小説新潮別冊。『魂萌え!』 の続編に当たる書き下ろし小説 『朋萌え!』 第1回及び幻の未発表短編に加え、スペシャル対談、多くの作家達からの桐野氏へのオマージュ小説、エッセイ、評論などを収録。桐野氏が個人コレクションであるヴィンテージ服もオールカラーで紹介。小説家としてのバイオグラフィー、コバルト作家時代から現在に至るまでの全ての著書の解説あり。桐野ファンへの永久保存版。
桐野夏生が小説家の中では一番好き。
な私はこれは早速買いました。そして、桐野夏生はずっと独身だと思い込んでいたのですが、結婚されていて、ちょうど直木賞(『柔らかな頬』)を取った時期に高校生だった娘さんが
『取れるといいね』 と言ってくれて嬉しかった、というくだりを読んで、じーんとしてしまいました。
普通の家庭人でもあった桐野氏が、あそこまで複雑でグロテスクな人の心の裏側を書く小説家でもあったのです。そして、今もカッコイイです。この表紙も素敵だし、雑誌の中の写真も素敵なものばかり。
ヴィンテージの洋服をコレクションしている、と読んでなるほどと思いました。人生へのこだわりが非常に感じられます。
今は
『グロテスク』 はじめ現代小説の一人者として著名な彼女が、かつてコバルト文庫作家だったと知ったときは驚きました。多くのコバルト作家達が一般小説作家へ転向していますが、それでもやっぱり
『元コバルト』 と言う感が否めない人が多い中で、桐野氏からは全く
『元コバルト』 カラーを感じていなかったからです。そのコバルト時代のペンネームがずっと知りたかったので、今回この雑誌から分かって良かったです。しかしその著作をこれから読むかどうかは未定です(笑)。
また、直木賞を受賞した
『柔らかな頬』 は当初探偵 村野ミロシリーズとして書かれようとしていたそうです。途中からミロ(探偵)の存在が邪魔に、必要がない状況になってきたので思い切って削ってみたら上手くいった、とありました。
『柔らかな頬』 は私も桐野氏の作品では3本の指に入る秀作と思っていますが、私の好きな村野ミロシリーズとして書かれていたらまた印象が違ったのかなと思います。
書き下ろし
『朋萌え!』 も面白かったです。続き読みたいな。 『魂萌え!』 は妻が主人公でしたが、こちらは妻が著名なキルト作家として日々忙しそうに活躍している夫の、疎外感を軸にした小説です。
ちょっと昔風に言えば
『濡れ落ち葉亭主』。定年して時間を持て余す夫、妻はキルトの教室や個展に忙しく構ってくれない。さて自分はどうしよう…。その後、どうなるでしょう?
たまにムックも掘り出し物があります。こういうムックは再販がほとんどないので売り出されたらすぐ買わないと!です。
評価:





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