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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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トマトさん

tomatosan.jpgある暑い夏の日。ミニトマトたちが小川へ泳ぎに行く様子を見て真っ赤なトマトさんも泳ぎに行きたくなった。でも体が重たいので転がることができない。涙を流すトマトさんをみんなで転がしてあげようと虫たちやとかげたちが集まってきた。
(田中清代)1972年神奈川県生まれ。多摩美術大学油画・版画専攻卒。絵本に 『みずたまのチワワ』 『おきにいり』 など。

夏の定番絵本、トマトさん。トマトさんが川へ行きたいのだけれど自分では動けない、と言って大粒の涙を流すようすがたまらなく、いい。このビッグな表情もいい!

最近の絵本はストーリー性を重視したものや、細かい描写にこだわったものが多く見られます。もちろん子どもと大人が1対1で読んでやる時や、絵本好きの大人の方には適しているものも多いけれど、そういった絵本は複数人に向けて行うお話会では向かないのは事実です。お話会に向いている絵本を的確に判断し、それを子ども達に提供していく、お話会を運営する大人の大切な使命です。

…という小難しい理屈は抜きにして楽しめる絵本、が実はお話会に一番適した本でもあった、ということなのです。

評価:(5つ満点)
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梅雨の晴れ間に*乃南アサ

yomyom7th.jpg訳あって下町、谷中の芭子の祖母の遺した家で共同生活を送る芭子と綾香。一回りも違う2人だがささやかな幸せを探しながら一生懸命生きてきた。そんなある日綾香が商店街の福引で大阪ユニバーサルスタジオ1泊旅行を当ててきて…。刑務所で知り合った2人が出所後肩を寄せ合い生きる様子を描く。『いつか陽のあたる場所で』 続編、yomyom7号掲載。
(乃南アサ)のなみあさ。1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。

芭子と綾香がまたまた帰って来ました!相変わらず神経質な芭子と相変わらず能天気な綾香、2人が大阪、ユニバーサルスタジオへ行くことに。

一生贅沢や娯楽とは縁がないと思ってた芭子、大好きなスヌーピーに溢れるユニバーサルスタジオを見て喜ぶ様子を見て、綾香ならずとも読者も本当に良かったなぁとホロリとしたところで…。綾香の旧知に遭う。この展開がやはりさすがだなぁと思う。

どんなに忘れたくとも忘れられない、一度刑務所に入ったという事実。何よりもその事実から自分自身の思いが逃れられない。山本譲司氏 『続 獄窓記』 を読んだ後だけに余計に芭子と綾香の心の痛みが沁みます。

本当に【いつか陽のあたる場所】に、芭子と綾香は辿りつけるのでしょうか?次の回ではそろそろ芭子ちゃんに仕事が見つかっているといいのですが… 今回もラストが秀逸。

評価:(5つ満点)

東京島*桐野夏生

tokyojima.jpgあたしは必ず脱出してみせる。32人が流れ着いた太平洋の涯の島に女は清子ひとりだけ。いつまで待っても無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たしてここは地獄か楽園か?いつか脱出できるのか。欲を剥き出しに生にすがりつく人間の極限状態を容赦なく描く。第44回谷崎潤一郎賞受賞。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、本作で谷崎潤一郎賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。

今回もまたスゴイ小説、桐野氏しか書けない世界。桐野作品の特徴である、人の心の黒い部分をこれでもかこれでもかと前面に出す内容や展開にこの頃やや食傷気味ではあったのですが、それでもなおこれは必読です。

多くの書評を見ると、この作品は現代社会の縮図として描かれている、というようなことが書いてありますが私ちょっと違うと感じました。人が持つ妬み、嫉み、そうしたものよりももっと強くこの物語で描かれているのは、どんな状況にあっても決して失われない 【望郷】 の念、だと思うのです。

清子達が置かれているトウキョウ島の劣悪な衣食住の環境のせいでもなく、狭い社会の憂うつな人間関係のせいでもなく、そうした状況を超越してもなお色濃くみんな、特に清子の考えの最終的な目的は、どんな場合でもやはり 『いつか必ず日本に帰る』 という望郷の念だと感じるのです。いつか故郷である日本へ必ず戻るのだという、清子の恐ろしいまでの執念。彼女が自分を常に島における強者、権力者として皆に印象付けたい理由は、いつか日本へ帰る日に自分が真っ先に戻る(船に乗る)権利を持つためで、そのためには強い男であるホンコン達にすがろうとするのも子どもを産むのも、すべてがそれが 『帰るため』 という。それほどまでに人は故郷、自分の居場所を求めてやまないものなのだろうか?

