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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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絵本マボロシの鳥*藤城清治/太田光

ehonmabo.jpg町外れのオリオン劇場には溢れかえるほどの観客が詰めかけていた。魔人チカブーの芸 『マボロシの鳥』 を見るために。太田光の短編小説集 『マボロシの鳥』 の表題作に藤城清治の影絵を付け絵本としたコラボレーション作品。
(藤城清治)1924年東京都生まれ。雑誌 『暮しの手帖』 に影絵を連載。影絵劇団 木馬座の上演、展覧会の開催など多彩に活動。
(太田光)1965年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退。お笑いタレント、漫才師、エッセイスト。田中裕二と 『爆笑問題』 結成。著書に 『パラレルな世紀への跳躍』 他多数。


小説では若干分かりにくかったこの物語が、挿絵が付くとこんなに分かりやすくなるなんて。絵本の力を改めて再確認した一冊。

藤城さんの影絵がやはり素晴らしいです。そして本作の一番の見どころは、2人によるあとがき。お互いの才能に惹かれ合う作家同士のコラボレーション、嫉妬するほど羨ましい(笑)。

藤城さんの本作の原画展、行きたかったなぁ-。

評価:(5つ満点)
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戦争童話集*野坂昭如

sensou.jpg8月15日をテーマに野坂昭如が描く戦争にまつわる童話集。童話の形を通して戦争を捉え、平和を考える。
(野坂昭如)のさかあきゆき。1930年神奈川県生まれ。作家、歌手、作詞家、タレント、政治家。CMソングの作詞家などを経て作家に。『火垂るの墓』 『アメリカひじき』 の2作で直木賞、『同心円』 で吉川英治文学賞受賞。著書多数。
(収録作品)小さい潜水艦に恋をしたでかすぎるクジラの話/青いオウムと瘦せた男の子の話/干からびた象と象使いの話/凧になったお母さん/年老いた雌狼と女の子の話/赤とんぼと、あぶら虫/ソルジャーズ・ファミリー/ぼくの防空壕/八月の風船/馬と兵士/捕虜と女の子/焼跡の、お菓子の木


読書会8月テーマ本。正直なところ私ならぜったい手に取らない一冊。貴重な読書体験でした。野坂昭如は 『火垂るの墓』 の原作者ですね。今回この本を読んだことで知りました。この方は経歴もさることながら骨太な生き方を貫いてます。

戦争、という狂気に巻き込まれる市井の人々、特に子ども達に焦点を合わせています。8/15という全てから解放された日にもたらされる、戦争という無常観。読むのが辛かったです。 『八月の風船』 『焼け跡のお菓子の木』 が良かったかな。でも全般にきつくて、しんどかったとしか言えません。

評価:(5つ満点)

ヒュウガ・ウィルス*村上龍

hyuga.jpgアンダーグラウンド/UGの取材を切望していたCNN記者コウリーはUG細菌戦特殊部隊への同行を求められる機会を得た。彼らの目的は九州にある超高級リゾート、ビッグ・バン付近の村で発生した奇妙な殺人ウィルス、ヒュウガ・ウィルスの発生源を壊滅させる任務だった。報道記者としてUGのゲリラ兵士と行動を共にするコウリーだったが。 『五分後の世界』 続編。
(村上龍)1952年長崎県生まれ。武蔵野美術大学中退。 『限りなく透明に近いブルー』 で群像新人賞、芥川賞、『コインロッカー・ベイビーズ』 で野間文芸新人賞、 『村上龍映画小説集』 で平林たい子文学賞、『インザ・ミソスープ』 で読売文学賞小説賞、『共生虫』 で谷崎潤一郎賞受賞。主な著書に 『69 sixty nine』 『ラッフルズホテル』  『トパーズ』 『半島を出よ』 『歌うクジラ』 など。


そして五分後の世界の続編です。私はこっちが好きですね、更に巧くできています。普通続編はつまらないものですが、村上氏は本当にスゴイです。視点を今度はアメリカのジャーナリストとしたのがいいですね、現代に生きる私達の視点にすごく近いです。

アメリカCNNの記者コウリーは好奇心からUG(アンダーグラウンド:日本政府を指す)の兵士らのミッションを同行取材することとなる。このアメリカ側が使用するUGという呼称、もちろん国連軍UNのもじりですね。UN対UG。そしてUN側であるコウリーを利用しようとするUG側。コウリーから見たUG兵士達の凄まじさがまた、リアルです。

UG兵士は…トロッコ列車で移動中15分あれば必ず眠る。脳を休めることが兵士の必須条件。私も見習って15分あれば眠ることにします(笑)。彼らの敵に対する容赦のない攻撃手法、まさに殺戮のプロ。しかし、UG(地下)に暮らす彼らは飛行機は飛ばせないという!何とかしてパイロットを調達して飛行機に乗るのですが、この辺の描写も井の中の蛙だと表現したいのか。

