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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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生誕祭*馳星周

img20050821.jpgバブル絶頂期の東京。地価も株価も上がり続ける。元ディスコ黒服の堤彰洋は不動産屋の地上げを手伝うことで人を騙し陥れ大金を動かすことに陶酔を感じていた。やがて深みにはまってゆく。地上げの帝王 波潟とその座を狙う若手不動産屋 斉藤、波潟の愛人 麻美、世間知らずの波潟の娘 早紀など、全ての人間がバブル期の好景気という熱病に取り付かれ奔走し、崩壊する様を描く。第130回直木賞候補作。

本作が直木賞候補となった際 『馳星周の新境地』 『ノワールからの離脱』 などと散々書かれていたのでちょっと何かが違うのか、と期待していたのですが、いつもの馳星周節は健在でした。題材もノワールに入るんじゃないの十分?と言ったところ。

私は馳星周は割と読んでいますが、一番好きな作品はやはり 『不夜城』。スーパーバイオレンス作品(笑)ではありますが、健一の心情が非常に繊細に描かれていた点で気に入りました。本作はその不夜城に近い部分もあります。

私は馳星周の短い文章が好きです。簡潔な表現が暴力的で過激な世界を盛り立てていると思います。ノワールを好んで読まない私ですが馳星周だけは読むのは、彼の文章力に惹かれているからかもしれません。

評価:(5つ満点)
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玉蘭*桐野夏生

img20050821.jpg張り詰めた東京での生活に疲れ、全てを捨てて上海に留学した有子。断ち切れない過去への想いは70年前この地で生き同じ想いを抱いた大叔父の幽霊を呼ぶ。玉蘭の花の香りと共に。2つの恋愛を通じて交錯するそれぞれの想いが過去と現在を行き交う。人は愛することの果てに何を見るのか。桐野夏生の恋愛をテーマにした異色作。

『玉蘭』 は私の一番好きな桐野作品です。

桐野夏生は社会事件を題材とした作品を数多く発表していますが、本作はそうした社会派作品ともハードボイルド作品とも一風違った趣の作品です。単行本のあとがきには主人公有子は海外でのキャリアを積むことに疲れ帰国し始めた多くのキャリア女性をモデルにした、とありますが、こうした時代背景とは別に本作は全体を流れる雰囲気が叙情的な部分が非常に気に入っています。

私は一度読んだ本を読み返すことはあまりないのですが、本作は2度目です。初めて読んだときはボロボロ泣きました。その泣いた理由を確かめようともう一度読んでみたいのですが、やはり前回は産前産後の不安定な時期に読んだから泣けたのか、2回目では泣けずに理由は判らず仕舞いでした。

有子は一流大学出のキャリア編集職ですが、外科医の恋人松村との離別を機に上海へ留学します。その地でも狭い日本人留学生社会で苦悩する有子。複雑で繊細な性格故に東京での生活に疲れ、新天地とした上海での生活にも疲れる有子。そこで思うのは別れた恋人である松村のこと。そんな有子の前に現れる大叔父の幽霊との関わりが、作品全体を不思議な雰囲気で包んでいます。

複雑な有子の気持ちが痛々しいほどによく分かり、辛いです。愛はそこにあったのに自分から愛を捨ててきた有子。でもあったと思ったは間違いだったのかもしれない。同じく別れてからも有子を思う松村。2人の確執が【東京戦争】という表現で描かれています。東京での出来事はすべて有子にとっては戦争だった、仕事も恋愛もすべて。その戦争に負けたのだと有子は思っており、戦争だと思わせてしまったのは自分だと松村は悔いているのです。

私が好きな歌で【東京砂漠】がありますが、まさに東京は砂漠のような厳しい土地なのかもしれません。東京でそれぞれの生活を戦い続ける友人達に、オススメしたい作品です。

評価:(5つ満点)

八月の博物館*瀬名秀明

img20050821.jpg道を左に。行きたいと強く思いながら行かなかった夏の博物館へ。作家の<私>は小学校最後のあの夏の物語を書き始める。それはもう単なる記憶ではない。物語の主人公は作家である<私>、夏休みに博物館を訪ねる小学生時代の<私>である亨、そしてエジプトに魅せられた19世紀の考古学者。現在と記憶と空想、3つの物語が時代を超えて連鎖する壮大な物語。

壮大な物語、である確かに。
しかし残念ながらその壮大さが活きているとは思えない内容だった。
仕掛けが大がかりな上、逆効果ではないかと思えるほど活かされていないように感じた作品である。

初めにお断りしておきますが、小説は本当に<好み>だと思う。瀬名秀明氏は 『パラサイトイヴ』 『ブレインバレー』 と代表作を持ち、いずれも文学賞受賞、映画化など高い評価を受けています。がそれと同時に痛烈な批判も受けています。ごく最近もある遺伝子学者が 『【リング】 や 【パラサイトイヴ】 などは遺伝子学的に全く有り得ない話なので読む気にはならない』 というような痛烈な批判をしているのを見ました。DNAが意志を持つ、ということは生物学的に絶対に有り得ないことだそうです。

評価:(テーマで1つオマケ)

プライド*一条ゆかり

img20050821.jpg少女マンガはもう卒業したと思っていたのにまた買ってしまいました、一条ゆかり。看板作 『有閑倶楽部』 はいまだ連載中だそうです。

本作が話題を呼んでいるのはダ・ヴィンチ誌上で何度か見ましたが、ついに今月号の特集が【一条ゆかり】に。特集に組まれたからには読まなくては。と全てにおいて人の【オススメ】に弱い私は早速本作を買いに行きました。書店に1巻しかなかったのでしばらく読み返していましたが、それほど面白くない。この程度で話題作?やはりもう少女マンガは卒業か?と思っていたところ、ようやく2巻が手に入り読んでみたら。