ということが考えさせられる小説でした。他の登場人物、ワタナベ、森、マンタらも自ら生み出した思想にがんじがらめにさせられてしまう、その様子がありありと描かれていて本当に恐ろしい。それらが荒唐無稽では決してなく、同じ環境に置かれたなら程度の大小はあれ誰もがこのトウキョウ島の住民らと同じ道を辿るかと思うと、それもまた恐ろしい。

恐ろしい恐ろしい、と思っている中で終章のチキとチータのそれぞれの一人語りがやはり素晴らしい。この終章のためにこの作品はあり、そしてこういう終章を用意できる桐野氏という作家はやはり、本物だと強く思います。

評価:(5つ満点)

雨の塔*宮木あや子

amenotou.jpg資産家の令嬢だけが入学できる特別な全寮制の学校は陸の孤島にあった。自由と情報は与えられない閉鎖された環境に閉じ込められた少女達。それぞれに事情を持つ4人の少女らは互いに惹かれあい、愛情や嫉妬の感情に苦しみ出す。やがてその危ういバランスが崩れた時、彼女達の選んだ道は。異色の少女小説。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で  『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 著書に 『白蝶花』。


設定のためか分からないが、ちょっと学校の様子やそこにいる少女達の様子がイマイチ分かりにくい。
4年間何もせず(勉強したいなら授業もあるそうだがほとんどの少女らは何もせず)過ごすと好きな大学の?卒業資格がもらえるという謎の全寮制の大学。そこに4人の訳アリの少女達が入学してくる。

矢咲、都岡、三島はそれぞれ入学が必要な正当な理由があるので学校に来たわけも分かるのだが、小津はなぜこの学校に来たのだろう?彼女には入学する必要がないのでは?そして彼女ならば自立して生きていくことも可能なのでは?そこの読みが甘いのかな、私。

牢獄とも言える寄宿舎に押し込められている彼女らを通じ、自分で選択することの難しさ、自由の素晴らしさ、同時に辛さを思うこととなった。

評価:(5つ満点)

虚夢*薬丸岳

kyomu.jpg愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は心神喪失で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚する。事件から4年後、突然元妻から連絡があった。不起訴処分となった通り魔犯人と街で遭遇したと言うのだ。過去からの苦しみに苛まれ不可解な言動を強めていく元妻。彼女が見たのは本当にあいつなのだろうか。元夫の下した決断は。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で第51回江戸川乱歩賞受賞しデビュー。著書に 『闇の底』。

またしても薬丸岳お得意の大ドンデン。そう来たか!としか言えない見事な展開。
伏線の方にも大きな仕掛けがあり、相乗効果が見事。すっかり犯罪被害者をテーマにした社会派小説の顔が板についてしまった薬丸氏ですが、今回のテーマも重いです。

前半から中盤へと続く元妻 佐和子の病状悪化の様子。心身膠着状態でありながら執念とも言える気迫で迫ってくる、彼女に引きずられるように通り魔犯人を探し始め、そしてついに。訴えたいテーマを明確にしつつ、エンタメ性も軽視しない薬丸作風は1つの表現として素晴らしいと思います。
今回は夫婦愛についても考えさせられました。

評価:(5つ満点)

食堂かたつむり*小川糸

katatumuri.jpg衝撃的な失恋を経験し声が出なくなった倫子。決して好きではない母が1人暮らす故郷へ戻り、実家の離れで料理の腕を活かした食堂を始めることにした。お客は1日1組、希望通りの食事を提供する。 『恋が叶う』 と評判になった倫子の食堂は評判を呼ぶが…。将来を考えた恋人との突然の別れ、狭い共同体で生きることの難しさ、うっとうしいが離れがたい母親への想い。そして訪れる悲劇。一つ一つ乗り越えてゆく倫子の成長を食堂の四季と共に描く。
(小川糸)1973年生まれ。作詞家 春嵐として音楽制作チームFairlifeに参加。絵本作品に 『ちょうちょ』 。  本作で小説家としてデビュー。

