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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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刺繍する少女*小川洋子

img20050821.jpg人の 『生』 について常に焦点を置いている作家、小川洋子の短編集。
収録作品: 刺繍する少女/森の奥で燃えるもの/美少女コンテスト/ケーキのかけら/図鑑/アリア /キリンの解剖/ハウス・クリーニングの世界/トランジット/第三火曜日の発作


基本的に短編集はあまり好きではありません。というのも 『おっこれからこんな風になるんじゃないか?』 とワクワクし出すと終わり、になってしまうからです。なんだもう終わりか…と不完全燃焼なので大体はいつも長編を読むようにしています。

逆に言うと短編というのは作家にとっても力量を試されるものではないかと思います。短い中で余韻を残しつつ、読者に不満を残さないように書かなくてはならないものですからですね。

この作品集では 『図鑑』 というのがいちばん面白かったかな。 『第三火曜日の発作』 というのは私のことが書いてあるのかと思いました(苦笑)。あとは特記するほど覚えてないです、すみません。

評価:(5つ満点)
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博士の愛した数式*小川洋子

img20050821.jpg天才数学者の博士宅に通うことになった家政婦の私。博士は自身の記憶が80分しかもたないという難病の持ち主だった。しかしこの世界は驚きと喜びに満ちていると、数式を通じて私に教えてくれたのは博士だった。記憶がもたないことへの焦りと絶望を抱えながらも頑なに自身の世界観を保ち生き抜こうとする博士、その博士を理解し博士の 『友達』 になることを決意する私とその息子。人が生きるために必要な物とは、真の友情ではないか。常識にとらわれない3人の友情を描いた、意欲作。
第1回 『全国書店員が選んだいちばん!売りたい本大賞』 本屋大賞2004年受賞作。


今年から新設された 『書店員が選ぶ売りたい本大賞』 第1回目に選ばれた本作。話題になりましたので私も手に取ってみました。最近狙いすぎ、という書評の本を多く見てきたのでさほど期待していなかったのですが、とてもよかったです。

全体は家政婦である 『私』 の1人称で進みます。以前も書きましたが私は1人称の本はあまり好きではありません。非常に主観的な印象を受けるからです(当たり前ですが)。でもこれは 『私』 の主観が非常に研ぎ澄まされていて、受けて側に非常によく伝わる作りになっていました。

博士は記憶がきっかり80分しか持たないという難病です。毎朝 『私』 は家政婦として出勤する際に 『あなたの家政婦ですよ』 と挨拶することから始まる、というなかなか厳しい環境に置かれています。博士自身も自分の記憶が80分しかもたないことは自覚しているため、毎日着ている背広の袖口に 『僕の記憶は80分しかもたない』 というメモがクリップで留められているという…。なかなかシュールな光景です。

評価:(5つ満点)

女王陛下のアルバイト探偵*大沢在昌

img20050821.jpg内閣調査室副室長からの今度の依頼は17歳の王女様の護衛。東南アジアの島国ライールの王位を巡る陰謀で命を狙われている王女が来日。その来日の目的は、王女の命を狙う団体の正体は?さらに彼女と恋に落ちてしまった隆君の運命は?
アルバイト探偵シリーズ初めての長編、第3作。


アルバイト探偵シリーズ初の長編。やはり長編の方がずっと面白いですね、この荒唐無稽な設定が十分生きるには長編にしないと勿体ないです。

冴木インヴェスティゲイションついに海外出張までもこなす。依頼とは言え東南アジアの密林を行く涼介親父と隆君、高校はついに留年。それより生きて帰れるのか、こんなジャングルの奥まで来ちゃって?

今回も架空の国が舞台ですが、確かに現存の国で書いたら苦情が来そうですよね。王女ミオは日本人の母親とライール国王とのハーフ。父親である現国王が病気療養中でその後継者選びに注目が集まる中、王位継承権のある彼女が留学先の大学を見学するために来日することになった。ライール国内の敵対勢力との摩擦を避けるため、日本政府(警察)は表立ってミオ王女の警護にはあたらない。そこで冴木インヴェスティゲイションに白羽の矢が立った。という設定ですが、王女をお守りするためとは言え国家権力から銃借りてきたりしちゃって、相変わらずそんなことでいいのか?

