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読書と映画と観劇と

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水の眠り 灰の夢*桐野夏生

img20050821.jpg昭和38年のオリンピック前夜の東京。『トップ屋』村野善三は地下鉄爆弾事件に遭遇する。そこから始まる一連の脅迫事件を追う村野。トップ屋同士そして警察との攻防の中、真のジャーナリズムを追い続ける男を描く。桐野夏生の代表シリーズ【探偵村野ミロ】シリーズ3作目。ミロの義父 村善と母 早重、実父 後藤の出会いから別れを描く。

最近桐野作品ばかり読んだので帰省(新幹線)用文庫は違う物を買おうと思っていたところ…たまたま本棚の奥から出てきた昔の【東京人】の特集 『本は何でも知っている』 を読んでいたら、桐野夏生の批評が出てきました。そして本作を 『50年代生まれの桐野氏がオリンピック前夜の東京の様子をここまでよく取材して書いたなと感嘆した作品』 とあるではないですか。

以前より村野ミロの義父 村善があんまりあっさり死んでしまったためその人物像がよく分からなかったので本作を読まなくては、と思っていました。即、本屋へ走りました。

かつて 【トップ屋】 と言われ週刊誌は専属外注の記者集団が書いていた時代があったそうです。トップ屋に対し新聞記者を 【ブン屋】 と言います。どちらも今や死語かも。トップ屋村善は仕事に誇りとやりがいを持ちながらも、時代の流れがかつての仲間達に亀裂をもたらしつつあることに苦悩する、という内容。後にミロの母となる早重との出会いももちろん本作のポイントではあるのですが、むしろトップ屋としての村善の生活が詳細に描かれている点が魅力の本作です。
東京人の記事にあった通り綿密な取材が破綻のない作品作りに大きく影響しています。

それにしても昔はよかった。待ち合わせは時間を決める。遅れても携帯はない。ひたすら待つ。それが愛の形(?)。物語の最後で村善と早重は偶然本屋で再会します。引越してないのか、と問う村善に早重はこう答えます。
『貴方が電話して来てくれるかもしれないのに引っ越せないでしょう。』
携帯のない時代。戻りたいものです。

評価:(5つ満点)
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グロテスク*桐野夏生

img20050821.jpg『私』の超人的な美貌を持つ妹ユリコ。『私』の名門女子高での同級生和恵。2人は街角に立つ最下層の中年娼婦として同様に殺害という孤独で衝撃的な死を迎えた。2人を取巻く状況を『私』が回顧する中で浮かび上がるそれぞれの生き様。『東電OL殺人事件』を題材に週刊文春連載を単行本化。

2003年最後に読んだ本が2003年ベスト本でした。桐野夏生は 『柔らかな頬』 が秀逸と思っていますがこれに勝るとも劣らない作品です。また桐野夏生の代表作が生まれました。

読む前にダ・ヴィンチのインタビューで桐野氏が 『グロテスク=化け物を書きたかった』 と発言してましたが、まさに本作は女という生き物の中に巣食う【化け物】を描いた作品です。女性に対して理想が高い男性はご遠慮頂く方がよろしいかと思います(笑)。

毎回思うのですが桐野氏の取材力には感嘆します。行きつけのオンライン書店bk1の書評にもQ女子高(のモデルと思われる)の出身者と言う方の書評が載っていましたが、本当によく取材していると感心していました。本作品のポイントの1つはこのQ女子高における、我々庶民(笑)が絶対に超えることのできない【階級社会】という壁です。

一言で言えば恐るべしQ女子高。お受験の愚かさをつくづく感じます。愚かなのは端から争うべき土台が違うにも関わらずその争いに参加ししかも勝たなくてはならない、と思いつめてしまう少女達。和恵もミツルもそして傍観者を装う 『私』 でさえも、実は同じように土俵で戦っていたのでしょう。愚かな生き方です。その戦いが無意味だと知っていたユリコだけが、実は一番自分を知っていたのかもしれません。

評価:(5つ満点)

