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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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ワンちゃん*楊逸

wanchan.jpg王愛勤ことワンちゃんは名前のとおりの働き者。女好きの前夫に愛想をつかし見合いで四国の旦那の元へ嫁いできた。姑の面倒を見ながら独身男たちを中国へ連れて行きお見合いツアーを仕切ることに生きがいを見つけたワンちゃん。文學界新人賞受賞、第138回芥川賞候補作。
(楊逸)ヤン・イー。1964年生まれ。中国ハルビン市出身。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社を経て中国語教師。本作で日本作家としてデビュー。

著者は中国出身ということで母語でない日本語にはところどころ面白い、不思議な表現がある。 『この地を踏んでいても…』 歩いていても、ここにいても、という意味らしい。日本人は日本語ではこのように表現しないが、その表現がおかしいというより新鮮で、主人公である中国人女性ワンちゃんの心情をよく表していると思う。

踏まれても踏まれても、子どもを取られてもなお生き抜こうとするワンちゃんの生命力の強さはどこから来るのだろう。居場所を探し続ける物語。

老処女も同じく居場所を探し続ける物語。こちらはワンちゃんのような現実派とは正反対で、恐ろしいまでの時代錯誤というか勘違いというか…。しかしただの勘違い女として片づけてしまうにはその信念が強すぎてむしろ感心してしまう。

表現力に大きな魅力あり。次回作に大いに期待。

評価:(5つ満点)
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涙*乃南アサ

namida.jpg娘の離婚に際し若い頃の苦い思い出が萄子に蘇える。東京オリンピック開催前夜の60年代の東京。戦争の痕跡は残りつつも人々は明るい未来に希望を持っていた。裕福な家庭に育った萄子は婚約者で刑事の奥田勝との挙式を控え、幸せの絶頂にいた。しかし奥田の先輩刑事の娘が惨殺され遺体で見つかり、現場からは奥田の痕跡が見つかったことから事態は一変する。もう自分のことは忘れろと電話をしてきたきり連絡が取れなくなり失踪した奥田。奥田は事件に関わりがあるのか、なぜ自分からも逃げるのか。萄子は奥田の影を求め川崎、熱海、焼津、福岡、そして沖縄返還前の宮古島へと舞台が移り変わる。そこで萄子を待っていた衝撃の真実とは。60年代の史実、風俗を背景にひたすらに婚約者を信じ続けた萄子の物語。
(乃南アサ)のなみあさ。1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『団欒』 『あなた』 など。

幸福の絶頂にいた萄子と奥田。それなのになぜ奥田は逃げ続けるのか。その理由を追い続ける萄子と韮山。見事に仕掛けられたワナのためとやっと分かるラストまで、目が離せない見事な展開。久々に読みふけった一冊だった。

昭和39~41年が舞台。東京オリンピック前夜の日本中の興奮に始まる、経済成長期へ入る日本の活気。それでいて忘れ去ったとは言い切れない敗戦後の苦しい生活の記憶が時折ふと現れては人々を苦しませる、そんな時代を60年代生まれの乃南氏が描ききっている、さすが本職作家。

乃南の描く刑事、警察像は決してキレ者でもなく勘が冴えるでもない。定年まで巡査だろうと自認する韮山もおよそ手柄とは無縁でただ長年培った刑事としての勘と足を使って聞き込みをするという地道な刑事だ。玉木も同じで、よく一人の刑事の勘だけでめくるめく解決がもたされる他の大げさな刑事モノと違い、地についているというか現実味のある展開が非常に好ましい。かと言ってつまらないかということは決してなく、いつもすぐそこに手が届きそうな奥田がまたスルリと逃げてしまう、その萄子の悔しさ、悲しさ、やるせなさがひしひしと伝わってくる。

そしてついに宮古島で奥田を見つけ出してからは、もう必死で読み進んでしまった。これは新聞小説だったそうだがこんなに手に汗握る展開で、毎日読者の皆さんは続きが待ち切れずさぞ辛かっただろうなぁー。

評価:(必読。)

図書館革命*有川浩

toshokankaumei.jpg年始、原子力発電所を襲った国際テロ。それが図書隊史上最大の作戦の始まりだった。ついにメディア良化法が最大の禁忌に手をかける?図書隊は良化法の横暴を阻止できるのか?手詰まった状況を打破する一手を放ったのは何とタスクフォースの山猿ヒロイン! 『図書館戦争』  シリーズ第4弾にして完結巻、これをもっていよいよ閉幕、果たして、幕は無事に下りるのか!(メディアワークスHPより抜粋)
(有川浩)1972年高知県生まれ。ライトノベル作家。2003年 『塩の街』 で第10回電撃小説大賞受賞、2004年同作でデビュー。著書に 『空の中』 『海の底』 『図書館戦争』 『図書館内乱』 『図書館危機』 『レインツリーの国』 など。『図書館戦争』 で2007年本屋大賞第5位。

正直、なぜ最終巻でこのストーリー展開なのか?コレなら1、2巻の展開内容では?むしろ1、2巻頃のドンパチの方が盛り上がっていたではないか?全体的に印象が薄く、図書隊の無鉄砲さがイマイチ感じられない展開でした。

