忍者ブログ

DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ピエタ*大島真寿美

pieta.jpg18世紀爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。『四季』 の作曲家ヴィヴァルディは孤児たちを養育するピエタ慈善院で 『合奏・合唱の娘たち』 を指導していた。ある日ピエタで育った教え子の1人、エミーリアのもとにヴィヴァルディの訃報が届く。
(大島真寿美)1962年愛知県生まれ。南山短期大学卒業。『春の手品師』 で文学界新人賞受賞。主な著書に 『ビターシュガー』 『三人姉妹』 など。

巷ですっごく評判が高い本作ですが、私にはあんまり響かなかったかな。主人公エミーリアの気持ちに最後まで入り込めず、ずっと傍観者だったのでエミーリアが悩むピエタ慈善院の困窮ぶりとか、ピエタに捨てられた子どもだった私、という心許なさ、ピエタへの愛着、すべてあんまり伝わらなかった。なんだかキレイ過ぎる感じ。

貪欲であったのはヴィヴァルディ先生だけで、後の登場人物らは冷めているというかイマイチ情熱に足りない感じ。設定も人物らもそれぞれに趣向をこらしてあるのですが、共感も同情もできず、イマイチ楽しめませんでした。残念。

評価:(5つ満点)

PR

マボロシの鳥*太田光

maborosi.jpg舞台芸人の一瞬の輝きを1羽の鳥に託した表題作。父との不和に悩む娘、イジメにあう男子生徒の葛藤、人類の行く末、そして神の意志まで。芸人 太田光が持てる芸のすべてを注いで描き尽くした初めての小説集。
(太田光)1965年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退。お笑いタレント、漫才師、エッセイスト。田中裕二と 『爆笑問題』 結成。著書に 『パラレルな世紀への跳躍』 他多数。
(収録作品)荊の姫/タイムカプセル/人類諸君!/ネズミ/魔女/マボロシの鳥/冬の人形/奇跡の雪/地球発… 
 
『パラレルな世紀への跳躍』 が、ものすごーく良かったのですよ!太田さん天才か、とまで思った私。初の小説ということですごい期待していました。その期待がやや大きすぎたけど、テーマは 『みんな、誰かとつながっている。』 という非常に明確で分かりやすいものだとすぐに伝わったので、それはいいかな。

私は 『荊の姫』 のようなオーソドックスなスタイルのものが好きですね。『マボロシの鳥』 はちょっと長すぎるかも。この本にインスパイヤ、じゃなくて触発されて、影絵作家の藤城清治氏が作った作品が、絵本 『マボロシの鳥』 。3000円もする高級絵本ですが、ちらっと見た限りやっぱりいい!欲しーい!ですがなかなか手が出ないですね。

太田さんも雑誌ダ・ヴィンチ誌上で 『自分が思っていたほどこの本売れなくて不満だったけど(どこまで本気?笑)、藤城さんが絵本にしたいと言ってくださってそれが実現できたこと、それがこの小説への何よりの評価と受け止めている』 というようなこと言ってました。
ehonmabo.jpg自分の本を絶賛してくれ、それに作品(影絵)を付けたいと言ってくれた人がいる。しかもその人が影絵第一人者の藤城さんですし。この絵本の原画展も全国巡回であるのですが、どこかで見られたらなぁ。

図書館に入ったらゆっくりじっくり見せてもらうことにします。
小説の次回作にも期待。

絵本 マボロシの鳥(藤城清治 影絵/太田光 原作・文) 
 
評価:(5つ満点)

パラレルな世紀への跳躍*太田光 2011/02/01

月下の恋人*浅田次郎

gekka.jpg恋人と別れるつもりで出掛けた海辺の旅館で起こった奇跡を描いた表題作。昭和を舞台にアパートの隣の部屋に住む駄目ヤクザを描いた 『風蕭蕭』 。11の短編を収録。
(浅田次郎)1951年東京都生まれ。日本ペンクラブ理事、日本文芸家協会理事。『地下鉄に乗って』 で吉川英治文学新人賞、『鉄道員』 で直木賞、『壬生義士伝』 で柴田錬三郎賞、『お腹召しませ』 で中央公論文芸賞、『中原の虹』 で吉川英治文学賞を受賞。主な著書に 『蒼穹の昴』 『中原の虹』 など。
(収録作品)情夜/告白/適当なアルバイト/風蕭蕭/忘れじの宿/黒い森/回転扉/同じ棲/あなたに会いたい/月下の恋人/冬の旅


