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読書と映画と観劇と

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Fの記憶*吉永南央

fnokioku.jpg名前も思い出せず顔もおぼろげにしか覚えていない。だがかつて同級生だった3人の心には、あの日以来 『F』 が棲みついている。40歳を過ぎた今彼らの運命を動かすのは。野性時代掲載を単行本化。
(吉永南央)1964年埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部卒業。本作収録の 『紅雲町のお草』 でオール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に 『オリーブ』 『誘う森』 。
(収録作品)右手/黒いチューリップ/夜明け前に/時

1章がやたらにキツく、ずっとこの調子か…と思っていたら2章、3章とFの印象が徐々に変化していき、終章の主人公がF自身の物語で本当に救われました。この章がなかったら大変なことになっていた(私の気持ちが)。

決して目立つ存在ではなくむしろ日陰ばかりを歩んできた少年Fが、大人になったあの日。1、2、3章それぞれの主人公らの現在の暮らしとは全く関わりのない生活を送っているFが、ぞれぞれの人生に色濃く影響している理由とは。それがやはり終章で明らかになる、F自身の持つ 『優しさ』 なんだろうなぁ。

人の心は本当に単純なものではない。けれども単純に、もっとシンプルに生きてもいいんじゃないかな。とFの背中を見て思いました。読了してから、そしてしばらく経ってからもじわじわと攻めてくる、やっぱり吉永南央の筆力は、すごいです。

評価:(5つ満点)
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陽だまり幻想曲*楊逸

hidamari.jpgもうすぐ3歳になる息子のため引っ越した私達。手頃な一軒家の隣には6人兄弟を抱える大家族が暮らしていた。賑やかで奔放な隣家の人々だったが毎週金曜のある出来事が徐々にその生活を脅かしていく。表題作と中国人留学生達の今を描く 『ピラミッドの憂鬱』を収録。群像掲載を単行本化。
(楊逸)ヤン・イー。1964年中国ハルビン市生まれ。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社勤務を経て中国語教師。『ワンちゃん』 で文學界新人賞、『時の滲む朝』で芥川賞受賞。著書に 『金魚生活』 『すき・やき』 。
(収録作品)ピラミッドの憂鬱/陽だまり幻想曲

陽だまり幻想曲
ずっとホンワカ系の小説を書いてきた楊氏だったので、ラストの展開には衝撃を受けました。世間に良くある、孤独に陥りがちな子育て中の主婦が、一人息子にせがまれて2人目を産む決意をした途端、隣家に起こる事件。
よくある事件ながら実際に隣人として遭遇すると、こういう風に衝撃を受けるんだろうな、と思います。リアル、を本当にリアルとして感じ取るのが難しい時代になったのかもしれない、と思うのです。

ピラミッド
こちらも日本人社会から見るとあり得なくてとんでもない事件が起こりますが、その社会で生きている人々には当たり前のことであり、ワイロをもらいそのワイロを貯めて国外にいる息子に送金しちゃう、なんて日本でやったら相当な重罪になりますが、中国ではそれをフツーの人達がやってしまう、という現実。それもさほどの罪悪感もなしに。

いずれも主人公の視点の捉え方が定まっており、見事な仕上がりです。物事は、視点によってかくも大きく変わるものです。

評価:(5つ満点)

幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア*田中優

siawasewo.jpgいいことしてるハズなのにその善意がムダになるかもしれない。実際のボランティア活動としてどんなことが求められているのか、善意はきちんと求める相手に届いているのか。その仕組みを考える。中高生にも取り組みやすいボランティア活動ガイドも掲載。
(田中優)1957年東京都生まれ。未来バンク事業組合理事長、日本国際ボランティアセンター、足温ネット理事などを務める。著書に 『世界から貧しさをなくす30の方法』 『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』 など。

もうちょっと突っ込んだ内容を期待してましたが、14歳の世渡り術シリーズということで中学生向きだからそこまで文句言っちゃいけませんね。

ボランティア、とはタダ働きの意味ではない。自発的に行う、という意味である。とか、さりげなく人の役に立つとはどういうことか。とか、正規の仕事を人件費を削るためにボランティアに請け負わせるのは間違っている!などところどころ頷ける部分が多くありました。正規の仕事→ボランティアのところなんて、司書などと例に挙げられていて、全くその通り!

