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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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夜行観覧車*湊かなえ

yakou.jpg父親が被害者で母親が加害者。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺された子ども達はどのように生きていくのか。2つの家族の物語を軸に、高級住宅地に暮らす人々の現代の生き辛さを描く。小説推理連載に加筆、訂正し単行本化。
 (湊かなえ)1973年広島県生まれ。武庫川女子大学卒業。『聖職者』 で小説推理新人賞、『告白』 で本屋大賞を受賞。他の著書に 『少女』 『贖罪』  『Nのために』 。

一気に2時間で読んでしまいましたが、やはりこの後味の悪さ、が残る不思議な読了感。湊お得意の 『みんな嫌なヤツ』 ばかり出てくるのですが、今回はみんな 『自分なりに精一杯頑張っている』 のに、なぜ悲劇が起こるか?というのがテーマなのかな。悲劇が起こるっていうのはやっぱり何かが間違っているってことなんだけど、誰もそれを認めたくない、ということでしょうか。

人を追い詰めるのはやはり人、というのが本書のテーマでしょうか。ということは人を救うのも人、というテーマだと、信じたいです。

そろそろ暴力から脱却した湊作品を読みたいですが、次回作はどうでしょう。

評価:(5つ満点)
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炎上する君*西加奈子

enjou.jpg恋に戦う君を誰が笑うことができようか?何かにとらわれ動けなくなってしまった私達に訪れる小さくて大きな変化。奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい短編集。野性時代掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』  『さくら』  『うつくしい人』  『きりこについて』 など。
(収録作品)太陽の上/空を待つ/甘い果実/炎上する君/トロフィーワイフ/私のお尻/舟の街/ある風船の落下

西加奈子ファンタジーに挑む。ちょっとほろ苦くてもの悲しい短編集、という感じ。 『ある風船の落下』 が一番ファンタジー色が濃くて私好みです。基本的に私はファンタジーは好きですが、西加奈子にはもうちょっと現実味の溢れる、ちょっと毒もあるファンタジーを書いて欲しいです、『こうふく あかの』 みたいな。 

評価:(5つ満点)

ビタミンF*重松清

vitaminf.jpgFather、Friend、FightなどFで始まる言葉をキーワードにした7つの家族の物語。小説新潮掲載の短篇を単行本化。直木賞受賞作。
(重松清)1963年岡山県生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。 『エイジ』 で山本周五郎賞、本作で直木賞を受賞。主な著書に 『流星ワゴン』 『ナイフ』 『送り火』 など。
(収録作品)ゲンコツ/はずれくじ/パンドラ/セッちゃん/なぎさホテルにて/かさぶたまぶた/母帰る

やっぱりイマイチで、何が問題でつまらないんだろうと考えてみたら、全然行間がないところだと気が付きました。主人公の心情が逐一書かれているのでそれ以上想像のしようがなく、だから同情も反発もしにくくて、正直つまらなかったです。

主人公は皆37歳の男性で、それがみんなつまらない、魅力を感じないっていうのは一体どうなんだ。どの主人公も割合単純すぎるというか、人の心ってもっと複雑なんじゃなかろうか?家族に対して、家族と生きることについてもっと真摯さがないと、リアリティを感じないというか…。

とにかくどの短編も 『おっこれはこれから面白くなるのか?』 と思ったところで唐突に終わりになり、あっけにとられました。『セッちゃん』 はまあまあ良かったですが、他は特記事項がありません。酷評すみません。

評価:(5つ満点)

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

mosidora.jpg野球部の女子マネージャーのみなみは偶然ドラッカーの経営書 『マネジメント』 に出会う。初めはは難しさにとまどうが野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付き始める。ドラッカーの教えを元に女子マネージャーが野球部の甲子園出場を目指しマネジメントをする青春物語。ライトノベル的盛り上がりもあります。
(岩崎夏海)1968年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。放送作家、AKB48のプロデューサーを経てマネジャーとして吉田正樹事務所に勤務。

まず、非常によくできた構成だと思います。ドラッカーの文章なんてこの本を読まなければ一生読まなかったことでしょう…岩崎さんどうもありがとう。

表紙のオタっぽい女子高生のマンガ(挿画)といい、展開のノリがライトノベルなところといい、エンタメの要素を見事なまでに随所に盛り込んだ上でドラッカーの 『マネジメント』 をここまで楽しく読ませるとは。もしや天才?(笑)組織の経営について書かれた本を、社会におけるあらゆる組織(人の集合体)に応用できると説いた本書の功績は、大きいですね。