ちらっとお話ししましたが私、この春から読書会なるものに入会しました。読書会とは→読書好きが集まって、毎月決められた課題本(テーマ本)を読み、例会時にその感想を発表しあう。という本さえあればお金もかからず本の楽しさを仲間と共有できる、楽しい会。なはずなのですが…。

読書会のことは追々。で6月のテーマ本がこちら。浅田次郎か…自分なら絶対に手に取らないだろうなこういう本。という本との出会いも大切だ、と例会に向けて読んだのですが。
つまらんです。なんというか、ジェネレーションギャップですかこれは。作者の意図が私にはぜーんぜん伝わらないのです…。ともかく感想行きます。

11もの短編集でありながら全体的にイマイチ。謎かけが非常に多く、しかも解答がないまま終わるのでその後想像しようにもしようがなく、フラストレーションが溜まります。謎かけもいいのですがせめてもう少し結論に至るヒントを書き記して欲しいものです。

評価:(5つ満点)

きことわ*朝吹真理子

kikotowa.jpg葉山の高台にある別荘で幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が25年後の別荘の解体を前にしてふたたび流れ始める。『新潮』 掲載を単行本化。芥川賞受賞。
(朝吹真理子)1984年東京都生まれ。慶應義塾大学博士課程前期在籍中(近世歌舞伎)。本作で芥川賞、『流跡』 でドゥマゴ文学賞を受賞。

実に爽やかな一冊。きこととわこは仲が悪いのかと思っていたら全然違ってて仲良しだった。しかも歳が結構離れていた。お金持ちのお嬢さまと別荘番の娘の話、というありきたりな関係ながら2人の関係は簡単に言い表せない、不思議な縁で結ばれていた。

長年会っていない人でも、こうして心が通じる時があるのだ、ということ。別荘の解体を通じて懐かしい記憶に浸れただけでも、きこととわこは幸せだったのかもしれない。

しかーし、テーマは不明(笑)。そこが純文学。

評価:(5つ満点)

ハーモニー*伊藤計劃

harmony.jpg健康 を基盤とし調和を何よりも尊重する未来社会。人々は互いをいたわり合い思い合う、理想社会。高度医療福祉社会はある衝撃的な事件を機に崩壊の危機に瀕した。WHOの監察者 霧慧トァンは事件の背後にかつて自殺したはずの親友の影を見る。人類社会のの最終局面に立ち会った2人の女性の物語。  日本SF大賞、星雲賞日本長編部門、フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞。
(伊藤計劃)いとうけいかく。1974年東京都生まれ。2009年没。武蔵野美術大学卒業。本作で 日本SF大賞、星雲賞日本長編部門、フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞。著書に 『虐殺器官』 。

見事なSF。人々が健康を最優先し、他人を尊重しいたわり合うユートピア。そしてそのユートピアを息苦しく感じる少女達。自殺すらできない社会で自殺を図った少女らのうち1人が死に2人は生き残った。生き残った罪悪感を抱えながらトァンは生きていたが、ある日この 『死ねない社会』 で大量の同時自殺が起こる。

というお話。健康は全て体内に埋め込まれた医療マシン、Watch Meによって管理され、誰もが太りすぎず痩せすぎず、お肌は美しく血圧も血糖値もみな正常、という理想社会。そこに反発するトァンの方がおかしいんじゃない?とも言えますが、トァンの立場になってみれば、まさにWatch Meに監視され続ける一生なんて、まっぴら。このWatch Meって名称もすごくセンスいいですね~ナノ型医療マシン、体内の血管の中をグルグル駆け回り、宿主(だ、まさに)のデータを常に健康管理サーバに送り続ける。ちょっとでも暴飲暴食をしようとすると立ちどころに警告が鳴る。【あなたは、社会の大切な資源なのです。資源はそのよい状態を保つ義務があるのです。】 というのが健康維持の理由。なーるほどー。

しかし争いのない理想社会は、個人の意志のない社会であった。自らの意志決定すらできない社会、食べるものも飲むものも、そして死ぬことさえも。悩みがある、その悩みで苦しいと思える今がありがたいのだなと読了後、実感してしまいました。

SFエンターテイメントでありながら、その辺の純文学よりずっと人類の本質、生きることの本質について説いています。驚愕のラストまでオススメです。

評価:(5つ満点)

