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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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お縫い子テルミー*栗田有起

onuiko.jpgテルミーは流しの仕立て屋。母も祖母もそうして生きてきた。裁縫道具と身一つで依頼主の家に間借りし、注文された衣装を仕立てる。頼るものは自分の腕一つだけ、何もかも自分だけで折り合いをつけてきたテルミーが、初めて恋に落ちる。初めて自分だけではままならない現実に直面したテルミーの、選んだ生き方。
(栗田有起)1972年長崎県生まれ。名古屋外国語大学卒業。『ハミザベス』 ですばる文学賞を受賞。
(収録作品)お縫い子テルミー/ABARE-DAICO

前々から気になっていた本作、やっと読みました。何で気になってたんだろう… 『流しの仕立て屋』 って何?から始まり、テルミーの孤独に耐える力、それでも人のぬくもりを求めてしまう本能に近いもの、などを率直に描いたところに好感が持てました。

テルミーといいテルミーが惚れてしまうゲイのシナイちゃんといい、同じくシナイちゃんを好きな信田さんといい、破天荒な生き方をしている人しか出てこないのですが、テルミーという生まれつき破天荒な人の視点で描かれているせいか、違和感を感じさせないのがスゴイですね。

いつも人のためだけに服を作ってきたテルミーが、自分のための服の生地を買い、自分のためだけに縫うラストシーンが良かったです。

評価:(ABARE-DAICO未読)
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ソリチュード*山本文緒

yom4gou.jpg春一(はるいち)は昔飛び出した故郷に帰ってきた。父が亡くなったのだ。様々なしがらみから逃れるために飛び出したはずなのに、今生きている場所でもしがらみから逃れられない春一。自分の居場所はどこにあるのか。再会したかつての恋人とその娘 一花(いっか)との交流を通じ、春一は自分自身と居場所を探っていく。yomyom4号掲載。
(山本文緒)1962年横浜市生まれ。神奈川大学卒業。OL生活を経て 『プレミアム・プールの日々』でコバルト・ノベル大賞の佳作を受賞し少女小説家としてデビュー。『恋愛中毒』 で吉川英治文学新人賞、『プラナリア』で直木賞を受賞。主な著書に 『ブルーもしくはブルー』 『ファースト・プライオリティ』 『パイナップルの彼方』 など。


人物設定がいいですね。ソリチュード:孤独。孤独を抱えながら生きている主人公、春一の置かれている立場と心情が説明がましくなくストーリーの流れに沿ってだんだんと読者に伝わってくる、展開が見事です。

まあー春一は万事いい加減な男で、それがいけないことは自分でも自覚しているのですが、故郷に戻り久しぶりに会った友人の武藤に
 『オマエは優柔不断じゃなくて融通が利かなすぎる。義理堅いのではなく傲慢なんだ』 
と言われた時の春一の狼狽ぶりがまたいいですね。あまりにもそれが的を得た発言なものだから。
周囲の女達の要望に全て応えようとするのは単にオマエの傲慢だ、と言い切られ、春一は自分の生き方そのものを否定された気持ちになります。そしてそこから、その気持ちから這い出すにはどうしたらいいか、をようやく自問自答し始める。

やはり読者であるこちら側に 『再婚生活』 後の復帰第一弾、という見方が強く出てしまっているのは否めません。でも男性が主人公という点でもちょっと新境地かなと感じました。ソリチュード、孤独を抱えているのは自分だけではなく誰もがそうだということ。それはまだ小学生である一花も同じだと、春一も読者も気付く。というラストはいいですね。

評価:(5つ満点)

あけるな*谷川俊太郎/安野光雅

akeruna.jpg『あけるな』 『あけるなったら』 『あけるとたいへん』 『あけてはいけない』 と書かれた変な扉。あけてみるとまた扉があって、その中には不思議な世界がどんどん広がり…。谷川俊太郎と安野光雅の伝説のコラボレーション作品の復刊。〔銀河社1976年刊の再刊〕
(谷川俊太郎)1931年東京生まれ。都立多摩高等学校卒業。詩人。主な著作に 『二十億光年の孤独』 『あさ/朝』 『はるかな国からやってきた』 など。絵本、翻訳も多数。
(安野光雅)1926年島根県生まれ。ケイト・グリナウェイ賞特別賞、国際アンデルセン賞受賞。 主な著作に 『旅の絵本』 『はじめてであう数学の絵本』 など。

