100円でつくる万能「情報整理ノート」。分類・整理しても使えなければ意味がない。日記帳、行動記録、本の感想、家計簿といった書きもの、貼りものを全て管理できる万能のノートを作る方法を紹介、実際に情報を使うための一元化管理術を伝授する。
(奥野宣之)1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。環境、運輸などの業界紙で記者として活躍。雑誌、フリーペーパー向けに原稿執筆、写真撮影も行う。
話題作なので読んでみました。アイデアとしては参考にはなるものの、いかんせん100円B6ノートじゃ何となく情報が軽そうに見えるなぁ…少しビンボーくさいし(すみません)。
写真も貼るというのが抵抗あるけど、タグを付けてPCのテキストエディターで管理する、というのはかなりのアイデア、こちらは特許並み。
結論としてはやはり、情報管理には個人個人のやり方がある、ということですね。
評価:(5つ満点)
吉原の遊女、朝霧は残り数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった。その男に出会うまでは…。生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、吉原を舞台に遊女達の叶わぬ恋を綴った連作短編集。第5回女による女のためのR-18文学賞大賞、読者賞同時受賞。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。本作で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。著書に 『雨の塔』 『白蝶花』 。
女による女のためのR-18文学賞、というのもやたらに興味深いですが、そういう視点(どういう視点?)でなくともこの作品は素晴らしいです。連作短編集として構成が完璧であり、素晴らしいの一言に尽きます。短編を重ねるごとに人物相関の複雑さ、設定の見事さが生きてくる感があります。
舞台に江戸・吉原を選び、そこでの因襲に縛られながらも日々生き抜いている遊女達のたくましさ、儚さ、愛しさを描いている作品。登場する女たちは本当に可愛い。午後、風呂屋の帰りに手をつないで茶屋へ行く、茶屋で切り子のコップをどれにしようかと悩む様子は幼い少女のようで、頼るものもなく心許ない身の寂しさを同じ境遇の遊女同士で慰めあっている様子を非常によく表現しており、作者の遊女ら登場人物への愛情が感じられるのだ。
連作としては夕霧の回が本当に見事、夕霧の弟 東雲が花宵道中の回に絡んでくるところもおおおっ!と思わせます。
間違いなく実力派。やはり素晴らしいの一言です、必読。
評価:(5つ満点)
戦後最大規模の【鼓笛隊】が日本列島に上陸する。義母と共に園子の一家では避難もせず防音スタジオもないまま、自宅で過ごすことになった。果たして無事に鼓笛隊をやり過ごすことができるのだろうか?9編のファンタジー短編集。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2005年『となり町戦争』第17回小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。本作は第136回直木賞候補作(受賞作なし)。著書に 『バスジャック』 『失われた町』。
(収録作品)鼓笛隊の襲来/彼女の痕跡展/覆面社員/象さんすべり台のある街/突起型選択装置/「欠陥」住宅/遠距離・恋愛/校庭/同じ夜空を見上げて
三崎亜記3冊目。どれもそれなりに面白い、つまりのところどれもイマイチである印象は否めない。申し訳ないが話に勢いがない。
覆面社員
またしてもオチが見え見えのストーリーだが、一番現実味のある話でもある。
突起型選択装置
設定がよく引き込まれたものの、オチが最後の最後まで見えず 『で…?』 で終わってしまった感じ。
「欠陥」 住宅/校庭/遠距離・恋愛
は三崎亜記らしい作品。
だがどれもさらっと表面だけを描きすぎな印象。もっと突っ込んで欲しい。
評価:(5つ満点)
甥っ子の博昭ができちゃった不倫婚、離婚という事態に。伯母のミツエは博昭の元妻、佐智子を心配して訪ねるが、離婚のショックで彼女が奇妙な行動をとっていることを知る。そんな中、博昭の新妻はミツエの娘に近づき事態は複雑になっていた。第31回すばる文学賞受賞作。
(原田ひ香)1970年神奈川県生まれ。大妻女子大学文学部卒業。本作ですばる文学賞を受賞。
ややあやふやな箇所もあるが、登場人物の性格が明快に描かれており分かりやすい。設定も面白さもさながら、それぞれが抱える個人的な悩みが予想に反して重く、考えさせられる。
ティータイム(くつろぎの時)は始まらないのだろうか?ラスト、ミツエのすがすがしい態度がよい。
評価:(5つ満点)
生き抜くために忌まわしい記憶の残る地獄島との関係に決着をつけた水原。しかし彼女自身が巨大な陰謀に利用されていたことを知る。逃げた韓国で知り合った中国の女性捜査官、白理とともに日本に戻った水原は、真実を暴く戦いに挑む。 『魔女の笑窪』 続編、『週刊文春』掲載を単行本化。
(大沢在昌)1956年名古屋市生まれ。慶応義塾大学法学部中退。『感傷の街角』 で小説推理新人賞を受賞しデビュー。『深夜曲馬団』 で日本冒険小説協会最優秀短編賞、 『新宿鮫』 で日本推理作家協会賞長篇賞、吉川英治文学新人賞、「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞、 『心では重すぎる』 で日本冒険小説協会大賞、『パンドラ・アイランド』 で柴田錬三郎賞を受賞。
『魔女の笑窪』 から約2年。久々に水原に会えて嬉しいです。久々の大沢作品、そして久々に息もつかせず一気2日読了でした。やっぱりエンタメ文学は大沢在昌だ!
前作 『笑窪』 で地獄島を爆破した罪を被り、水原は国外へ脱出、釜山へ逃亡する。だがその事件そのものが周到に組まれた罠でそれに自分が嵌められたことに気付いた時、 『借り貸しは必ず返す』 信条の水原はもう止まらない。
日本の広域暴力団がシノギを削る世界に、それにとらわれない、より強力な結びつきを持つ暴力集団が出てきたらどうなるか?日本で韓国の民族マフィア構想があり、水原はそれに巻き込まれていた…というストーリー展開はやはりお見事。相も変わらず警視庁、公安、果ては中国国家公安まで巻き込んでの丁々発止の攻防は今回もスゴすぎます…。
水原に平穏な日々はやはり永遠に訪れないのだろうか?ラストがまたしても(続く。)の予感。オカマの星川、運転手兼秘書の木崎という盟友も戻ってきたし、まだまだ水原の活躍が見られそうです。
評価:(5つ満点)