言い換えればここまで分かりやすくストーリー形式(というよりマンガ的展開)にしないと、理解できない大人(※私)が増えてしまったのか…ということですが。

組織は常に顧客を意識し、顧客の満足を第一義に考えなくてはならない。マネジャー(管理職)は人事、報酬で応えなくてはならない。マネジャーに何より大切なことは 『真摯さ』 である。真摯であること…それが全体を見通せることより人柄よりリーダーシップより、何よりも大切だ、と説くドラッカー。あなたのために精一杯やってます!という 『誠意』 。が何よりも大切。だそうです。

ここでいつもお中元、お歳暮でお世話になっている東京の老舗デパート●越の対応を思い出しました。ほんのわずかな注文だと言うのに、のしがおかしくないかとか包装はなしでよいとあったが個別に袋を付けるかとか、わざわざ電話で聞いてくるのです。電話で出ないとメールを寄越してきます。この 『恐れ入りますが…』 と控えめながらお客の間違いを正して差し上げねば、というプロ精神、果たして私は持ち合わせているのか?

『マネジメント』 を教本に、野球部マネージャーみなみは部員一人ひとりにコーチングを行い、それをフィードバックし、一人ひとりの強みを活かしそれが組織(野球部)の活性化につながるよう様々なプロジェクトを仕掛けていきます。まず組織の構成員を知る。活かす。組織を育てる。そして組織が社会で貢献する道を模索し、実行する。

どんな組織も一人では成り立たず、一人ひとりに責任を負わせる、それも喜んでやりがいとして負わせることで組織を成長させる。うーん上司として理想ではないか、みなみちゃん!この 『人に任せる、責任を持ってもらう』 というのが一番難しいですよね。でもそれができないと組織は育たない。

私はどんな組織に属しているでしょう。サークル、学校ボランティア、家庭。あらゆる場面で組織に属している現代人には、ドラッカーの理念が応用できる。ということに気付かせてくれる、スゴイ一冊です。社会学、文化人類学的視点から見ても、面白いです。

評価:(しかしすぐ内容を忘れてしまうのはナゼ…)

絵本が目をさますとき*長谷川摂子

ehongamewo.jpg長年子どもと絵本を読み続けてきた著者が子どもへの想い、絵本への想いをこめて綴る絵本案内。 赤ちゃん絵本と赤ちゃんとの関係、物語絵本が子どもに必要な理由、ナンセンス絵本の楽しみ方など長谷川氏の絵本に対する理論の集大成。『母の友』 連載に加筆修正し一部書き下ろしを加えて単行本化。
(長谷川摂子)1944年島根県生まれ。東京外国語大学卒業、東京大学大学院哲学科中退。公立保育園で保育士として6年間勤務。『人形の旅立ち』 で椋鳩十児童文学賞、坪田譲治文学賞、赤い鳥文学賞を受賞。主な著書に 『めっきらもっきらどおんどん』 『きょだいなきょだいな』 など。

赤ちゃんとの絵本の楽しみ方についての記載が丁寧に綴られています。長谷川さんってすごい経歴ですね、外語大を出て東大の哲学科を出た後、保母さんをやっていたなんて…。そして本も書き絵本も出す。才能って本当に集結するものですねぇ。様々な絵本が巷には溢れていますが、赤ちゃんが喜びそうなキャラクター絵本についての警鐘、物語絵本を大事にすることの意味、など明確に論述されています。

キャラクター絵本
 『自分』 と 『キャラクター』 は別の存在である、ということをまず認識できなくてはいけないそうです。そうではない粗悪なものが多いように思える…というようなことが書いてあったような。具体的に国民的に大人気のキャラクター絵本がコテンパンに書かれていたので、ご興味のある方は本書をご覧ください。うちも2冊ほどありました、ネコさんのキャラクター(汗)。

物語絵本
物語絵本を読むことの一番の意義は、読み手である子ども自身が主人公になりきれるものかどうか、ということ。 『おおかみと七ひきのこやぎ』 や 『ぐりとぐら』 というスタンダードのみならず、長新太、スズキコージ、片山健といった私が苦手な作家陣の絵本についても詳細に記述があり、大変勉強になりました。自分が苦手でも子どもが好きなものだったら読んであげるべきですよね。特に片山健の 『どんどん どんどん』 ではひたすらに男の子が突き進んでいく様子、男という生き物の衝動である、といったようなことが書かれており、おおっと思ってしまいました。男はひたすら進むものなのか…なるほど。

記号としての子ども
林明子や山脇ゆり子と言った人気作家の絵についても触れており、写実的な挿絵が必ずしも良いのではないということ、絵本の中に絵が描かれる子どもはあくまでも【記号としての子ども】であるということ、というくだり、もはや絵本論、哲学バリバリでございます。そして

