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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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Presents*角田光代

presents.jpgこの世に生まれてから死ぬまでの間に女性がもらうもの、を描いた短編集。誕生、入学、初恋、上京、就職、結婚、出産、離婚、死といった一生のうちの節目のプレゼントと、それらにまつわる物語を、角田光代と、イラストレーター松尾たいこのコラボレーションで描く。 『小説推理』 連載を単行本化。
(角田光代)1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『幸福な遊戯』 で海燕新人文学賞、『まどろむ夜のUFO』 で野間文芸新人賞、『ぼくはきみのおにいさん』 で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』 で産経児童出版文化賞フジテレビ賞、路傍の石文学賞、『空中庭園』 で婦人公論文芸賞、『対岸の彼女』 で直木賞を受賞。 主な著書に 『この本が、世界に存在することに』 『あしたはうんと遠くへいこう』 『庭の桜、隣の犬』 『ピンク・バス』 など。
(収録作品)名前/ランドセル/初キス/鍋セット/うに煎餅/合い鍵/ヴェール/記憶/絵/料理/ぬいぐるみ/涙

読む前は同じ主人公の連作短編集だと思っていたので、各章で主人公が皆違っていたのであれとちょっと思いました。でも読み進めていくうちに、この主人公はあの話の母親かな、とかそれぞれそこはかとなくリンクしてたりして、なかなか面白い趣向で楽しめました。

一番好きなのは 『鍋セット』 。どの作品もプレゼント、主に 『物』 を通じ気持ち、想いを贈る、というテーマでかかれてますが、その中には嬉しいことばかりではなく辛く悲しいこともあることを一緒に描いているのがさすが角田氏。2人の関係が切れてなくなってしまっても、共有した思い出、記憶はなくならない。か…そんな心境になってみたいものだわ(笑)。

『ランドセル』 も好きですね。各作品に共通して言えるのは、プレゼントとは物ではなく、物に込められた想いを伝えること、そしてそれを受け取ることなのだということですね。つまりプレゼントとは、思い出そのものなのでしょう。となると私もこれまで色々な方から色々なプレゼントをもらいましたが、大事にして行かなくっちゃな。と王子達のくれたお手紙や工作を見て思ったりしました。

評価:(5つ満点)
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ヴィリ*山岸涼子

wili.jpg母から受け継いだバレエ団を運営するバレリーナ東山礼奈。シングルマザーとしてバレリーナとして、毅然とバレエの道を突き進んでいた。16歳になった一人娘の舞のことだけを思いバレエ団を運営してきた礼奈だったが、43歳になりバレエ団のスポンサーとして現れたIT企業社長に心を奪われる。バレエ団は大掛かりな公演ジゼルを控え、主役のジゼルを踊る礼奈は公私共に充実した日々を送っていると信じていた。しかしバレエに伸び悩む舞が突然宝塚を受験したいと言い出した日から徐々に歯車が狂い始める。美しくも厳しいバレエの世界、常に強くあることを求められ、第一人者でなければならなかった天才バレリーナの苦悩と、逆境により周囲に感謝することを知った礼奈の人としての成長を描く。ダ・ヴィンチ短期集中連載(全8回)。
(山岸涼子)1947年北海道生まれ。北海道女子短期大学美術科卒。萩尾望都、大島弓子、竹宮惠子などと共に24年組と呼ばれる漫画家の1人。 『日出処の天子』 で講談社漫画賞少女部門、『舞姫テレプシコーラ』 で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。 


全8回という短い中で見事なドンデン返し、裏切りの展開が今回も良かったです。主人公が43歳の礼奈というのがまた良かった。礼奈の人生と戯曲ジゼルを重ね合わせ、犠牲の精神で生きたジゼルに対しそれを演じようとしていた自分は結局自分のことしか愛してなかったのではないか、たった1人の娘さえも愛していなかったのでは、と内省する礼奈はちょっと可哀想。

今回もバレエの知識が身に付きます、さすがバレエの造詣の深い山岸氏ならではですね。テレプシコーラの連載休止の合間という位置付けだけではもったいない、上質の人間ドラマです。ぜひご一読を。

コミックス 『ヴィリ』 はメディアファクトリーより10月発売予定です。買って読もう!

評価:(5つ満点)

漢方小説*中島たい子

kanpo.jpgみのりは31歳独身。映画のシナリオライターをしている。元彼氏が結婚すると知ったその日から原因不明の震えにしばしば教われるようになり、救急車まで呼んでしまった。医者を何軒かハシゴした挙句、辿りついた漢方診療所。そこでは 『色々なところが弱いというあなただけの病気』 と診断される。自分の病気は何が原因なのか?迷いながらも漢方に身を託したみのりと、多少の違いはあれそれぞれストレスを抱え生きる友人達との交流を描く。第28回すばる文学賞受賞作。   
(中島たい子)1969年東京都生まれ。多摩美術大学卒業。『チキチキバンバン』 で日本テレビシナリオ登竜門の大賞を受賞。『宇宙のペン』 で城戸賞準入選をはたし、以後映画製作等に携わる。主な著書に 『そろそろくる』 『建てて、いい?』 など。

