生きてるうちに言えればよかったのだけど…。町の葬儀屋セレモニー黒真珠を舞台にアラサー女子 笹島、メガネ男子 木崎、謎の新人女子 妹尾が織り成すドラマティックハートウォーミングストーリー。 ダ・ヴィンチ連載に加筆して単行本化。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 主な著書に 『白蝶花』 『雨の塔』『群青』 など。
宮木の新境地か、純愛を描いたシリーズ。とは言え社長以下強者揃いのセレモニー黒真珠の面々、キャラが立ちすぎで非常に面白い。一章のみ一人称が妹尾か笹島か読者が迷うように書かれておりやや凝った構成だが、二章以下はトリックなしで素直に読める。それぞれの事情を盛り込んで上手に連作になっているところはやはり宮木の十八番。
読後さわやか?な葬儀屋物語、社長のエピソードがあっても良かったけどそれはベタになりすぎかな?宮木さんは私にとってハズレが全くなく、最も注目する若手作家の1人です。
評価:(5つ満点)
『彼』 の一体何を知っていると言うのか?『私』 のことさえよく分からないのに。心に闇を抱えつつ世界は今日も朝を迎える。男女と親子の営みを描くミステリ+心理小説+現代小説という新しい形の連作短編集。『小説新潮』連載を単行本化。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『しをんのしおり』 『光』 『三四郎はそれから門を出た』 など。
非常に面白い趣向。ラストまで 『彼』 こと村川は一切登場せず、彼が一体どんな人物であったのかもイマイチ掴めない。読了直後それが不満だったが、後から考えるとそれでいいのかもしれない。村川を知ることが目的なのではなく、村川にかかわった人々の様相を知るのが目的なのだから。結局村川は皆にとってどんな存在だったのだろう…憎まれて恨まれて、それでも無視できない存在。それも愛情のひとつだということだろう。
三浦しをんのオタクぶり(?)が分かる、マニアックな物語。
評価:(5つ満点)
めくってびっくり短歌絵本。ユーモラスな絵と解説で楽しく短歌にふれましょう。日常の短歌を114首収録。旬の歌人 穂村弘が選と解説を担当。斎藤茂吉、北原白秋などおなじみの歌人が登場。矢印をめくると広がる素朴な絵を添えて短歌を身近に感じられる一冊。 既刊全5巻。
(穂村弘)1962年北海道札幌市生まれ。上智大学英文学科卒業。歌人、翻訳家、エッセイスト。主な著書に 『シンジケート』 『短歌という爆弾』 『もうおうちへかえりましょう』 『本当はちがうんだ日記』 など。
この絵本、すっごくオススメです。歌人 ホムラさん選首による短歌集なのですが、絵本という形態が常に面白いです。各ページは折りたたんであり、広げるとA3サイズ大の幅に挿絵入りの短歌が一首ずつ。挿絵がつくとこんなに短歌が分かりやすく面白いのか!とかなり目からウロコ。ホムラさんの選首ももちろん抜群です。短歌なんて作れない…という小中高校生の指導にもとってもオススメかと思います。
本書で私が好きな句は
三番線快速電車が通過します理解できない人は下がって(中沢系)
1巻収録。(ホムラさん解説)『えっなに?理解できない、理解できないよ!』 ってのがいい!そう私も理解できないよ!
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会はぬ不思議(大村陽子)
3巻収録。これは沁みる。私達は枕木の数ほどの日々を生きてきたというのに、なぜ愛する人に未だ出会わないのだろうか?うーんやっぱりホムラさんの選首は私の好みにピッタリだあ!