倫子が失恋し故郷へ戻り、食堂かたつむりをオープンさせそこが評判になる、という辺りまでは展開としてスムーズだが、おかんの描き方がやや中途半端かな。いまいちおかんの人物像がつかめない。おかんとネオコンの関係もイマイチ分からない。後半への展開もやや急すぎるような印象。さらに…倫子のインド人の恋人の件はもう…どうでもいいわけ?いいんだろうなぁ。

食堂を訪れるいろいろなお客さんの様子はとてもよく分かる、いろいろな客が来ていろいろな料理を提供する。読んでいて非常に楽しい。預かることになったウサギやおかんのペットのブタのエルメスへの倫子の愛情のかけ方もとても良い。

評価:(5つ満点)

ごくせん*森本梢子

gokusen.jpg不良少年らが集まる男子校 白金学園。そこに新任として赴任した久美子の家の家業はヤクザだった!滅法ケンカに強く任侠一筋の久美子が、真っ向から男子高校生らとぶつかり合い共に成長する様子を描いたコメディ。YOU(集英社)連載を単行本化。2002年日本テレビ系でドラマ化(主演 仲間由紀恵)。
(森本梢子)もりもとこずえこ。漫画家。熊本県生まれ。佐賀大学教育学部卒業。 『抱き寄せてプロポーズ』 でデビュー。主な作品に 『研修医なな子』など。

1、2巻は堅いけどだんだんノッてきます、ギャグが私好みです。
強烈なキャラクターが揃いぶみ、黒田一家、2-4(3-4)の生徒達、そして沢田慎の通り名 『赤獅子の若大将』 がサイコーだ!学校の藤山先生、校長、久美子のおじいさんに黒田一家の面々がみんなそれぞれキャラが立っていて、ちょっとした一言のやりとりも非常に面白い、やはりマンガはキャラだなぁ。

この頃はマンガ原作のドラマが多いですが、このマンガのドラマ化が成功したのはやはりキャラクター設定と毎回ワンパターンと言えるストーリー展開を守ったためと思われます。ドラマで毎回ヤンクミが水戸黄門調でワルモノをやっつけるシーン、あれが見たくて毎週ドラマ見てたもんなぁ。マンガではドラマほど毎回水戸黄門シーンがあるわけではないので、ドラマの脚本はうまく作ったなぁとこれまた感心。しかし毎回一緒にドラマを見ていた第1王子が一言
『これって結局は、いつも暴力で解決ってことだよな。』
………。そうなのかも?

マンガでは久美子と 『赤獅子の若大将』 慎との恋愛が見逃せませんっ。

評価:(私好み)

きのう何食べた?*よしながふみ

kinounani.jpg年齢の割に若々しい外見の弁護士 筧史朗と、その同居人で人当たりの良い美容師 矢吹賢二。2LDK、食費月2万5千円で暮らすゲイのカップルの毎日を食生活をメインに展開。 毎回詳細な史朗の料理シーン(レシピ)が特徴。
(よしながふみ)1971年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。漫画家。 『月とサンダル』 でデビュー。 『西洋骨董洋菓子店』 で講談社漫画賞少女部部門、『大奥』 でセンス・オブ・ジェンダー賞特別賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。主な著書に 『愛すべき娘たち』 『フラワー・オブ・ライフ』 など。

料理は美味しそう、でもゲイカップルのストーリーとしてはやや弱いのでは?でもコアなストーリー展開されても困るか…。

2人(シロさんとケンジ)が仲良しなのがいい感じ、ゲイのカップルって本当に2人みたいにスタイリッシュな人ばかりなのかしら。ニュータカラヤ(スーパー)とか出てくるところが超ローカル、Y市に住んでいた頃うちの近くにタカラヤはなかったけど、会社の人が魚が安くて新鮮だと言っていたっけ…。

よしなが氏のマンガは絵もキレイで読み応えがあるのですが、続巻が出るのが遅いのだけが、難。

評価:(5つ満点)
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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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