未来企画が 【日和ってる】 のもイマイチだし、情報部の詳細も最後まで分からなかったし、そして何よりも知りたかった柴崎の過去、彼女だけがどうして最後まで吐露されないのだ?4巻に大いに期待してたのに!柴崎があそこまでスレた女のフリをするのはなぜかとか、本当は柴崎も堂上が好きだったとか、そういう展開を期待してたのになぁ。柴崎と手塚のカップルじゃあんまりつまらなくない?ついでに言えば小牧教官のアツアツ恋愛シーンは読むに値せず、要削除っ。

郁の恋愛がついに成就、というのはライトノベルお定まりコースということでいいかもしれないが、4巻までシリーズを引っ張っておいて最後の恋愛模様はややアッサリしすぎでは?…と大人の読者にはやはりツライ内容だったのかも。玄田と折口の関係をもっと描いて欲しかったのに4巻では全く出てこず、堂上くんの図書隊員になるまでの背景も全く出てこず、と色々な面でも消化不良な感じ。

恋愛面以外にもツッコミは多々あり。
まず正化34年(平成34年に相当)の描き方が弱すぎる。34年に駅で切符買って電車には乗らん!カーナビももっとずっと性能いいのが出てるはず。ストーリーもこれじゃ、村上龍 『半島を出よ』 を見てテロリストが福岡を占拠しに来た!みたいで、それだけでその本が出版差し止めになるという展開には無理がありすぎ。しかも今回は郁一人の活躍ばかりでチームプレーが自慢の図書隊、一体どうした!と言いたくなりました。

以上、図書隊関連も恋愛模様も消化不良の感は否めませんが…でもこのテーマが面白かったのでヨシとしましょう。やっぱり一番好きなのは1巻図書館戦争の堂上クンだな!何はともあれ大団円、お疲れさまでした。 『私にもライトノベルが読めた!』 という自信が、この本のおかげでつきました。

評価:(日和ってる堂上クンはキライ)

この庭に*梨木香歩

kononiwani.jpg北国の小さな小屋。雪の降る中、小屋に籠り続ける私は日本人形のような白い顔の少女に出会う。 『この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの』 と語りかける少女。言葉の意味が分からないまま私と少女の交流が続いていく。もうひとつの 『ミケルの庭』 の物語。  
(梨木香歩)1959年生まれ。児童文学者のボーエンに師事。 『西の魔女が死んだ』 で日本児童文学者協会新人賞、『裏庭』 で児童文学ファンタジー大賞を受賞。主な著書に『からくりからくさ』 『エンジェルエンジェルエンジェル』 『村田エフェンディ滞土録』 『春になったら苺を摘みに』 、絵本に 『ペンキや』 『マジョモリ』 『ワニ』 『蟹塚縁起』 など。

大人になったミケルの物語。彼女は今いくつなのだろう?生きることに迷い、シェルターを求めて北国の雪の中に佇む小屋に埋もれるミケル。そこに会いにきた少女。

最初この少女はりかさんの化身かと思いました、ミケルはりかさんに会ったことがないからりかさんを知らないし。もしミケルの幼い頃にりかさんがそばにいたら、ミケルの生き方も変わっていたのでしょうか。

物語としては非常に難解で、ミケルの出生、母マーガレットの生き様、信条、そしてミケルの生まれ育った家とそこに共に暮らす3人の小母、蓉子、紀久、与希子、すべての背景を知らなければこの物語は理解しがたい部分があるかもしれません。逆に蓉子らをよく知る読者にとっては懐かしい友との再会、そして大人になったミケルへの感慨深い想いが同時に湧き上がる、懐かしくも新鮮な物語となっています。

次回作はミケルが主人公になるのかも。期待してます。

評価:(5つ満点)

エーディト、ここなら安全よ*ケイサー

cc6a6236.jpegユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れた第二次大戦時代のヨーロッパに、懸命に生きたユダヤ人の子ども達と彼らを命をかけて守った人々がいた。子ども達を寄宿舎に住まわせ、町z全体で守り通したモアサックの誠意ある人々を描くノンフィクション。  石岡史子 訳。
(キャシー・ケイサー)カナダ在住。ユダヤ人の子どもたちを主人公にした物語やノンフィクションを手がけ数々を受賞。著書に 『ちいさな命がくれた勇気』 。  
(石岡史子)日本のNPO 法人、ホロコースト教育資料センター所属。2000年に同センターで展示したホロコーストの遺品のカバンが 『ハンナのかばん』 として、日本やカナダで子ども向け放送や読み物が作られ話題を呼んだ。石岡とハンナの兄ジョージの協力のもとにカレン・レヴィンが書いた 『ハンナのスーツケース』 はベストセラーとなる。

ホロコーストの現実を、かくまわれるユダヤ人の側から正直に描いた作品。たった11才の少女が両親、最も親しい存在であった姉、幼い弟と別れ、生き延びるために周囲に順応しようと努力し続けた記録が、誇張されることなく描かれています。

