忍者ブログ

DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

兎の眼*灰谷健次郎

img20050821.jpg大学を出たばかりの新任教師、小谷芙美先生は学校では一言も口をきこうとしない1年生、鉄三を受け持つことになった。決して心を開かない鉄三に打ちのめされながらも、鉄三の祖父バクじいさんや同僚の 『教員ヤクザ』 足立先生、そして様々な過程環境で育つ学校の子どもたちとのふれ合いの中、小谷先生自身が鉄三と向き合うことを誓う中で大きく成長していく。戦後30年の昭和70年代。徐々に生活に豊かさが感じられてくる日本社会の中、まだ戦争の爪あとに苦しむ人々が教育現場にも子どもたちの家庭にも残されていた。差別のない社会とは、教育とは何か。親は、教育に関わる全ての者は今何をするべきか。現代にもそしてこれからにも、永遠に通じるテーマを抱えた、子どもに関わる全ての大人に読んで欲しい、教員経験17年の灰谷健次郎のデビュー作。

初めてこの本を読んだのは小学校6年の頃でした。大人になった今改めて読み返してみると、子どもの頃気付かなかったことがとても多いです。

まず70年代という時代設定。教師の中には戦前教育者であった人もまだ多くいて、職員室で若い先生とケンカになり、若い先生に 『教え子を戦場に送ったくせに!』 と言われ激高する、というシーン。子どもの頃は読んでいて全くこんなシーンがあったことにも気付かなかったが、この一言は確かにキツイと思う。でも若い教師にとっては何よりも言わねばならない一言であることも同様に分かるような気がする。今の先生方は職員室でケンカもしないだろうしなぁ(苦笑)。

『教員ヤクザ足立先生』 は子どもの権利のためにハンストまでやる。すごー教師。こんな人ももういないな。
主人公小谷先生の私生活がサラッとしか描かれていないが、小谷先生が教員と言う仕事の素晴しさに目覚めていく一方で夫との溝は深まるばかりで、いずれリコンするんだろうなぁ。

久しぶりに読んだ灰谷健次郎。デビュー作にして最高傑作ではないかと今も思う。

評価:(5つ満点)
PR

魂萌え!*桐野夏生

img20050821.jpg夫の急死後、次々と露見する彼の抱えていた秘密の生活。世間という荒波を漂流する主婦、敏子。60歳を前にして敏子の生きるべき道は?ささやかな 『日常』 を送ってきたはずの主婦に突然降りかかる、人生の分岐点。2004年 『毎日新聞』 連載小説の単行本化。

言うまでもなく、鬼才桐野夏生の渾身作です。必読です。

敏子は自分は幸せだったのか。夫の死に際して改めて自分の人生を問い直す。夫が自宅の風呂場で突然死し、その辛い現実に直面している中怒涛のように敏子を襲う、周囲の人々の悪意。家を離れていた子どもたちの勝手な言い分、全く知らなかった長年に渡る愛人の存在、全てが敏子にとっては初めて直面する、しかもたった一人で立ち向かわなくてはならない 『悪意』 である。

私も人の 『悪意』 にすごく弱い。八方美人というせいもあるけど、この頃は特に人を見る目がないんじゃないかと落ち込むこともある。義父母はよく冗談か叱責か、私のことを 『世間知らず』 と言うけれど、この頃本当に自分は世間知らずかもしれないと時々思います。

評価:(満点満点!)

とまとさんにきをつけて*五味太郎

img20050821.jpgとまとさんがやってきますよ、気をつけて…。『とまとさんかわいい!』 って言ってくれないと泣いちゃうよ!でもすぐ泣きやむのよ。泣きやむのもできるし、なんでもできるのよ。いろんなことができるとまとさんの七変化。 何が何だか分からないとまとさんですが、不思議と五味太郎の絵と言葉のマジックに引き込まれてしまいます。

きをつけてシリーズは全部で3冊あるのですが、図書館から借りてきて第2王子が一番気に入ったのがこの 『とまとさん』 。何だかかわいいとまとさんなのですが、いきなり 『かわいいと言え!』 とか 『泣いちゃうよ!』 とか、脅し文句ばかり並べているかと思えば、顔を七変化させたり、こちらをびっくりさせた上に突然 『ねむくなったから帰る』 とか言う。

