私、コウコと、ばあちゃん、さわちゃん。トイレへ行く他はほとんど寝たきりの少し呆けた祖母の心にあった、誰も知らなかった辛い想い出。現在を生きるコウコと祖母さわちゃんの若かりし日々の想い出が、章ごとに一人称を入替え同時進行する物語。
エンジェル1つめ。コウコが飼っているエンジェルフィッシュ。
エンジェル2つめ。主人公の1人である考子(コウコ)。コーヒーを飲まないと不安でたまらず、自分のカフェイン中毒を治そうと熱帯魚を飼うことを決意する。
エンジェル3つめ。コウコの祖母さわちゃんの、若い頃うちにいたお手伝い、ツネさんの彫った天使の像。
でしょうか。
人は天使になりたいと願いつつも天使にはなれない自分の心に気付いて愕然とする。
辛い気持ちをずっと抱えながら生きてきたばあちゃんの秘密に、夜のトイレ当番を引き受けた高校生の孫娘、コウコは徐々に気付いていく。
コウコとばあちゃんであるさわちゃんの一人称の入替えで物語は進む、コウコの部分は口語体、そしてさわちゃんの部分は文語体(旧仮名遣い)。文庫版では同じ白いページだが、ハードカバーでは文語体の部分はページの色がセピア色になっているとか。ちょっと見てみたいけど…。
しかし小説の手法としてはこうした見た目に凝り過ぎなのはちょっとあざといのではと思う。絵本は挿絵が物語と同様に重要だけれども、小説は本来文章だけで勝負するべきものではないだろうか。まぁ旧仮名遣いにする位ならOKかな。
題名通り多くのエンジェルがこの物語には出てきます。熱帯魚を飼いたいという要望を聞き入れてもらうために、母から夜のばあちゃんのトイレ当番をかってでたコウコ。若干の後ろめたさがそこにあります。でも少し呆けて天使のようであるばあちゃんにも、人に言えない辛い秘密があった。そこにコウコが気付くことで、生きることの辛さは皆同じであることにコウコは気付く。
児童文学に位置づけられる本作ですが、大人にも十分読み応えのある一冊です。
評価:




(5つ満点)