エーディトが 『生き続けたい!』 と心の中で叫ぶシーンが印象的です。小学生以上向けに書かれた作品のため、分かりやすく読みやすいのもいいです。アンネ・フランク、ハンナ( 『ハンナのかばん』 )そしてエーディトの物語は、どれも後世に伝えなくてはならない物語です。

モアサックの人々は、ただ 『人が人を良心に従い助ける』 という当たり前のことを、信念を貫いて行動に移しただけ、と言います。ホロコーストは誰もが忘れ去りたい人類の汚点ですが、その一方でこうした時代に真のヒューマニズムを発揮し行動に移していた人々が存在していたこと、人は自ら 【正しい道も選ぶことができる】 、という事実をかみしめて、この物語を子ども達へ伝えなくては、と思いました。

評価:(5つ満点)

家日和*奥田英朗

iebiyori.jpgネットオークションにはまる専業主婦。会社が倒産し主夫となる営業マン。妻が出て行った家で初めて自分の城を作ることができた夫。夫のいない家で妄想に耽る妻。夫婦それぞれの 『家』 に対する想いを込めた、連作短編集。第20回柴田錬三郎賞受賞。
(奥田英朗)1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て作家に。『邪魔』 で大藪春彦賞、『空中ブランコ』 で第131回直木賞を受賞。主な著書に 『イン・ザ・プール』 『町長選挙』 『ガール』 など。
(収録作品)サニーデイ/ここが青山/家においでよ/グレープフルーツ・モンスター/夫とカーテン/妻と玄米御飯

連作短編集として全ての作品のテーマが 【家】 という趣向が面白く、よくできている。

 『サニーデイ』 が秀逸。ネットオークションにハマった妻、自分の出品したものが評価され、徐々に高評価を得るに従い、その快感から顔のシワまで消えてしまったなんて!まぁ女性をよく観察して表現しているものだわ。ラストも秀逸、必読。

奥田作品は展開が見事で、TVドラマか映画のよう。ドラマシリーズにこのままできそうな本作、読んでいて楽しい短編ばかりでオススメ。

評価:(5つ満点)

人のセックスを笑うな*山崎ナオコーラ

hitono.jpg19歳のオレは美術専門学校の講師である39歳のユリと恋に落ちた。歳の離れた2人の交錯する想い。2人はどこへ向かうのだろうか。  『文芸』 掲載を単行本化。第41回文芸賞受賞、第132回芥川賞候補作。
(山崎ナオコーラ)1978年福岡県生まれ。国学院大学卒業。本作で文芸賞を受賞。 主な著書に 『浮世でランチ』 『指先からソーダ』 『カツラ美容室別室』 など。

つまりコレは 『磯貝くんの苦しい若い恋愛を笑うな』 というタイトルですね。
巷で評価を受けているほど私はこの小説に感銘を受けなかったのですが(感覚が若くないということか?)、ユリの猪熊さんに対する想いは淡白を装って本当は熱いみたいだし、磯貝くんはユリに惹かれたというより、自分を好きだと言ってくれるユリの感情が心地よかっただけなのでは?と思うんだけど…。

えんちゃんの位置付けもハッキリしないし、むしろ映画化でユリを美人でくったくのない永作さん、えんちゃんを儚い雰囲気の美少女の蒼井優ちゃんに作り上げたという方が、ストーリーとして納得できてしまう、というか。
映画はどう仕上がったのか観てみたい。

評価:(5つ満点)

気分はもう、裁判長*北尾トロ

saibantyo.jpg身近で小さないざこざから、窃盗、サギ、殺人に至るまで。法廷を覗けばどんな事件にも人間ならではの底知れぬドラマがある。裁判なんてカンケーないよ、という君をスリリングでエキサイティングな傍聴の世界へご招待。理論者のYA向け新書<よりみちパン!セ>シリーズ。
(北尾トロ)きたおとろ。1958年福岡県生まれ。ライター。オンライン古本屋 『杉並北尾堂』 店主。主な著書に 『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』 『裁判長!これで執行猶予は甘くないすか』 など。  

よりみちパン!セ シリーズは以前から学校司書仲間内でいい!と聞いていたのでそのうち読んでみよう、と思っていたらこちらを発見。トロさんが傍聴マニアというのは以前からよく聞いてましたが、最初に書かれた傍聴本であるこちらが中高生向けにだったとは。傍聴マニア、というのも世間が勝手にそう呼んでいるのであって、トロさんご自身はそう思われていないとか。そうですよね、誰だって自分の生活がマニアとは思ってません。ただ、傍聴マニアと言われてもそれで世間に納得されるならいいか、と思い特に訂正はされないとか。大人な対応だわ。

傍聴の正しい姿勢について分かりやすく教えてくれます。章立てで様々な種類の裁判があるのも分かりやすいです。
問>なぜ傍聴という制度があるのか?
答>傍聴により裁判が密室で行われないよう、監視する。裁判に関わる検察、弁護人、そして裁判官が裁判に対して手ヌキしないよう、抑制力となる。
すごく分かりやすかったです。中高生だけではもったいない、大人の方もぜひ。

評価:(5つ満点)
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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
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かぎ針編み プール
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