何がなんだか分からないのですが、そこは五味太郎の絵。かわいいので許しちゃいます。みたいな本です。でも確かにシリーズでは私も一番面白いと思う。理屈抜きで楽しめる、かわいい絵本です。

それにしても何で 『気をつけて』 なんだろう…おっと考えちゃいけないんだった(笑)。

評価:(第2王子評)

ふしぎな図書館*村上春樹

img20050821.jpg図書館へ調べ物に行くと、地下の閲覧室へ通された。そこには 『羊男』 が待っていた。迷路のように入り組んだ、牢屋のような閲覧室から僕は脱出できるのだろうか?村上春樹と佐々木マキが贈る大人のためのストーリー。『トレフル』 1982年連載 『図書館奇譚』 の改題改稿。

村上春樹ファンのために描かれた、大人のための絵本。佐々木マキ好きの私も結構楽しめました。

母が春樹ファンだと最近知り、全く春樹を読んでいない私に母は絶句。 『ノルウェイの森も読んでないの?』 と言われました…すみません。ということで羊男も知らないのですが、この本は見てみました。

一言で言うと何が何だか分からない、というところでしょうか。でも村上春樹は図書館が好きだそうです。この本でも図書館の地下に牢屋があるという設定。 『海辺のカフカ』 でも図書館が出てくるというし、図書館は彼にとって特別な場所なのでしょう。

村上春樹、読んでみますか。とりあえず40歳までには全書読破を目指し、ガンバリマス。

評価:(5つ満点)

となり町戦争*三崎亜記

tonarimati.jpgある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。それでも戦争は着実に進んでいた…。第17回小説すばる新人賞受賞作。第133回直木賞候補作。

久々に会心の設定の本だと感じました。市町村合併が実は戦争の結果行われるものだったら?そして広報の死亡数欄に着目する作者の着眼点が素晴しい。そう、毎回広報が来るたびに市町村の人口は増えたり減ったりしているのですが、それが 『戦争』 による結果も加わったら?と考える。

私達は日々生活している中、『戦争』 とは世界のどこか遠いところで行われているもの、と考えがちですが、それが自分の生活の一部となったらどうでしょう。
その本はそこを踏まえた上であえてシュールに描いています。シュールな怖さ、面白さ。

生真面目に役所的に、『僕』 にとっての 『戦争』 偵察業務は日々続いていきます。自分でもこれが戦争かどうか分からないまま、『僕』 はひたすら任務を忠実にこなしていくのですが、最後まで実際の戦争が見えなかったところが読了後すぐの不満でした。

がっ今考えてみると、これが現代日本の最も恐ろしい部分なのもかもしれません。
自分のすぐそばで戦争が起こっていても気が付かない、気にしないという風潮に、知らず知らずに自分も飲み込まれているのかもしれません。

エンターテイメントとしては十分過ぎるほど、シュールな設定でそれだけで★5です。すばる新人賞は私にはアタリが非常に多いですね(金原ひとみなど)、これからは意識してチェックして行きたいと思います。

※ちなみに作者 三崎氏は男性です。

評価:(必読!)

コップちゃん*中川ひろたか

img20050821.jpg中川ひろたかの文章に、イラストレーターとして活躍中の2人組、100パーセントオレンジの絵で描かれたシリーズ。コップちゃん、スプーンさん、くつしたくんの3冊シリーズ。コップちゃんが各ページごとにただ存在するだけなのですが、1ページずつ進むリズムが楽しい絵本。

100パーセントオレンジは私も結構好きです。図書館で借りてきたコップちゃん、一番単純なストーリーが第2王子が気に入った様子なので購入しました。もうすぐ3歳ですがこういう赤ちゃん絵本もまだ好きなんですねぇ。

『コップちゃん ゴロン』 というところでは必ず首をかしげていますし 『コップちゃん いないいない』 って次のページにいるんですけど、次のページでさかさまに 『ばぁ!』 と来ると、頭をさかさまにして見て嬉しそうなこと。