今回隆君はミオ王女と本当の恋に落ちます。でも思うんだけど、隆くん毎回ヒロインと恋に落ちてるから結構落ちやすいタイプなのでは?留年してもしょうがないねこりゃ。王位継承の影に見え隠れするライールの宗教団体や王女をつけ狙うプロの殺し屋など、物騒な方々の描写も荒唐無稽(失礼)で楽しめます。

評価:(5つ満点)

パンドラアイランド*大沢在昌

img20050821.jpg小笠原諸島の架空の孤島。警察の駐在所すらない平穏なこの島に、治安維持のための 『保安官』 として赴任した元刑事・高州。のんびりと退職後を過ごすつもりが、島の持つ重大な『秘密』の存在を知り、そのために次々と起こる殺人事件に巻き込まれてゆく。島民とわずかな観光客のみの島で繰り返される殺人事件、真犯人の正体と目的は。東京中日スポーツ連載 『海と拳銃』 を改題し大幅に加筆訂正して単行本化。

主人公が一人称(私や俺)の小説は読みにくい、というのが勝手な私の意見でしたが、これは主人公 高州の一人称 『私』 で物語が進んでいきますが特に読みにくいということはなかったです。

物語は架空の島である青国島を舞台に繰り広げられます。観光以外に産業もほとんどない平穏な小さな島に、突如殺人事件が次々と起こる。それと同時にその引き金となった島の莫大な財産を巡る人々の争いが描かれています。島の設定はアメリカからの本土返還が遅れたために帰島者や新規の入植者が少ない上、観光と漁業の他に産業もなく治安も安定している、という理由で 『警察の駐在所すらない』 という地。警察OBの高州は警察時代の激務と離婚で疲弊した精神と身体を休めるために、この島の治安維持官 『保安官』 のアルバイトに就く。軽い気持ちで赴任したが次々と事件が起こり…という展開。

評価:(5つ満点)

天使の代理人*山田宗樹

img20050821.jpg生命を誕生させるはずの分娩室で行われて来た後期妊娠中絶の事実。数百にのぼる胎児の命を奪ってきた助産婦・冬子は、息を引き取る寸前の胎児の目に映った己の顔を見て、この恐ろしい現実を世に訴えることを決意する。中絶という重いテーマについて、様々な立場にある中絶体験者予定者やそれを目の当たりにしてきた助産師の想い・活動を軸として、世に問う衝撃作。

ダ・ヴィンチの2ページ記事を見て読んでみようと思ったのですが、読了感はどうも…。1人称が複数であったり時間軸が前後する作品は読みづらいものが多い中、これは大変よく出来ており違和感を感じさせないのですが、中絶手術の場面や最期の冬子の独り語りの箇所はだーっと涙は出るものの、出た後ですら、何で泣いたんだろう?と思ってしまうような、あまり心にひっかかる部分が足りないような気持ちになるのが気になった作品でした。

どうもインパクトを与えることに焦点を絞って書かれた作品のように感じてしまいます。テーマとしてはかなり興味深く、人物設定もよくできていると思います。様々な立場の助産婦が後期妊娠中絶の現実に立ち向かおうと行動を起こすくだりや、中絶を希望した人、出産希望であったにも関わらず医療ミスで中絶となってしまった人、精子バンクで妊娠し出生前診断で希望の男児でなかったため中絶しようとしている人、がインターネット掲示板で出会い会話を交わすことにより、それぞれ影響し合って行く、などのくだりは自然な流れでの問題提起ができていると思います。中絶の医療ミスもあるのか!ということが何も知らなかった私にはショックでした。

途中、 『中絶する権利』 がジェンダー論に及ぶ箇所がありますが、ここはちょっと不明瞭かな。女性である私にとっても 『中絶する権利』 というのはどうもしっくり来ないですね。
また、初期妊娠中絶は割と簡単にできる(手続きも費用の面も)ということもこれまたショックでした。中絶について、男性にももちろん知っておいて頂きたいことはでありますが、まずは妊娠する当事者である女性は中絶に対する自分自身の考えはしっかりと持っておきたいものですね。

以前何かの記事で読みましたが、日本の中絶手術の大半は既婚女性による、夫との子どもの中絶だそうです。この記事を読んだ時はかなりの衝撃でした。色々な事情があるとは思うのですが、これほど愚かなこともないかと思います。

『セカチュー』 的要素を感じる作品ですが、問題提議という点では評価できるかと思います。オススメ!とは言い切れませんがご一読はおすすめします。

評価:(5つ満点)

白夜行*東野圭吾

img20050821.jpg大阪の小さな町で起きた殺人事件。犯人は特定できず19年の歳月が過ぎる。当時小学生だった被害者の息子である影のある少年と、容疑者の娘である美しい少女は仲の良い友人だった。高度経済成長期からバブル期までの時事に沿いながら、生き抜くために影となり日向となり人生を支え合って来た男女の物語。壮絶なまでに貪欲に幸せを追い求めた女と、その欲望のために影として生きることを選んだ男。その関係は友情か、愛情か。東野圭吾の代表作である長編。