キッチュとは
すっかり哲学書となった本書のP199より抜粋。

キッチュ絵本は存在の不安をてっとりばやく癒してくれる快い絵本。物語絵本は読み手の存在を越える独自の作品世界を持つもの、と言えるでしょう(本書P199より抜粋)。

だそうですよ。キッチュって一体…。存在することの不安から、誰しも逃れることはできない。とはよく心理の世界でも言われ続けていることですが、赤ちゃんが泣くということもこの存在することの不安だったのか。だからおかあさんがそばに行って抱っこすれば落ち着くわけで。などなど考えてくると、私も存在することが非常に、不安(笑)。

児童文学
そして児童文学。長谷川氏はこの児童文学を読む時代こそが【人生のゴールデンタイム】 だと明言しています。親と子で同じ物語を共有することができる時期、同じものを読み同じ感動を味わうことができる喜び。本当にそうですよね。
第1王子の時にやり残したこの児童文学を一緒に読む、第2王子こそは、実現せねば!『冒険者たち』 『大草原の小さな家』 『床下の小人たち』 …読む本は、山積みです。

評価:(5つ満点)

小暮写真館*宮部みゆき

kogure.jpg英一の両親は結婚20周年を機にマイホームを購入した。でもそれは普通の家ではなくて古びた写真館だったのだ。心霊写真が写るという写真館を舞台になぜか心霊写真バスターに祭り上げられてしまった英一。家族の抱える確執と友人らの支えを通じて成長していく英一の高校生活を描く。連作4編を収録、書き下ろし。
(宮部みゆき)1960年東京都生まれ。 『我らが隣人の犯罪』 でオール讀物推理小説新人賞、『蒲生邸事件』 で日本SF大賞、  『理由』 で直木賞、 『模倣犯』 で毎日出版文化賞特別賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、『名もなき毒』 で吉川英治文学賞を受賞。

さすが宮部、やっぱり泣かされました。この筆力、やはり日本を代表する作家ですね。 【少年を書かせたら宮部の右に出る者なし】 と言われる宮部、これまでもそしてこれからも健在です。

英一、テンコ、ピカ、すべての登場人物らが細やかに設定され響き合っています。ごく普通の日常(心霊写真騒動はあったけど)の繰り返しなのに、それぞれが抱える辛い想い、生きづらさは高校生の英一やまだ小学生の弟ピカにもやっぱりある。でもそれを家族が、会社の人が、周囲の人がこっそり助け合うことで支え合っている。

世知辛い世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。ということを英一を通じ私達に再確認させてくれます。やっぱり宮部だなぁ。と深く実感できる、一冊です。

評価:(満点!)

ナニカアル*桐野夏生

nanikaaru.jpg昭和17年の南方への命懸けの渡航、束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、修羅の夜。戦争に翻弄された作家 林芙美子の秘められた愛を渾身の筆で炙り出し描き尽くす長篇小説。島清恋愛文学賞受賞。 『週刊新潮』 連載に加筆・修正して単行本化。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞、『女神記』 で紫式部文学賞、本作で島清恋愛文学賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。

『IN』 で何となく失敗したテーマを本作でリベンジ、でしょうか?林芙美子は著者 桐野氏の投影なのでしょう。難しい時代を背景にこれまた難しい人を題材に、描かれた作品。自分の意志のみを尊重し貫いた林芙美子が主人公でありながら、妙に愛しさを感じてしまうのは桐野氏の視点がそうだからなのでしょう。

軍属となった当時の文筆家らの苦悩についてもよく分かります。

評価:(5つ満点)

乙嫁語り*森薫

otoyome.jpg19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の草原地帯を舞台に12歳の少年カルルクの元に嫁いできた8歳年上の20歳の娘、アミルが主人公の物語。放牧、農耕、狩りを生計とし刺繍や織物を生業とする、シルクロードに生きる民の暮らしを描く。
(森薫)1978年東京都生まれ。『エマ』 で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。

森薫と言えば 『エマ』 。イギリスを舞台にメイド エマの活躍(どんな?)を描いたマンガ、かなり大人気らしく読みたいけど10巻位完結済でもう買えない…。で新作ならまだ1巻が出たばかり、ということで新作へ。

中央アジアの風俗を描いているところが興味深いです、女の子が生まれたらすぐに嫁入りに持たせる絨毯などの布類を用意し始めるところ、定住と放牧の民の暮らし、などなど。実際はもっと生活は厳しいのでしょうが、その美しい部分をより強調できるマンガという手法って、素晴らしい。

続巻も楽しみにしてます。

評価:(5つ満点)

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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
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