蹴りたい背中*綿矢りさ

img20050821.jpg高校に入ったばかりの『にな川』と『ハツ』はクラスの余り者同士。ハツはモデル出身のアイドルに熱狂するにな川の観察を続けるうちに深く彼と付き合うようになり…。人と関わるのが下手な10代同士の奇妙にも不可思議な関係を描く文芸賞受賞作。

同じく文芸春秋3月号掲載の芥川賞受賞作です。 前作 『インストール』 も気になる作品だったのですが未読のまま本作を読みました。

蜷川を 『にな川』 と表現したりする辺りも面白く全体的にいい作品だと思いましたが、表現に気を配る余り肝心の主人公ハツの心の機微が表現し切れていないように感じたのがやや残念です。

金原作品と同じく十代の昇華し切れない感情をテーマとしている点で評価を受けた作品と感じます。やはり若い作者自身の持つ感性が活きているのでしょう。ただ、これからハツはどこへ向かうのか、それが感じ取れない点でやや後味の悪さを感じました。それが作者の狙いなのかもしれませんが。

余談:にな川が夢中になるモデル『オリチャン』なぜか長谷川●子をイメージしてしまいました。

評価:(5つ満点)

蛇にピアス*金原ひとみ

img20050821.jpgピアスの拡張にハマっていたギャル系コンパニオンのルイは『スプリットタン』という2つに分かれた舌を持つ男アマと出会う。同棲を始める2人。その間もルイは刺青など『身体改造』を繰り返す。やがてアマが行方不明となり死体で発見され…。第27回すばる文学賞受賞作。

文芸春秋3月号掲載の芥川賞受賞作です。金原ひとみは本作がデビュー作の弱冠20歳の女性。一言で言うと 『上手い』 。20歳の女の子(語弊がありますがあえて)がこのように破綻のない文章を綴るとは。

読み始めた時は 『またこの手の内容か』 と思いました(とある選考員も同様に書いてます)。私の苦手な分野です。しかし読んでいくうちに文章に引き込まれていく自分に気付きました。読むのを止めてなぜ惹かれるのかを考えてみると。

女性作家にありがちな、自分の価値観を押し付けたり必要以上に主人公の内面を押し付けようとする記述がないことに気付きました。文章が上手い。その一言です。

先入観なしに読もうと選考員の書評は読み飛ばし、金原ひとみ本人の受賞後の言葉だけを読んでから読んだのですがそこには 『適当に書いてたら芥川賞も取ってしまったし』 とありました。この言葉が真実ならば世の中の作家志望の方々(私含む、笑)には到底及ばない【何か】が彼女にはあるのでしょう。これを【才能】と呼ぶならば、それは一体どうやって磨かれるものなのでしょう。

評価:(5つ満点)

旅の指さし会話帳11ベトナム

img20050821.jpg数年前からベトナム渡航を強く希望している私ですが、昨今のSARSを初め鳥インフルエンザなどでますますベトナムが遠く感じるこの頃です。

自分でもなぜベトナムへの憧れが強いのか不明なのですが、今なお強く残るアジア的雰囲気と植民地時代のフランスの香りが共存する、不思議な空間であるかのような気がするのです。

そんなわけで密かにベトナム情報を収集しているのですが、そんな中で見つけたこの本。 『指さし会話帳』 のベトナム編です。

もともとこの 『日本語編』 がよいと聞いて友人へのクリスマスプレゼント用に買ったのですが、ついでに私もベトナム編を買ってみました。ベトナム語は発音も文字も難しそうで修得にはかなり時間がかかりそうですが、気持ちだけでも半歩ベトナムへ近づいたような気がします。

ベトナム渡航経験のある方の情報や一緒にベトナムへ行ってやろう!という方のメールお待ち申し上げております。

MASTERキートン*浦沢直樹

masterkeaton.jpgダ・ヴィンチ1月号での 【好きな漫画家ランキング】 で堂々の1位の浦沢直樹。私も大好きな漫画家の1人です。

連載終了の 『Monster』 の人気が非常に高く、私も連載1回目から最終回まで読みましたが、あまり私好みではありませんでした。ずっとMonsterの正体はニナでヨハンはとっくに死んでいた、という話だと思っていたので結末は 『???』 でした。
巷では今も高い人気のようなのであまり大きな声で言えないのですが、私と同じく面白くなかったという意見があるはずなのですが…。