進撃の巨人*諌山創

singeki.jpg人類は突如出現した巨人に絶滅寸前まで追い詰められた。生き残った人々は巨大な城壁を築きその中に閉じこもることで何とか絶滅を免れる。100年後、かりそめの安定は巨大城壁をも超える巨人の出現により破られた。エレンは閉塞的な社会を嫌い城壁の外を目指す少年だったが、5年前の超大型巨人の出現から始まる騒動で母親を亡くし、幼なじみのミカサと共に巨人と戦う兵士を育成する訓練兵団の訓練兵となる。別冊少年マガジンで連載中。
(諫山創)いさやまはじめ。1986年生まれ。大分県立日田林工高等学校卒業。漫画家。『HEART BREAK ONE』 で週刊少年マガジン新人漫画賞特別奨励賞、『orz』 で週刊少年マガジン新人漫画賞入選を受賞、デビュー。本作で講談社漫画賞少年部門を受賞。


ついに、買ってしまいました進撃の巨人。話題作にこうも弱い私ですが、本作は購入までに結構迷いました。だって画が私好みじゃないんですもの…。1、2巻はデッサンも画のラインも粗く、正直まだまだプロのレベルじゃないぞと思いましたが4巻まで出ている現在、だいぶ落ち着いてきました。

このマンガの最大のポイントは、人を喰らう巨人とその巨人から逃れるべく、城塞都市を築いてそこに立てこもる(要するにカゴの鳥)、人類の攻防にあります。100年間守られた平和、というよりたまたま巨人が城壁を越えられない大きさだったため、人類は壁の中でのほほんと暮らしていたのですが、ある日突然壁を越える超巨人が表れる。ネオ・ジェネレーションですな。それで人類は慌てふためくという。

評価:(久々の少年マンガ)
 

月のさなぎ*石野晶

tukino.jpg森の中の学園に隔離されて育った性別のない子ども達。18歳になり性別が判明すると学園を出なくてはならない。それぞれが女に、男になりたい想いを抱え暮らす子ども達の中で事件が起こる。学園からの逃避行、フラッシュバックする覚えのない記憶。17歳の身体と心はその意思とうらはらに変わりはじめる。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。
(石野晶)1978年岩手県生まれ。岩手県立伊保内高等学校卒業。『パークチルドレン』(筆名:石野文香)で小学館文庫小説賞を受賞、本作で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。

YA向き。世界の構造としてはよくできているものの、人物らの描写にもう一歩かな。月童子ら一人ひとりの抱える果てのない孤独感が、今ひとつ伝わってこないような気がします。でも私の好きな近未来小説、YA向けとしてはとても読みやすく、YAの方に強力オススメですね。登場人物らがみんな優しすぎるところも、繊細な中高生らしさがよく表現されていると思います。

評価:(5つ満点)

苦役列車*西村賢太

kueki.jpg友もなく女もなく1杯のコップ酒を心の慰めにその日暮らしの港湾労働で生計を立てている19歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れるが。芥川賞受賞。『新潮』 掲載をまとめて単行本化。
(西村賢太)1967年東京都生まれ。『暗渠の宿』 で野間文芸新人賞、本作で芥川賞を受賞。著書に 『どうで死ぬ身の一踊り』 。 
(収録作品)苦役列車/落ちぶれて袖に涙のふりかかる

ダブル芥川賞のうちの1作。私小説、ということでかなり悲壮感漂うハードな内容では、と覚悟して臨んだのですが、思っていたよりずっとソフトな内容でした。ちょっと拍子抜け?

主人公 貫太はまさに著者 西村氏の化身で、ひたすらに西村氏は私小説にこだわっているそうです。人とコミュニケーションがとれず、それゆえにずっと孤独である貫太。同情したいようなしたくないような。その微妙な描き方はやっぱり巧いと思います。
次回作もきっと、読みます。

評価:(5つ満点)

カウンター
ツイッター始めました
今週の私
急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
只今読破中
木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
読書 映画鑑賞 観劇
かぎ針編み プール
ハマッてます:
車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
ブログ内検索
最新コメント
[10/14 菜摘]
[10/12 さつき]
[05/08 菜摘]
[05/08 小琴]
[03/19 菜摘]
アクセス解析

Copyright © DaisyAKM Archives : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]