気になるドア。 『あけるな』 って書いてあったら絶対あけたくなるでしょ。 『注文の多い料理店』 を彷彿とさせる本作、更に私の好きな谷川俊太郎と安野光雅、 『伝説のコラボレーション』 とあったら買うしかないでしょう!と中身も確認せずに注文しましたが…。

正直ちょっと、期待が大きかったです。不思議な世界、の世界観がイマイチかな。でも注文の多い料理店を使う時に一緒に使えるかな、と思っています。小学校高学年から大人向けですね。

評価:(5つ満点)

再婚生活*山本文緒

saikon.jpg直木賞受賞、山手線円内にマンションを買い、再婚までした。恵まれすぎだと人は言う。だが私には。夫婦という葛藤、心と孤独の病、鬱。3年間の闘病と休業後、病んだ心が静かに恢復してゆく様子を日記形式で描く。
(山本文緒)1962年横浜市生まれ。神奈川大学卒業。OL生活を経て 『プレミアム・プールの日々』でコバルト・ノベル大賞の佳作を受賞し少女小説家としてデビュー。『恋愛中毒』 で吉川英治文学新人賞、『プラナリア』で直木賞を受賞。主な著書に 『ブルーもしくはブルー』 『ファースト・プライオリティ』 『パイナップルの彼方』 など。


賛否両論出ていそうな本作ですが、私はこういう形式で3年間の休業を綴り発表した山本氏にまず拍手を送りたいと思います。

確かに山本氏は経済的には恵まれているのかもしれないです、都内の一等地にマンションを持ち、仕事部屋も秘書さんも持ち、更に札幌にも仕事部屋がありそこにも秘書さんがいてくれていつでも好きな時に行ってこられるという。再婚したご主人は出版関係なので作家という職業に理解は深く、別居婚も厭わずその後の同居婚ももちろん厭わず、影となり日向となり寄り添ってくれる。贅沢だ、と言われるとそうかもしれない。

でも。心が病気になるのはこうしたこととは無関係なのです。
本書を読むと、病気になった原因は少なくとも今の夫 『王子』 さんではないと思うのですが、前の結婚生活がやはり関係しているのか、 『王子』 さんとは結婚当初はしばらく別居、という形を取ってます。足繁く自分のマンションに来てくれる 『王子』 が時々うっとおしいと書く山本氏。これが一部の読者の反感を買っているのかもしれないけど、私は素直でいいと思いましたね。

感謝していても、そばにいて欲しい時もあればいて欲しくない時もある。
それを理解しなければ、元々他人同士の結婚なんてうまくいくはずがないんですね。

『リタリン飲んでドーピング。』 という一文が何度も出てきて、笑えないのに笑えました。この本を読んだ後すぐリタリンは抗うつには効果なし、というニュースが流れてきて、ひえーでした。

正直、この本の内容は言わなければ言わなくてもいいことがいっぱい詰まってます。でもそれを敢えて書き、発表した山本氏はやはり職業作家なのだろう、と感じた一冊でした。

評価:(ちなみにうちの王子とは無関係です)

その日のまえに*重松清

sonohinomae.jpg昨日までの暮らしが明日からも続くはずだった。それを不意に断ち切る愛する人の死。死の現実とはまだ遠い40代の男女を題材に、生と死と幸せの意味を見つめる連作短編集。『別冊文藝春秋』 掲載。 
(重松清)1963年岡山県生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。 『エイジ』 で山本周五郎賞、『ビタミンF』 で直木賞を受賞。主な著書に 『流星ワゴン』 『ナイフ』 『送り火』 など。 
(収録作品)ひこうき雲/朝日のあたる家/潮騒/ヒア・カムズ・ザ・サン/その日のまえに/その日/その日のあとで

初めてまともに読んだシゲマツだったが…正直イマイチ読み進めなかった。死に直面するには早すぎる40代の男女が主人公で連作短編、という設定はとてもいいのに、どの短編もなんとなくイマイチな印象。リズムが違うのかな、悪くはないんだけどテンポが合わないというか、優しすぎる感じ。

『その日のまえに』 と 『その日』 は泣けたけど、それでも×3。
シゲマツ氏は優しすぎる人なんだろうなぁ。

評価:(5つ満点)

