Father、Friend、FightなどFで始まる言葉をキーワードにした7つの家族の物語。小説新潮掲載の短篇を単行本化。直木賞受賞作。
(重松清)1963年岡山県生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。 『エイジ』 で山本周五郎賞、本作で直木賞を受賞。主な著書に 『流星ワゴン』 『ナイフ』 『送り火』 など。
(収録作品)ゲンコツ/はずれくじ/パンドラ/セッちゃん/なぎさホテルにて/かさぶたまぶた/母帰る
やっぱりイマイチで、何が問題でつまらないんだろうと考えてみたら、全然行間がないところだと気が付きました。主人公の心情が逐一書かれているのでそれ以上想像のしようがなく、だから同情も反発もしにくくて、正直つまらなかったです。
主人公は皆37歳の男性で、それがみんなつまらない、魅力を感じないっていうのは一体どうなんだ。どの主人公も割合単純すぎるというか、人の心ってもっと複雑なんじゃなかろうか?家族に対して、家族と生きることについてもっと真摯さがないと、リアリティを感じないというか…。
とにかくどの短編も 『おっこれはこれから面白くなるのか?』 と思ったところで唐突に終わりになり、あっけにとられました。『セッちゃん』 はまあまあ良かったですが、他は特記事項がありません。酷評すみません。
評価:(5つ満点)
野球部の女子マネージャーのみなみは偶然ドラッカーの経営書 『マネジメント』 に出会う。初めはは難しさにとまどうが野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付き始める。ドラッカーの教えを元に女子マネージャーが野球部の甲子園出場を目指しマネジメントをする青春物語。ライトノベル的盛り上がりもあります。
(岩崎夏海)1968年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。放送作家、AKB48のプロデューサーを経てマネジャーとして吉田正樹事務所に勤務。
まず、非常によくできた構成だと思います。ドラッカーの文章なんてこの本を読まなければ一生読まなかったことでしょう…岩崎さんどうもありがとう。
表紙のオタっぽい女子高生のマンガ(挿画)といい、展開のノリがライトノベルなところといい、エンタメの要素を見事なまでに随所に盛り込んだ上でドラッカーの 『マネジメント』 をここまで楽しく読ませるとは。もしや天才?(笑)組織の経営について書かれた本を、社会におけるあらゆる組織(人の集合体)に応用できると説いた本書の功績は、大きいですね。
言い換えればここまで分かりやすくストーリー形式(というよりマンガ的展開)にしないと、理解できない大人(※私)が増えてしまったのか…ということですが。
組織は常に顧客を意識し、顧客の満足を第一義に考えなくてはならない。マネジャー(管理職)は人事、報酬で応えなくてはならない。マネジャーに何より大切なことは 『真摯さ』 である。真摯であること…それが全体を見通せることより人柄よりリーダーシップより、何よりも大切だ、と説くドラッカー。あなたのために精一杯やってます!という 『誠意』 。が何よりも大切。だそうです。
ここでいつもお中元、お歳暮でお世話になっている東京の老舗デパート●越の対応を思い出しました。ほんのわずかな注文だと言うのに、のしがおかしくないかとか包装はなしでよいとあったが個別に袋を付けるかとか、わざわざ電話で聞いてくるのです。電話で出ないとメールを寄越してきます。この 『恐れ入りますが…』 と控えめながらお客の間違いを正して差し上げねば、というプロ精神、果たして私は持ち合わせているのか?
『マネジメント』 を教本に、野球部マネージャーみなみは部員一人ひとりにコーチングを行い、それをフィードバックし、一人ひとりの強みを活かしそれが組織(野球部)の活性化につながるよう様々なプロジェクトを仕掛けていきます。まず組織の構成員を知る。活かす。組織を育てる。そして組織が社会で貢献する道を模索し、実行する。
どんな組織も一人では成り立たず、一人ひとりに責任を負わせる、それも喜んでやりがいとして負わせることで組織を成長させる。うーん上司として理想ではないか、みなみちゃん!この 『人に任せる、責任を持ってもらう』 というのが一番難しいですよね。でもそれができないと組織は育たない。
私はどんな組織に属しているでしょう。サークル、学校ボランティア、家庭。あらゆる場面で組織に属している現代人には、ドラッカーの理念が応用できる。ということに気付かせてくれる、スゴイ一冊です。社会学、文化人類学的視点から見ても、面白いです。
評価:(しかしすぐ内容を忘れてしまうのはナゼ…)
英一の両親は結婚20周年を機にマイホームを購入した。でもそれは普通の家ではなくて古びた写真館だったのだ。心霊写真が写るという写真館を舞台になぜか心霊写真バスターに祭り上げられてしまった英一。家族の抱える確執と友人らの支えを通じて成長していく英一の高校生活を描く。連作4編を収録、書き下ろし。
(宮部みゆき)1960年東京都生まれ。 『我らが隣人の犯罪』 でオール讀物推理小説新人賞、『蒲生邸事件』 で日本SF大賞、 『理由』 で直木賞、 『模倣犯』 で毎日出版文化賞特別賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、『名もなき毒』 で吉川英治文学賞を受賞。
さすが宮部、やっぱり泣かされました。この筆力、やはり日本を代表する作家ですね。 【少年を書かせたら宮部の右に出る者なし】 と言われる宮部、これまでもそしてこれからも健在です。
英一、テンコ、ピカ、すべての登場人物らが細やかに設定され響き合っています。ごく普通の日常(心霊写真騒動はあったけど)の繰り返しなのに、それぞれが抱える辛い想い、生きづらさは高校生の英一やまだ小学生の弟ピカにもやっぱりある。でもそれを家族が、会社の人が、周囲の人がこっそり助け合うことで支え合っている。
世知辛い世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。ということを英一を通じ私達に再確認させてくれます。やっぱり宮部だなぁ。と深く実感できる、一冊です。
評価:(満点!)
19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の草原地帯を舞台に12歳の少年カルルクの元に嫁いできた8歳年上の20歳の娘、アミルが主人公の物語。放牧、農耕、狩りを生計とし刺繍や織物を生業とする、シルクロードに生きる民の暮らしを描く。
(森薫)1978年東京都生まれ。『エマ』 で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
森薫と言えば 『エマ』 。イギリスを舞台にメイド エマの活躍(どんな?)を描いたマンガ、かなり大人気らしく読みたいけど10巻位完結済でもう買えない…。で新作ならまだ1巻が出たばかり、ということで新作へ。
中央アジアの風俗を描いているところが興味深いです、女の子が生まれたらすぐに嫁入りに持たせる絨毯などの布類を用意し始めるところ、定住と放牧の民の暮らし、などなど。実際はもっと生活は厳しいのでしょうが、その美しい部分をより強調できるマンガという手法って、素晴らしい。
続巻も楽しみにしてます。
評価:(5つ満点)