また中学生向けということで、大人がボランティアをすると嫌味になることでも中高生がやりたいと大人に声を上げて欲しいボランティアもある、などそういう視点もあるのか。と目からウロコでした。グローバルなボランティア、身近な地域ボランティアと色々あるけれども一番大切なことは 『続けること』 。その通りですね。肝に銘じてすべての活動を続けるべく、頑張ります。

評価:(5つ満点)

パラレルな世紀への跳躍*太田光

para.jpg人類は前進するという習性に逆らえない。例えそれが完全なるゼロに続く道であろうとも。新しい価値観を生み出す為に止まるのではなく思い切った跳躍をしよう。著者初の単独エッセイ。TVブロス連載を単行本化。
(太田光)1965年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退。88年大学で知り合った田中裕二と漫才コンビ爆笑問題を結成。著書多数。

太田さんのエッセイは数多く出版されていますが、コレは1篇ずつがとても短くかつ的確で、とにかく面白かったです。それぞれのタイトルの付け方が秀逸すぎます。

エッセイに所々はさまれる超短編小説がこれまた、すごく巧い。三崎亜記の超短編小説を読んだ時も本当に文章が巧いと驚愕しましたが、それに匹敵しました。太田さん天才かと思う。初の長編小説が出版されたそうですが、これだけ書ければそりゃあ小説を書くでしょうね。読むのが楽しみです。

ほんの少しのスキマ時間で読み続けようと思っていたのに、あんまり面白くて一気に読んでしまいました、あ~あ(笑)。

評価:(5つ満点)

読む力は生きる力*脇明子

yomutikaraha.jpg長年大学生を教え、子どもの本の会を主宰してきた著者が子どもが本を読むことの大切さをテーマに真正面から取り組み、たどりついた成果を講演のような柔らかい語り口で説く。子どもと子どもの本に関わる活動をするすべての方に。
(脇明子)1948年香川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修了。ノートルダム清心女子大学教授、岡山子どもの本の会代表。主な著書に 『物語が生きる力を育てる』 『ファンタジーの秘密』 など。訳書多数。

やっと読了しました、必読本。なぜ人には本が必要か。を明確に、論じている一冊です。子どもと本に関わる活動をしている一人として、嫌でも姿勢を正したくなる一冊です。

脇先生はかなり辛口。のっけから今の子ども達が夢中になって読む本は、『変な主人公が、変な人達と出会い、変な出来事が起き、よく分からないうちに大団円。神経が麻痺してきそうな話だった』 と学生が話していた、とバッサリ。これってかいけつゾ●リシリーズのことですね(苦笑)。そんな 『変な』 続きの本ばかり読ませていていいのか、から始まります。

ブックスタートについてもなぜ始まったのかと言えば赤ちゃんに自分では話しかけられない親が増えているから!だそう。赤ちゃんは話せないからどう話しかけていいのか分からない、という最近の若い親のために、絵本を通じて赤ちゃんに話しかける方法を教えるのが、ブックスタート。そうだったのか…ブックスタートは赤ちゃんのため、というよりその親のため、親を育てるための活動だったのだ。

そして本を読む、という行為そのものについて数々の言及。物語を読めない、とは字は読めるのに物語(本)が読めない、ということ。それは想像力の欠如が原因である。想像力が育っていないため、字をなぞってその場面を思い浮かべることができないから本が読めない=物語の世界に入り込めない。

評価:(5つ満点)

禁猟区*乃南アサ

kinryoku.jpg警察内部の犯罪を追う監察官はあくまで陰の存在。隠密行動を貫いて警察内の密猟者を狩り出してゆく。監察チームの頭脳プレーを描く警察インテリジェンス小説。小説新潮掲載を単行本化。
(乃南アサ)1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。
(収録作品)禁猟区/免疫力/秋霖/見つめないで