太陽の黙示録*かわぐちかいじ

taiyo.jpg大震災で富士山噴火や首都圏、関西圏の水没が起こり国土の5分の1が失われ、地割れにより本州が東西に分割されてしまった近未来の日本。経済も破綻し独自復興もままならず、南(サウスエリア)をアメリカ、北(ノースエリア)を中国に管理され、福岡と札幌にそれぞれ首都を構え互いに自らの正当性を主張する南北両政府。分断された国民、台湾へ流れた難民、全世界に散った国を捨てた 『棄国者』 らの行く末は。日本はこのまま外国の影響下にあるままなのか、国民の、国の統一は実現するのか。真の政治家達の攻防を描く。
(かわぐちかいじ)漫画家。1948年広島県生まれ。明治大学卒業。1968年 『夜が明けたら』 でデビュー。主な著書に 『沈黙の艦隊』 『イーグル』 『ジパング』 など。

かわぐちかいじといえば 『沈黙の艦隊』 。戦争がテーマのものはどうも苦手なので未読でしたが、本作のアニメがCATVで放送されてちょっと見てみたら、なかなか魅力的な設定じゃないですか。

日本が文字通り南北に分断されてしまい、軍事境界線となり政治も国民の生活も分断されてしまったら…という壮大なテーマ。同じ言葉を話し、同じ生活習慣を持つ同じ民族であるにもかかわらず、国が2つに分かれてしまい行き来もできなくなったら。まるでどこかの国と同じじゃないですか…。

現在も連載中ということで話は続いていますが、主として若手の政治家達の攻防を描いている作品です。国が乱れたときには政治の王道を行くものが現れなければならない、真の政治家とは何か。頭脳、体力、決断力そして強烈とまで言えるカリスマ性。うーん男性好みのマンガですね。
カリスマ性については、途中新興宗教の教祖も出てきたりしてよく捉えていると思います。

難しい話なのでまとめて読んだ方がいいです、またしばらく経ったら続きを読みます。

評価:(台湾編が面白い)

yomyom4

yom4th.jpgやはり、というべきか、yomyom積読中です。しかし発売とあれば逃すわけに行かず購入、早くも4号。今回表紙は紫色

中篇は山本文緒 『ソリチュード』 。病気で一時期作家活動を休んでいた山本氏、久々の復帰はyomyomから。本作は男性が主人公、彼自身の孤独=ソリチュードについて。なかなかでした(感想は別記事にて)。

毎回楽しみにしている阿川佐和子の連作短編集、今回の 『花』 はイマイチだったかな、花ちゃんのキャラクターが私にはイマイチなじめませんでした。まぁこういうタイプもいるのかも、辛くてもそれを表に出さず頑張ってしまうタイプ。私とは正反対…見習った方がいいかもしれないけどそれができれば苦労はない、と。

エッセイは若手作家、金原ひとみに島本理生。金原ひとみは結局デビュー作 『蛇にピアス』 から読んでない…あれは良かったと思ったのに、その後の彼女の文章を見るにつれ、作品を読もうという意力が減退してしまいました。このエッセイもやっぱり支離滅裂で、ダメじゃないか金原くん。とか思ってしまった。
島本くんは文章が変わらず上手だが、やはり内容はもうちょっと。いつももうちょっと。ううん、惜しい。

そして4号を読み終わらないうちに5号発売が迫ってくるのでしょう…特に今回は2ヶ月後だし。でもこのパンダの表紙ってだけで可愛いんだよね、さすがですね新潮社。

すてる神*乃南アサ

yom2nd.jpg芭子(はこ)と綾香は人には言えない過去を持つ仲間同士。上野谷中で亡き祖母の遺した一軒家で息を潜めて暮らす芭子だったが、この暮らしに入ってから2年、ようやく春を迎える実感を感じるようになった初春のある日、決別していたはずの過去と突然対峙することとなる。生きる意味を常に問い続けてきた芭子が、いつも能天気な友人 綾香も同じ思いを抱えていたことを知るシリーズ4作目。yomyom2号掲載。
(乃南アサ)のなみあさ。1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『団欒』 『あなた』 など。

冒頭からシリーズ物っぽいな、と思っていたら、主人公 芭子と友人 綾香の短編はこれで4作目でした。芭子は常に周囲の目に怯えながら生きています、それは彼女が 『マエ持ち』 つまり 『ムショ帰り』 だから。12歳年上の同じ境遇の綾香が、現在働いているパン屋でパン職人として独り立ちしたいと前向きに生きているのを知りつつも、自分自身は将来をどうしたいか、どうなりたいかを考えてみて、 『何も思い浮かばない』 ことに愕然とする。

ムリとかムリじゃない、ということより全く何も浮かばない、真っ白の状態、という事実に打ちのめされる芭子。いつから自分は夢だとか将来だとかを考えられない人間になってしまったのか。

評価:(5つ満点)
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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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