エンターテイメント作家、という印象の強い東野氏の作品の中でも、本作は熱が入ってるな、と感じさせる長編でした。ちょうどバブル前の高度経済成長期を時代背景に、アンダーワールドで生き抜いてきた2人の男女が主人公なのですが、この作品の面白いところは主人公達を1人称にした箇所が全くなく、彼らに関わった大勢の人たちに視点を合わせていくことによって2人の人物像に迫ろうとしたところです。仕掛けが好きな東野氏らしい作品ですね。

最期まで主人公(と果たして言えるのかどうか?)の2人の人物像は実は明確にはなりません。なぜ2人は全く違う環境にいながらも常に連絡を取り合い、全てに連携して人生を歩んできたのか。ちょうど蝶番のようにそれぞれがお互いに必要なもの(情報、資金)を補いあって来たのか。正直彼らの気持ちは分かりません。そんなに支えあってきたはずの2人をつないでいたものは愛情だったのか、それともそうではなかったのか。最期のシーンも判断が難しい。

けれど2人の人生は決して幸福ではなかった。それはそれぞれが別々の場面で自分の人生について語ることで表現されています。男は 『いつも白夜の中を歩いて来たようだった』 と言い、女は 『自分は太陽に照らされなければ輝くことすらできない月のようなものだ』 と自分を表現します。太陽の下を歩んで行くことができなかった2人。この2人に共通しているものは何か。

それは 『幸福な子ども時代の欠如』 だと私は思うのです。本来愛され庇護されるべきである子ども時代に、その恩恵を充分受けることができなった。すると人間はこうなってしまうのかもしれません。
クリスマスやお正月が楽しいのも、子どもの頃楽しかった思い出があるからではないでしょうか。

親の責務は子どもに幸福な子ども時代を与えることではないかとつくづく思わせる作品です。

評価:(5つ満点)

六番目の小夜子*恩田陸

img20050821.jpg地方都市の進学高。そこには代々の生徒により伝えられてきた 『サヨコ』 という儀式があった。前任者によりその年の 『サヨコ』 に任命された生徒は、代々秘密の鍵とある儀式を次の学年に伝える役割を担う。決して途切れることなく伝えられてきた儀式。誰が何のために始めたのか?そして今年のサヨコは一体誰なのか?高校時代という誰もが通ってきた、学校という特殊な環境におけるノスタルジーを描いた作品。

ミステリーの旗手、恩田陸のデビュー作です。
とは言っても恩田陸は初めて読みました。タイトルも設定もすごく興味を惹かれるもので素晴しいのですが、肝心のオチがちょっと…。恩田氏自らもあとがきで、ファンタジーノベル大賞候補作として選ばれた際かなり叩かれた、と書いていますが、確かにファンタジーという分類で見ると叩かれるのは仕方ないかもしれません。結論としてファンタジーになっていないからです。

でもあらすじを自分で書いてみて思ったのですが(あらすじをよそからコピーすることもありますが大体私が考えて書いております)、儀式としての 『サヨコ』 の実体はノスタルジーそのものであった、いうことを作者は言いたかったのだと思うのです。 『サヨコ』 の儀式と存在に怯え翻弄されるそれぞれの高校生を描くことで、高校生とは大人に成りきれていない存在、子どもと大人の中間的存在と表現することが作者の意図だったのでしょう。

読了直後はどうせなら思いっきりファンタジーとして書けば良かったのに、と思いましたがこうして時間が経ってみるとあの結末でも良かったのかもしれないな、という気がしてきました。ただ途中仕掛けが破綻しているところがいくつかあるのでそれはちょっと見苦しいかなと。恩田作品でオススメがありましたらぜひ教えてください。

(おまけ) 恩田陸と宮部みゆきって似ていると思う。どうでしょ?

評価:(5つ満点)

アルバイト探偵 調毒師を捜せ*大沢在昌

img20050821.jpg広尾の洋風アパートで私立探偵事務所を営む冴木親子。不良親父 涼介の頼りになるパートナー、隆(リュウ)くんは高校2年生。徐々に国際級の依頼が多くなってゆく中、本当の親子以上に絆を深めてゆく2人。隆の実の両親についても真実が隆に明かされる。
アルバイト探偵シリーズ第2作。


短編4編を収録。1作目の最後に登場した 『歩く国家権力』 内閣調査室 副室長 島津さんからの依頼が主になり、徐々に国際色を帯びてゆく冴木インヴェスティゲイションの今回の事件は。ルーマニアのドラキュラが出てきたり、涼介が毒を飲まされ解毒剤を求めて隆くんが奔走するという辺り、展開が面白くなってきてアルバイト探偵のコンセプトも定まってきたな、と感じさせる短編集です。やっぱりファンタジー要素が多いのがアルバイト探偵の最大の魅力だしね。

ちなみに元スケ番、康子ちゃんとはまだプラトニックです(っていちいち言わなくてもいいってば)。

評価:(5つ満点)
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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
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