『おなかすいたね、じゅーすにしよう』 というところは必ず、私よりも先に読みます。『かんぱーい』 と読んだ後は自分で両手でコップをカチンと合わせたつもりで 『かちーん』 と効果音までつけて読み、『ごくごくごく…ああおいしい』 で満足げな顔。

『もういっかい、よむ』 です。以下、くりかえし。

評価:(第2王子評)

愛がなんだ*角田光代

img20050821.jpg『最近誰かのことを好きになったことはありますか?人を本気で好きになることの幸せと孤独、喜びと切なさを思い出させてくれる、そんな一途な女性が主人公の物語です。』
とオンライン書店の説明文にあるが、私ならこう書く。
『自分勝手に想いを押し付ける女と、それを利用しているだけのつまらない男の物語。こんな関係を恋愛と呼ぶようなこの頃の風潮が実に嘆かわしい。しかし時代と共に恋愛の形も変わって行くものなのだろうか。』
あー嘆かわしいっ。


テルコもマモちゃんもキライ。テルコは大キライ。『いいっすよ』 なんて言葉遣いのオンナはキライ。これは愛じゃない、と私は思います。

個人主義、利己主義のただぶつかりあい、それに気付かないうちは恋愛なんてテルコもマモちゃんもできないぞ!と説教してやりたい。ホムラさんのエッセイでも読め!周りの人の優しさにもっと気付け!と言ってやりたい。

それにしても今の若者ってこういう風に自分だけの尺度で人と付き合ったりしてるのだろうか?もしかして私も?と思うと、かなりコワイ。
と思わせてくれる小説です。

評価:(あくまでも小説は好みです)

恋なんて、少し不幸ぐらいがちょうどいい*唯川恵

img20050821.jpg恋愛小説の旗手、唯川恵のエッセイ。恋することとは、愛することとは、そしてそれらが自分に与える影響とは?恋愛なんてもう関係ないけど、という貴女にこそ読んで欲しい、生きるためのヒント集。
『人は、生きる中で、自分というものを作り上げてゆくものだと思ってきた。
 もちろん、それもあるに違いない。
 でも最近私はこう思う時がある。
 人生の中で、人は自分への誤解を解いてゆくものかもしれないなあって。
 えっ本当は私、こういう人間だったんだ。今まで何度それに驚いたことだろう。』
 ( 『恋なんて、少し不幸ぐらいがちょうどいい』 唯川恵 より)


とまぁ、こんな内容の作品です。恋愛なんてもう縁がない、なんて思っていても読んでみると結構自分なりの発見があったりします。

『カラダがココロを支える三十代』 20代の頃は気力でどうにかなったが、30代では気力だけではどうにもならないこともある。30代になったら健康を、自分の身体をまず大切にするべきだ。それが全ての成功への近道である…なんて、至言だ…と思いつつもすぐに忘れちゃうのは何でだろう?そういう至言を忘れない人が成功するんだろうなぁ。なんて思ったりしました。

『結婚してよかったことは?』
『そりゃあ、もう恋愛しなくていいことよ。』

というくだりを読んだ時、私も最初結婚した時そう思ったのを思い出しました。さて、今は?(笑)。

あと 『オレってガキだからさ。』 という男とは付き合うな、とあった。そう、付き合うなら大人に限る。エセ大人とは付き合うな!全くだ(笑)。

さらに 『ありのままの自分でいいの?』 は勉強になった。だらしない自分を自分で許してしまっているのは、ありのままの自分を受け入れているわけではないと。自己肯定と開き直りは違う。とあった。全くその通りです、反省。

しかし、読んだ後は忘れちゃうんだよなぁ、こういう本の内容。だからいつまでも成長しないのかな、私。

評価:(20分で読破…内容あるのかないのか?)
カウンター
ツイッター始めました
今週の私
急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
只今読破中
木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
読書 映画鑑賞 観劇
かぎ針編み プール
ハマッてます:
車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
ブログ内検索
最新コメント
[10/14 菜摘]
[10/12 さつき]
[05/08 菜摘]
[05/08 小琴]
[03/19 菜摘]
アクセス解析

Copyright © DaisyAKM Archives : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]