ラストまで次から次へと訪れる危機、展開は最後の最後まで驚かされます。人間、極限状態に生きているとこうなるという村上氏の想像力がとにかくすごいです。これぞ、作家です。夏休みにふさわしい、刺激的な読書体験でした。a-tanaさん、貸してくれてありがとう。

評価:(UGと見るとビクッとします)

五分後の世界*村上龍

gofungo.jpg箱根でジョギングをしていたはずの小田桐はふと気がつくとどこだか解らない場所を集団で行進していた。そこは5分のずれで現れた 『もう一つの日本』 だった。 『もう一つの日本』 は地下に建設され人口はたった26万人に激減していたが、民族の誇りを失わず駐留している連合国軍を相手に第二次世界大戦終結後もゲリラ戦を繰り広げていたのだ。
(村上龍)1952年長崎県生まれ。武蔵野美術大学中退。 『限りなく透明に近いブルー』 で群像新人賞、芥川賞、『コインロッカー・ベイビーズ』 で野間文芸新人賞、 『村上龍映画小説集』 で平林たい子文学賞、『インザ・ミソスープ』 で読売文学賞小説賞、『共生虫』 で谷崎潤一郎賞受賞。主な著書に 『69 sixty nine』 『ラッフルズホテル』  『トパーズ』 『半島を出よ』 『歌うクジラ』 など。


村上龍 『歌うクジラ』 読んだ? 『半島を出よ』 は強烈だったよね、という話をしていて、本作は読んだ?と聞かれ、まだ。と言ったら是非読んでね。と貸していただきました、ありがとうございます。
97年村上氏に自身の最高傑作と言わしめた本作。強烈なんてもんじゃなく、激烈でした

あらすじにある通り。現代を生きていた小田桐はある日突然 『もう一つの日本』 に飛ばされます。パラレルワールドです。そこではまだ第2次大戦が続いていて、日本は国土のほとんどに原爆を落とされ居住地を地下に移動し、文字通りアンダーグラウンド生活をしていた。そこに活動するゲリラ兵士達は誠に優秀で、携帯型端末(iPad状)を駆使し、国連軍相手にあちこちでゲリラ奇襲攻撃を仕掛け、世界のゲリラから尊敬される立場にあった。もうここまでで相当背筋が寒くなってきますね。日本軍兵士はキューバ革命などにも助っ人で登場、兵力・兵法の輸出をしております。ここまで書いちゃって村上さんだいじょうぶう…といういつものセリフを吐く私。

この恐ろしい世界を、現代に生きていた小田桐の視点で描いたところがまず巧いです。彼から見るアンダーグラウンドの異常さ、彼ら兵士の持つ 『民族の誇りと信念』 の恐ろしさ、極端なまでのナショナリズム。毎回言いますが村上氏の綿密な設定には本当に感嘆させられます、戦争が続いていればこの世界が 『有り得る未来』 だったかもしれないのです。

そして、絶対に行きたくない(生きたくない)世界でもあります。その世界に迷い込んでしまった小田桐、壮絶な戦闘に幾度も巻き込まれ、ラスト彼の採った選択は。小田桐のアンダーグラウンドにおける未来が気になります。最近平和ボケしているな、と思った方にオススメ。世界のどこかでは私達の目や耳に届かないだけで、アンダーグラウンドが存在しているのかもしれません。

評価:(強烈!)

ドラゴン桜*三田紀房

doragon.jpg元暴走族の駆出し弁護士 桜木建二は経営破綻状態となった落ちこぼれ高校、私立龍山高等学校の経営改善のため進学実績それも東大の合格者数を上げることを提案する。東大合格のための特進クラスを開設し受験指導に大きな実績を上げつつも様々な事情で表舞台から消えていた個性溢れる教師を集めるが。講談社 『モーニング』 連載(2003~2007)を単行本化、全21巻。講談社漫画賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
(三田紀房)1958年岩手県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。主な作品に 『クロカン』  『マネーの拳』  『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』  など。


夏休みに入った7月のある夕方、家の電話が鳴りました。 『HR中学校のI谷です』 おおIやん(とうちでは呼んでいた)。 『第1王子の母です』 と言うとIやん、『はい、知ってます。』  何言っとんじゃーと爆笑しそうになりつつも、卒業した第1王子に一体何のご用事ですか、また長渕剛のピアノセッションの依頼か、と思っていたら。

『おかあさん、ドラゴン桜もう読んじゃいましたか?夏休みに入ったから貸せるんですけど。』

評価:(だんだんと画もうまくなるのが面白いです)