新しい作家だけど久しぶりにすごく読みやすかった本でした。装丁もいいし。何でかな?と考えてみると、まず 『テーマが明確』 それから 『人物設定が明確』 。これはやっぱり映画の基本手法を学び、実際にその現場で活躍している作者だからできた小説なのか?などと思いました。

主人公みのり自身も周囲の友人達もみなそれぞれ病んでいるが、それぞれの日々を一生懸命こなしつつ生きている、というところに非常に好感が持てましたね。軽くもなく重くもない文章、不思議な感覚の小説で等身大な感じがしました。その後、何かの書評で、中島たい子氏の書く小説は主として30代女性をターゲットとしており読者層が限られそうな危険があるが、それが逆に小説の方向性をしっかりと位置付けているためブレがない出来になっている、とかなんとかあってほほおなるほどなぁ。と30代の私は思ったのでありました。

さらにこの本に感化され早速中医学(漢方治療)の病院をタウンページで探した私…やっぱり相当な単細胞ですな。そしてH市には中医学の病院、やっぱりないのでありました。

評価:(5つ満点)

夕凪の街桜の国*こうの史代

yuunaginomati.jpg昭和30年8月6日、ヒロシマに灼熱の閃光が放たれてから十年。人々は日々生きていた。ヒロシマを舞台に1人の女性が恋をするが、彼女は生への罪悪感に苛まれながら生きていた。戦争とは、原爆とは何だったのか?終わらない被爆者達の生活を描く。手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭大賞ダブル受賞。
(夕凪の街)昭和30年広島市。原爆投下から10年。母と2人生き延びた皆実の物語。
(桜の国1)昭和62年東京都中野区。疎開していて被爆を免れた皆実の実弟である旭の娘、七波の物語。団地に暮らす七波と弟の凪生、父親の旭と祖母の暮らしを描く。
(桜の国2)平成16年東京都田無市。大人になった七波と凪生。定年になった旭の不可解な行動を見守っているうちに広島へたどり着く七波。自身のルーツを再確認する。
(こうの史代)1968年広島市生まれ。主な著書に 『街角花だより』 『ぴっぴら帳』 など。 

8月は原爆の日そして終戦記念日があります。戦争とは原爆とは一体何だったのか。普通に、ごく平凡に平和に広島に暮らしていただけなのに、被爆をし、そしてその傷を一生背負いつつも必死に行きぬいた人々。これはその人々の抱える一生終わらない戦争と、未来へ伝えるべき想いを描いた作品です。映画化も話題ですね。

素朴なタッチのマンガです。それがこの本の言いたいことをより一層際立たせているような気がします。誰もが平凡に平和を求めていた戦時下の広島に、原爆が投下された。家族のうち二度と家へ戻らなかった父と妹、身体全体が腫れ上がってしまった母。共に生きながらえたと思った姉が、原爆投下後2ヶ月での死んだ。常に死の恐怖と戦いつつ、そして全て見聞きしたことを忘れてしまいたいと願いつつ、忘れられず生きてきた皆実と、
周囲の人々との触れ合いを描いたのが第一部の 『夕凪の街』

評価:(読みたい方はご連絡を)

アンネ・フランクの記憶*小川洋子

annekioku.jpg初めて読んだ時に憶えた感動。それ以来幾度となく読み返してきた 『アンネの日記』 。自身が作家となるきっかけとなった本書を胸に、小川洋子がたどるアンネの足跡。生誕の地であるドイツ・フランクフルトから隠れ家生活を送ったオランダ・アムステルダム、終焉の地となったポーランド・アウシュビッツまで。アンネと縁のある地と人々との触れ合いを通じて小川洋子自身が感じたアンネ・フランクの生涯を綴る。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』 など。


小川洋子の原風景は 『アンネの日記』 にあると言う。そう自覚し、明言できる小川氏が本当に羨ましい。人生で起こる素晴らしいことのうちの1つが、『これが自分の本』 だと言える本との出会いだと、つくづく思うからです。

小川氏は十代の頃アンネの日記を繰り返し読み、アンネを誰よりも身近に感じてきたと言います。アンネの綴った言葉で表現されている 『文章で、言葉で自分の想いを伝えたい』 という彼女の強い意志が、小川氏を小説家にしたのだと氏は言っているのです。自身の原風景である本書の背景を探るため、小川氏はコーディネーターと一緒にアンネを訪ねる旅に出ます。本書はそのドキュメンタリー記録です。

評価:(5つ満点)