さすが乃南アサ、本当にハズレなしです。今回も秀逸でした。

警察官になる位なので誰しもそれなりの正義感を持っていたはずなのに、それがどこで間違ってしまったのか。独りよがり、自己顕示欲、そういったことから徐々に正道からズレていく警察官達。倫理とは何か、を常に自分に問うて生きて行かなくてはならない立場にある、という自覚に加え、多くの警察官が抱えるのは 『孤独』 という性質では。一人で判断し行動することが多い一人職場、それもやはり同僚、仲間がいなくては人は道を誤るということでしょうか。

どの話も秀逸ですが、ラストの 『見つめないで』 ストーカーの話、お見事でした。犯人はもう分かっているのにどうして…どうも信じられない…と何度も怪しんでしまう。乃南氏の人物描写、心の機微が素晴らしいです。人は本当に危うい存在であるし道を誤ることもある。だからこそ愛おしいのかもしれません。

悪人を描きながら悪人になりきれない人々を、温かく見守る著者のまなざしが、読んでいて本当に心地よい一冊。

評価:(5つ満点)

40歳の教科書 ドラゴン桜公式副読本

40saino.jpgドラゴン桜公式副読本 『16歳の教科書』 番外編 親が子どものためにできること
公立小学校で導入が進む英語教育は本当に役に立つのか? 中高一貫校は最良の選択肢なのか? 親たちが悩む答えの出にくい問題をめぐり14人の論客が真正面から本音で語る。モーニング編集部、朝日新聞社編。朝日新聞連載に加筆修正して単行本化。
(ドラゴン桜)三田紀房 作のマンガ。講談社モーニングにて連載を単行本化、全21巻完結。元暴走族の駆出し弁護士 桜木建二が、経営破綻状態となった落ちこぼれ高校 私立龍山高等学校を、一見奇抜とも思える方法で立ち直らせるストーリー。

マンガ 『ドラゴン桜』 は前々から読みたいと思ってはいたのですが、なかなかこういうマンガ持っている人にも出会えず、貸本屋(じゃなくてレンタルビデオ)にもないしマンガ喫茶に確実にあるなら行くけどないかもしれない…とここまで来て、なんと。第1王子の中学校では今年度の学年費で全巻買ったそうです。生徒に順番に読ませたとか…中学校の教育も変わったな。というか私も借りなきゃな。と思っていたところへ本書。
16歳の教科書、というのは文字通り中学を卒業した生徒に向けて書かれた本で、その番外編としてその親に贈る副読本。ドラゴン桜の前哨戦(借りる気満々)として読んでみました。

様々な分野で活躍している社会人のインタビューが載っています。実に多彩、デーブ・スペクター氏や西原理恵子氏、はたまた工藤公康氏といったTVに出てくる有名人の方々から、企業の社長さんまで。カウンセラーの方の箇所で【ポジティブ・プッシング】という考え方を教わりました。

評価:(5つ満点)

原稿零枚日記*小川洋子

genkou.jpg原稿が進まない作家の私。苔むす宿の奇妙な体験、盗作のニュースに心騒ぎ、子泣き相撲にいそいそと出かけていく。私の日々の生活は夢か現か妄想か?日記体の長編小説。すばる連載を単行本化。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞、『ミーナの行進』 で谷崎潤一郎賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』 など。

本作、面白いか?と言われれば面白いような気もするけど、やっぱり面白くないかも。日記、随筆調なので淡々と日々が綴られ、どんどん読み進めたいという気持ちにはなれず全然読みが進みませんでした。

小川洋子氏の筆力なのでここまで仕上がってますが、フツーの人がこういう文章書いてもつまらないだろうな…と思い、それって私のこのブログのことか!? と思ってしまいました(笑)。
梨木香歩 『家守綺譚』 のような内容ですが、残念ながらそちらには及びません。

評価:(5つ満点)
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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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