ハマッてしまいました。面白い。
1巻は人物関係説明だけだったので特記すべき内容はないのですが、2巻からの史緒と萌、対照的な2人を巡る人間関係が実に巧妙に描かれているのです。お互いがそれぞれの才能に対して時に嫉妬し時に憎み合う、それが実に巧妙に組まれた様々な 『事件』 に沿って描かれています。いや~展開上手すぎる!!さすが少女マンガ(笑)。久しぶりに少女マンガを数回読み返してしまいました。

ところで少女マンガってやはり男性は読まないのでしょうか?やっぱり面白くないのかな。私は少年マンガからオヤジ系マンガまで面白い物についてはジャンルは問いませんが、この頃の少年マンガはギャグ走り過ぎな気がしないでもないかな。

評価:(5つ満点)

くつくつあるけ*林明子

img20050821.jpgこの頃の第2王子一番のお気に入り。一度読むと3回は読み返しをします。

同じ1足のくつがページ毎に歩いたり走ったりしているだけの絵本なのですが、多くのHPなどでの書評にある通り子どもには 『ぱたぱたぱたぱた』 や 『あいたたたた』 といった言い回しが面白いようです。

第2王子もいつも一緒に 『あいたたたた』 と言っています。『くつくつおやすみ』 のくだりでは頭を横にかしげて 『おやすみ』 ポーズを取っています。親としてはもっと絵柄が変化に富んだ物の方が面白い絵本だと思っていたので、この本に固執する第2王子の反応が新鮮でした。

林明子の赤ちゃん絵本はこの他にもたくさんありどれも好評です。また多くの児童向け絵本も素晴しい作品が多く、特に女の子の絵が表情豊かで素晴しいと思います。第1王子と一緒に 『あさえとちいさいいもうと』 や 『とん ことり』 『はじめてのおつかい』 などは何度も読みました。

まだまだ絵本への興味が同じ時期の第1王子と比べて少なく感じる第2王子ですが、第1王子同様絵本好きになって欲しいと願っています。

評価:(第2王子評)

不思議の国のアルバイト探偵*大沢在昌

img20050821.jpg不良中年親父の危ない探偵稼業を手伝う高校生探偵 冴木隆(リュウ)。事件に巻き込まれ目覚めると見知らぬ『お母さん』と『妹』が居て見知らぬここが『我が家』だと主張する。真相を探るべく街を彷徨い戦闘服の男達や頭上を飛ぶB29爆撃機に遭遇。親父の助けもなく1人殺人鬼と戦うことを余儀なくされたリュウの運命は?
アルバイト探偵シリーズ4作目。


ダ・ヴィンチに大沢氏の 『帰ってきたアルバイト探偵(アイ)』 のインタビュー記事が載っていました。リュウ君帰ってきたらしい。

アルバイト探偵は大沢氏のシリーズ物3作(新宿鮫、佐久間公、アルバイト探偵)のうちの1つで、高校生探偵のリュウ君と元国際スパイで現在私立探偵という輝かしい?経歴の親父殿との活躍を描いたアクションヒーロー物です。

設定通りファンタジーに限りなく近い作品で大沢氏自身もこのシリーズは【ほら話】とインタビューで話されています。

私は基本的にファンタジーが好きです。このシリーズは読んだことがありませんでしたがリュウ君がわざわざ帰ってくる位だから人気があるのだろうと読んでみました。やはり私好みです。

評価:(5つ満点)

なぜ私たちは3ヶ月で英語が話せるようになったのか*本城武則

3kagetueigo.jpg細々と英語の勉強を続ける私に友人が紹介してくれた本です。
『3ヶ月で』 がインパクトある本書。結構来ました。

この本には著者が3ヶ月で英語を話すまでに至った経緯とその努力の方法が書いてあります。そしてその努力は【実は大したことないこと】というのが著者の意見です。

日本人の多くは英語を話す能力があるにも関わらず英語が話せないわけ、として冒頭にIQとEQという言葉が出てきます。
IQはよく知っている通り【知識・知能】。
EQはEmotional Quotientの略で【心の知能・偏差値】を指す言葉だそうです。

【IQが高い】つまり英語を話す知識という素質は十分備えていながら、【EQが低い】気持ちがついて行けないために英語が話せないと思い込んでいる人が多い、というのが本書のコンセプト。
それを打破するための方法論が書かれています。

シルエット*島本理生

img20050821.jpg大学生の恋人と楽しい日々を過ごしながらも思い出してしまう、別れたはずのクラスメートだった彼のこと。彼を取り巻く困難な家庭環境とそれに心を痛める17歳の少女の揺れ動く心を描いた作品。第44回群像新人文学賞優秀作。他 『植物たちの呼吸』 『ヨル』 収録。

『シルエット』 は島本氏17歳の時の作品。若い作品である。そのものズバリ小説の出来も 『若い』 けれども才能の萌芽が見えるということで。

思春期特有の心と身体のバランスについて描いた作品。『わたし』 はずっと心の求める恋人と身体の求める恋人が異なると思い込んできたがそうではなかったことに気付く。という話。『グロテスク』 の感想でも書きましたがやっぱり【女は愛と性とを分けて考えにくい】ということかな。

評価:(5つ満点)
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急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
只今読破中
木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
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かぎ針編み プール
ハマッてます:
車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
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