真鶴*川上弘美

manaduru.jpg失踪した夫を思いつつ恋人と付き合う京(けい)。実母と同居しながら一人娘を育てて来た。夫が遺した日記に 『真鶴』 の文字を見つけたためなのか、京は何かに惹かれるように幾度も真鶴へ向かう。単身で、娘を連れて。そのたびに自分に 『ついてくるもの』 を感じつつ、自己の中の夫への感情を思い起こしてゆく。  『文學界』 連載を単行本化。 芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
(川上弘美)1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。『神様』 でパスカル短篇文学新人賞、『蛇を踏む』 で芥川賞、『溺レる』 で伊藤整文学賞、女流文学賞、『センセイの鞄』 で谷崎潤一郎賞を受賞。 主な著書に 『竜宮』 『古道具中野商店』 『ニシノユキヒコの恋と冒険』 など。

正直言って、良かったのかどうか分からないくらい、読んでいて辛い本だった。何度も涙でページがかすんだ。これでもかこれでもか、と主人公 京の心情が押し付けられ、本当にキツイ。ハッキリ言うとこういう本は精神衛生上あまり良くない…。

川上氏独特の言い回しがやはり多い。一人娘の百(もも)が生まれた時の回想。 『愛しい、というよりただ、近かった。』 愛しい、と感じる以前に子どもは自分から出てきた存在であり、ただただ自分に近しい存在だということしかできない、という京。

10数年も前に失踪した夫、恋人との関係も順調に長く続いており、実母と娘との女3人の暮らしもどうにか成り立っている日々の中で、どうしても断ち切れない夫への想い。そしてそれに気づいている恋人からの非難。自分でも消化しきれない気持ちが、京には 『ついてくるもの』 を出現させる。

評価:(5つ満点)

村田エフェンディ滞土録*梨木香歩

murata.jpg時は明治時代、1890年末。日本とトルコの文化交流のため国費留学生としてイスタンブールを訪れ滞在することになった考古学者の村田。イギリス人である下宿の女主人、奴隷身分である使用人のトルコ人、下宿人のドイツ人にギリシャ人。異国で更に様々な異文化にもまれながら暮らす村田が経験した、不思議な体験や生涯忘れえぬ異邦の友との友情を描く。『本の旅人』 連載を単行本化。
(梨木香歩)1959年生まれ。児童文学者のボーエンに師事。 『西の魔女が死んだ』 で日本児童文学者協会新人賞、『裏庭』 で児童文学ファンタジー大賞を受賞。主な著書に 『エンジェルエンジェルエンジェル』 『村田エフェンディ滞土録』 『春になったら苺を摘みに』 、絵本に 『ペンキや』 『マジョモリ』 『ワニ』 『蟹塚縁起』 など。

1899年、スタンブール。考古学者の村田は土耳古を訪れる。 『トルコ』 ではなく 『土耳古』 である。そこで出会った異邦人達、イギリス人である下宿のマダム、マダムの使用人のトルコ人奴隷身分であるムハンマド、同じ下宿人の独逸(ドイツ)人のオットー、希臘(ギリシャ)人のディミトリス。出てくる言葉使いも文字も明治風であるので時々注釈が入らないと分からない(笑)、それがまたこの時代だという雰囲気を盛り上げています。

『埃及から同胞が来たので迎えに行く。君府を経由して波斯へ行くのだと言う。』
イスタンブールはかつては君府、コンスタンチノープルと呼ばれていた。埃及はエジプト、波斯はペルシャ。

…などと覚えかけた頃、読み終わってしまった(笑)。トルコという遥かな異郷。そこで日本人である村田の異邦人達との触れ合い。宗教、風習、価値観の違いに戸惑いながらもそれを受け止め、互いを思いやろうとする下宿の人々と、村田も自然と思いやりを育んでいく。

評価:(5つ満点)

大きな熊が来る前に、おやすみ。*島本理生

ookinakuma.jpg私の秘密に彼の秘密。2人で暮らすという果敢な冒険を始めてみた恋人達。3人の20代女性を主人公に、人を好きになること、誰かと暮らすことの危うさと幸福感をみずみずしく描く。『大きな熊…』 は第135回芥川賞候補作。
(島本理生)1983年東京生まれ。立教大学文学部在学中。『シルエット』 で第44回群像新人文学賞優秀作、『リトル・バイ・リトル』 で第25回野間文芸新人賞を受賞。主な著書に 『生まれる森』 『ナラタージュ』 など。
(収録作品)大きな熊が来る前に、おやすみ。/クロコダイルの午睡/猫と君のとなり

多様化した男女の関係、心理を描いた短編3作。人を愛することとは、思いやることとは?と考えさせられます。今の若者(に限らないのかもしれないけど…)は相手の世界に踏み込みたいのだが踏み込めない人が多いように感じられますが、逆に踏み込まれたくない部分にズケズケと踏み込んでくる人が多いのかもしれません。

『猫と君のとなり』 が一番良かったですね。 『クロコダイルの午睡』 は怖い話ですが、主人公である霧島さんの気持ちは非常によく分かる。とか書いちゃう時点で私もちょっと怖いのか?

ただ、ここまで島本理生の著作を数冊読んできましたが、やはり 『リトル・バイ・リトル』 を超える秀作が出ないのが残念です。。もうちょっとなんだけど…次回作に期待。

評価:(5つ満点)

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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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