刑事のまなざし*薬丸岳

manazasi.jpg事件の解決に挑む一人の刑事。彼には最愛の娘を奪われた過去があった。天職とも言える仕事を捨ててまで彼が刑事の道を選んだ理由は。刑事 夏目の姿を犯人らの視点から描く。『小説現代』 掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に 『闇の底』 『虚無』 『悪党』 。
(収録作品)オムライス/黒い履歴/ハートレス/傷痕/プライド/休日/刑事のまなざし


相変わらず見事な薬丸岳の連作短編集。各章で主人公を変えながら刑事 夏目の姿を見事に描き出しています。見た目温厚で刑事にはとても見えない夏目、彼の前職が少年刑務所の矯正指導官であったこと、そしてなぜその天職とも言える仕事を捨てて彼が刑事になったのか。彼を変えた事件とその事件の犯人までも主人公に据えた最終章は、ホントに見事としか言いようがありません。

夏目のように、犯人を憎むことではなく理解し、そして赦そうと思えるようになるまでにはどうすればいいのでしょうか。薬丸岳の凄さは、決して夏目が特別な人間ではなく私達一人ひとりも同じように考えて行かなくてはいけないのだ、ということを小説という形で訴えることができることだと、いつも思います。

いつも、読み終わった後心にズシンと響きながらも、清々しさを感じさせてくれます。必読です。

評価:(やっぱり満点)

円卓*西加奈子

entaku.jpg琴子は口が悪くて偏屈で硬派の 『孤独になりたい』 小学3年生。三つ子の姉、両親祖父母の7人に愛されて暮らす公団住宅は孤独とはまるで無縁。同級生の貧乏も金持ちも難民も在日も体の病気も心の病も、子どもの世界の問題はより直接的でより繊細だった。新たな命の誕生や夏休みの出来事を経て成長する琴子を、ユーモラスに温かく描く。 『別冊文藝春秋』 掲載を単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』  『さくら』  『うつくしい人』  『きりこについて』 など。


何が円卓か。と言うと、狭い公団に暮らす琴子一家のうちの居間にでーんとあるのが、潰れた中華料理屋でかつて回っていた円卓。その円卓の上を毎日グルグルおかずやらしょう油やらが回っているのが琴子のうち。琴子ことこっこはそんな毎日がイヤでしょうがなく、孤独を追い求める日々。だけどそこがトンチンカンな関西人の小学生、 『うるさいぼけ』 を連発しつつ激しすぎる自意識を時に持て余しつつ、その人生美学を追究しようとする生き方は、小学生ながらまさにハードボイルド。ぶっ飛ばし過ぎ(笑)。

そんなこっこを温かく見守る家族も、こっこに言わせればどうしようもない奴らで、唯一おじいちゃんだけは教養人なので尊敬してやってもよい、そうです。何じゃその自意識過剰ぶりは。何かと  『うるさいぼけ』 とかますこっこに 『こっこはほんま、可愛いなぁ』 と言う三つ子の姉達。

評価:(5つ満点)

ジェノサイド*高野和明

genocide.jpg急死したはずの父親から送られてきたメール。創薬化学専攻の大学院生 研人はその遺書を手掛かりに父の遺した私設実験室に辿り着く。一方、傭兵のイエーガーはアフリカの地で 『人類全体に奉仕する仕事』 を請け負うが、その作戦には人類の存亡がかかっていた。『野性時代』 連載を単行本化。
(高野和明)1964年東京都生まれ。ロサンゼルス・シティカレッジ中退。帰国後脚本家となる。『13階段』 で江戸川乱歩賞を受賞。主な著書に 『グレイヴディッガー』 『幽霊人命救助隊』 など。


直木賞候補作。ちょうど選考期間にあたっていたこの時期、もう直木賞は間違いなくもらった~!と思っていたのにぃっ。これが賞をもらわなければ選考委員の方々は一体何を読んでいたのか?と1人盛り上がる私。久々に夢中で読みました、PCを起動するわずかな時間もページを繰る始末。車に乗せていたらきっと赤信号の時も読んだに違いない…読了して良かったです。

日本で創薬(薬の開発)を学ぶ大学院生の研人と、アメリカ人で現在はアフリカで活動してる傭兵のイェーガー。この全く異なる環境の2人の物語が入れ替わり進行しますが、一体どこで交わるのか、がすごく巧くて面白いです。久々にスケールの大きいエンターテイメントに出会いました。

近未来ファンタジーでありながら、大国の正義という名の欺瞞、難病治療、そして人類の進化!! という壮大なテーマを全て盛り込み、見事に伏線を回収して着地させたプロットはもう、さすが。映画のような展開でした(映画化は残念ながら映像的にムリでしょう)。

評価:(やっぱりエンタメがお好き)
 

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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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