ちくま文庫版 『見晴らしガ丘にて』 及びカワデパーソナルコミック 『悲しき街角』に分散されて収録されていた当シリーズ。今もなお傑作との聞こえが高い作品が完全版となって蘇る。郊外の街 見晴らしガ丘に住む人々の生活の中に潜む悲しみと幸福を捉えた作品。
(近藤ようこ)1957年新潟県生まれ。国学院大学卒業。漫画家。新潟中央高校在学中に同じく同校在学中であった高橋留美子らと共に漫画研究会を設立した。 『見晴らしガ丘にて』 で漫画家協会賞優秀賞受賞。主な著書に 『ルームメイツ』 『アカシアの道』『うきうきお出かけ着物術』 など。
(収録作品)初恋/GALS LIFE/ママ…DORAEMON/かわいいひと/HAPPY BIRTHDAY/となりの芝生/プレゼント/なつめ屋主人/ご相談/ロマンス/野守は見ずや/改心/宇宙爺/誠実
私は近藤ようこ氏の漫画が好きです。他と比べて地味に見える絵ですが内容は間違いなくヒューマンドラマ。二度三度と読み返してますますしみじみ来てしまう。本作も 『傑作と名高いシリーズ、待望の単行本化!』 の宣伝文句に思わず購入してしまいました。
ただ時代が80年代と結構古いので現代の感覚とややそぐわない部分もあり評価はイマイチです。逆に80年代ってこうだったかも、という視点で見ると面白いかもしれません。私の一番のお気に入りは 『なつめ屋主人』 かな。夫婦のすれ違いを描いたものが多く、身につまされます(苦笑)。
やっぱり近藤ようこは 『ルームメイツ』 が最高傑作ですね。何度読み返しても不思議と飽きないのです。
2007最後の読書となりました。
評価:(5つ満点)
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠。その2時間後、複葉輸送機で500人の特殊部隊が来襲、市中心部を武力制圧した。彼らは 『北朝鮮反乱軍』 を名乗り福岡に新しい国家を建設すると言う。テロを恐れ福岡市を封鎖した日本政府の対応、福岡市民に募る政府への不信感。反乱軍後続部隊12万人が博多港に接近する。恐ろしいまでに冷徹非情で組織化されている北朝鮮反乱軍に対し、立ち上がったのは社会から爪弾きにされていたホームレスの少年達だった。毎日出版文化賞、野間文芸賞受賞。
(村上龍)1952年長崎県生まれ。武蔵野美術大学中退。 『限りなく透明に近いブルー』 で群像新人賞、芥川賞、『コインロッカー・ベイビーズ』 で野間文芸新人賞、 『村上龍映画小説集』 で平林たい子文学賞、『インザ・ミソスープ』 で読売文学賞小説賞、『共生虫』 で谷崎潤一郎賞受賞。主な著書に 『69 sixty nine』 『ラッフルズホテル』 『トパーズ』 『5分後の世界』 『13歳のハローワーク』 など。
久しぶりに読了まで2週間以上かかった本です。それだけすごい量と内容でした。読了後もしばらくサトウの指に書かれていた 『コリョ』 の文字が頭から消えず、頭の中で 『コリョコリョコリョ…』 とリフレイン(笑)。恐るべし、コリョ。
人は集団に属さなければ生きていけないものなのか、集団とは何か?を問う作品ではないでしょうか。仲間、友人、そして国家。全て普段は意識していない集団と、全ての人はつながっており、そこから逃れる術はないという事実。
物語は目まぐるしく多くの登場人物の視点で展開します、一人称が次々と変わる小説の中には視点が捉えきれず煩雑な印象だけを残すものが多い中、本作はさすが村上龍と感じさせる作品でした。それぞれの立場の人物の視点にブレがない、だからこそ他人から見れば 『狂気』 に見えるその人物の意志が直に響いてくる感覚。登場人物の誰にも共感はできないけれども誰に対してもおまえの考えは間違っているとは言い切れない。人の信条、生きるための理念というものは他人が変えることはできないということだろうか。
コリョの兵士達の視点が多く、殺人兵器として育成された彼らもまた、平和な日本に暮らす私達と同じヒトなのだと、そう描いた村上氏。日本と北朝鮮、退廃した資本主義と退廃した共産主義、行き着くところは同じなのか、異なるのか。
この小説の本当に恐ろしいところは、今すぐにも現実として目の前に迫っているということだろう。
年末にすごい本読んじゃったな。
評価:(5つ満点)
yomyom車載中
yomyom5号出ております。やはり積読中ですが今度は車に乗っております。というのも最近の私は完全なる活字中毒となってしまい、ちょっとでも時間に余裕があれば何か読まなくてはモッタイナイ、という気持ちが抑えられないのです。
というわけで車に乗りっぱなしなのでなかなか進みませんが、今号はなんといっても
梨木香歩 『家守綺譚(ヤマユリ)』
家守綺譚の続きが載ってます!大変残念ながら一篇だけ、ああもっと読みたいよう。
阿川佐和子 『波』
今回の阿川さんはいよいよ波ちゃん。次は碧(あお)ちゃんか、いよいよ?能天気に見える波ちゃんにも色々悩むところがあるというのが分かって、なかなか良かったです。
結婚していようがいまいが誰でも最後はひとり。『ひとりで暮らす』 『ひとりで逝く』 ため、シングルが老後を元気に楽しむためのノウハウ本。住まいやお金への対策から介護の受け方、最期の時を迎える準備などを社会学の第一人者である著者が一刀両断。
(上野千鶴子)1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。平安女学院短期大学助教授等を経て東京大学大学院教授。専門は女性学、ジェンダー研究。主な著書に 『老いる準備』 『スカートの下の劇場』 など。
フェミニズムの第一人者として名高い東大大学院教授である上野千鶴子氏。その氏が書き下ろしで書く、全ての女性(と男性)に向けた、老後の過ごし方のハウツー本。とくれば読むしかないでしょう。
上野千鶴子氏と言えば私には、遥洋子 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 でぐぐっと身近になった存在ですが、遥氏の著書では上野センセイ、ものすごーく怖いオバちゃん(すみません)という印象です。しかし男女の区別なく骨太な人が少なくなった今、上野先生のような方はとても貴重な上に尊敬に値する人物だと思います。
さてそんな上野氏が解く 【いかに老後を楽しむべきか】 。まずのっけから本の題名が 【おひとりさまの…】 というところでかなりのインパクトです。しかもシングルであろうがなかろうが、人はいずれおひとりさまになる、という動かしがたいが直視したくない事実を、読者は最初から目の前に突きつけられるのですからかなりキツイ内容かと思いきや、そこはさすが上野氏。読者を想定して難しく直視したくない内容を、分かりやすく丁寧に解説してくれています。さーすーが、社会学の第一人者!文章力だけで脱帽です。
もちろん内容も盛りだくさん、これは読んで損のない一冊です。インパクトありありの語録集となっています。
評価:(5つ満点)