その理由は前作 『MASTERキートン』 が本当に秀作だったのです。こちらも1回目から最終回まで読みました。って一体何年オリジナル読んでるんだか…。

マスターキートンは浦沢ファンの間でも人気がかなり高く、原作と漫画を分けた作品としては大変成功した例、とまで評されています。考古学者の主人公、平賀キートン太一が自説ヨーロッパ文明ドナウ川発祥説を唱え学問の世界で生きたいと願いながらも機会に恵まれず、大学の講師を転々としながら副業の保険の調査員でも活躍する、というストーリー。

評価:(5つ満点)

Book of the Year 2003

ダ・ヴィンチ1月号のBook of the Year 2003によれば、2003年度発行の新刊本のベスト10は以下である。
※11位以下は省略、選書はダ・ヴィンチ読者の投票による
1位 陰摩羅鬼の瑕 (京極夏彦)
2位 ハリーポッターと炎のゴブレット (J.K.ローリング)
3位 バカの壁 (養老孟司)
4位 ブレイブ・ストーリー (宮部みゆき)
5位 ZOO (乙一)
6位 グロテスク (桐野夏生)
7位 4TEEN (石田衣良)
8位 PAY DAY!!! (山田詠美)
9位 デッドエンドの思い出 (よしもとばなな)
10位 キャッチャーインザライ (J.D.サリンジャー)

このジャンルばらばらな所がまた興味深いのですが、京極夏彦の妖怪シリーズがこれほどまでにダ・ヴィンチ読者に受けているとは。小説の中に突然出現する 『バカの壁』 も気になります。

乙一、石田衣良など新進作家にはイマイチインパクトが足りないような気がします。吉田修一系のような気がしてどうも私好みじゃないような気がします(吉田修一はつまらなくて途中で止めた)。しかしいずれは手に取ることになるのでしょうか。

山田詠美も既に大御所入りという雰囲気ですが、私は1冊しか読んだことがないので何とも言えません。来年も出来る限り読んだことのない作家の作品にチャレンジして行きたいと思っております。

【2004年課題未読作家】
村山由佳 横山秀夫 島本理生(以下続)

※『バカの壁』がもう本屋にありません。どなたか持っていたら貸してください。

サラダとまほうのおみせ*カズコ・G・ストーン

img20050821.jpg虫たちが仲良く暮らす柳の下のやなぎむらにいも虫のモナックさんが『サラダとまほうのお店』を開きました。とてもおいしいサラダだったので、6匹の村の虫たちは毎日食べに行きました。ある日お店にお休みの看板が出ていて…。蝶になったモナックさんの結婚式に出席するため虫たちは地図を頼りにたちあおいむらに出かけます。繊細な色鉛筆画で描かれた虫たちの織り成す小さな世界の物語。

こどものともで出会ったストーンの色鉛筆画の絵本。前半はやなぎむらでいもむしのモナックさんのお店が開店し蝶になり閉店するまで、後半はモナックさんの引越し先での結婚式に招待され、みんなで協力して様々なトラブルを乗り越え無事に旅を終える、という内容になっています。

やなぎむらにはアリの家族、バッタ、カタツムリ、クモと4種類の虫たちが仲良く暮らしているのですが、物語の端々でプレゼントを選んだりそれぞれの特技を活かしてトラブルを解決したりする場面が活き活きと描かれています。クモやカタツムリはちょっと苦手だけど物語では2匹とも重要な場面で大活躍、そこがまた楽しいのです。

丁寧に描かれた虫たちの暮らす世界と小さな虫たちの豊かな表情がとても魅力的な作品です。絵本を贈ろうと思う時の候補に必ず挙がってくる一冊になっています。

評価:(5つ満点)
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急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
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車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
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