然死したアイドル、癌で逝った母、喧嘩したまま亡くなった親友、失踪した婚約者。様々な事情を抱えた依頼者が今日も死者との仲立ちをする使者-ツナグを頼ってくる。彼らは喪ったものを取り戻すことができるのか。『yom yom』 連載に加筆修正し単行本化。
(辻村深月)1980年生まれ。千葉大学教育学部卒。『冷たい校舎の時は止まる』 でメフィスト賞、本作で吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。主な著書に 『凍りのくじら』 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 『オーダーメイド殺人クラブ』。
(収録作品)アイドルの心得/長男の心得/親友の心得/待ち人の心得/使者の心得

映画化されたということで話題の本作、職場の先輩が貸してくれました。死者との面会を叶える 『使者(ツナグ)』 という名前の霊媒師?イタコ?の物語。使者の家系には死者をあの世から呼び出すことのできる特殊な能力が代々備わっており、長年使者として責務を果たしてきた祖母の後継者として選ばれた孫である男子高校生を中心とする物語。ちょっと不思議な力を持ってるちょっと特別な子、というイメージは描きやすいですね。

使者に依頼をする依頼人の事情が、死んだ母親に会いたい、という普通の理由以外のものもたくさんあるのが面白いですね。どんなに生前付き合いが深い仲でも、相手が亡くなってしまえばそのことは思い出として残す、つまりある程度はもう諦めるのが普通ではないかと思うのですが、そこで使者の存在を知った人々は何としてでも死者である自分の会いたい人に会おうとする。

人の想いは深いものですが、それに捕らわれていては生き残った者は生きるのが辛いだけでは。という気持ちに、使者と彼らが呼び出す死者は、答えを用意してくれるのでしょうか。

辻村深月は初めて読みましたが、読みやすいですね。ちょっと優しすぎる気もしますがいいと思います。映画も時間があれば観たかったです。

評価:(5つ満点)

テルマエ・ロマエ*ヤマザキマリ

古代ローマで浴場を専門とする設計技師ルシウス・モデストゥスは、伝統的な浴場《テルマエ》を維持すべきとの考えから、世間から孤立し失業状態となる。友人マルクスに誘われテルマエに行ったルシウスは、浴槽に潜ったことでなぜか時代を超えて現代日本の公衆浴場へとたどり着く。そこではローマ人ではない 『平たい顔』 の民族が素晴らしい浴場でくつろいでいた。日本の銭湯の素晴らしさに感動したルシウスは、その工夫を古代ローマに持ち帰り一躍人気設計技師となる。評判を聞きつけてついに皇帝お抱えのテルマエ技師となったルシウスは、孤独に苦しむ皇帝の心を慰めるためテルマエ設計に奔走する。コミックビーム(エンターブレイン)連載中。(ヤマザキマリ)1967年東京都生まれ。漫画家。イタリアを経て現在はアメリカ シカゴ在住。本作で漫画大賞2010、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。

映画化で話題の本作、貸本屋(レンタルビデオ屋のこと)で借りました。正直画もあんまり上手じゃないし果たしてそんなに面白いのか…と思っていたら、3巻くらいから俄然面白くなってきて、ところどころ爆笑しました。

ひたすらにマジメに温泉道を貫くルシウスが、いいですね。テルマエを愛しテルマエを愛するローマ人を愛し、そして彼らを統べる皇帝を愛するルシウス。偉大故に孤独である皇帝の魂を慰めるため、ルシウスはひたすら温泉道、じゃなくてテルマエ建設に精進するのでした。

ところどころに挟まれている著者ヤマザキ氏の古代ローマに関するコラムが結構濃くて、しかもこういう活字を読み飛ばせない性分なもので、という意味で読了に若干時間がかかります(笑)。映画はほぼ原作通りでよくできてるなーというかよくこんな映画作ったなーと改めて感心してしまいました。

ジミーに面白いマンガです。続刊も楽しみです。

評価:(5つ満点)
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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
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