ぜひアナタもこの絵本でお好きな一句を見つけてください。
評価:(企画に万歳)
廃バスに住む巨漢のマスターに手ほどきを受けチェスの大海原に乗り出した孤独な少年。彼の棋譜は詩のように美しいがその姿を見た者はいない。なぜなら彼は人の前に姿を現さずにチェスを指すプレーヤーだったのだ。決して表舞台に出ようとしなかった天才チェスプレーヤーの奇跡の物語。『文学界』 連載を単行本化。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』 など。
ただひたすらにチェスと生きたリトル・アリョーヒンの人生を描く。チェスの相手、それ以外の何者をも求めなかった彼が、最後まで距離を置いていた唯一の恋人ミイラとの関係や、交流を持った数えるほどしかいない人々全てについて、その関わりを丁寧に描いている。
リトル・アリョーヒンの世界はかくも小さく狭かったのに、彼はチェスという船に乗り大海原を旅していたのだ!いろいろと難解なチェスクラブの人間関係など分からないままの部分が多いが、それは 『人にはそれぞれの大切な事情がある』 ということだろう。
ラストも読者にとっては衝撃だが、登場人物らが皆穏やかに受け入れていることが美しい余韻をもたらしている。
小川作品は詩のような雰囲気を伝えてくれる。理解できないが受け入れられる、そんな雰囲気。この世界観が好きな方に。
評価:(5つ満点)
大手都市銀行の行員3名がさらわれた。身代金の要求額は10億円。警視庁捜査一課の若手 上野数馬は覆面捜査専門のバイクチームTOKAGEの一員として初めての誘拐事件に挑む。銀行の取引を知り尽くしている犯人に翻弄される捜査本部だが…。『小説トリッパー』 連載を単行本化。
(今野敏)1955年北海道生まれ。上智大学卒業。『怪物が街にやってくる』 で問題小説新人賞を受賞しデビュー。『隠蔽捜査』 で吉川英治文学新人賞、『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。TBSドラマ 『ハンチョウ~神南署安積班~』 の原作シリーズなど著書多数。
心理戦に長けた特殊班の面々、その活躍を若手上野の目を通じて描くことでイヤミがありませんね。トリックについても読者に徐々に情報を与えてくれるため、この頃多い大ドンデン→そんなのアリかよ!的展開と比べてとても好感が持てます。作者だけが分かっているトリックはハッキリ言って裏切りにあった感じしかしないし。
しっかし女性捜査員はスタイル良くて美人ばかりですねーこれは今野先生だけじゃなくて大沢在昌先生の作品でも全く同じ。どうも男性作家というヤツは…(笑)。この作品は行員3人が一度に誘拐される、という大がかりな事件だということも最初示されている大きな伏線。テンポ良く楽しめます。
評価:(5つ満点)
簡単で効果抜群の脳の大そうじ、脳にポジティブな回路を作る方法、タフな脳にする夜10時ルール。日常生活で仕事で勉強で、脳のすごい力を引き出す7つの方法を伝授。 脳科学者 茂木健一郎による翻訳と解説。
(マーシー・シャイモフ)カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営学修士号を取得。自己啓発セミナーを数々主催するカリスマコーチ。一流企業や大学機関で講演を行う。
(茂木健一郎)1962年東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。主な著書に 『脳と仮想』 『プロフェッショナルたちの脳活用法』 『今、ここからすべての場所へ 』 など。
アハ!でお馴染みの茂木先生の翻訳監修、友人が貸してくれました。これで私の脳もいいことだらけ…なはず!?早速行ってみよう。
まず茂木さんの前書きと原題 『Happy for No Reason』 これをこう訳したセンスに☆1ですね、この題だからこの本は売れた訳です。大きくまとめるとこの本は 【マイナス思考はどんどんプラス思考で塗り替えてしまえ】 ということを言っています。
1) マイナス思考の神経回路には【プラスの上書き】をすればいい。どんどんプラスで上書きが 『可能』 だと言い切ってくれる本書に、大変力づけられます。でもなかなかマイナス思考を手放せない時は…
2) 【ペンを落とすエクササイズ】 を実践する。ネガティブな考えはただ手放すことから始める。ペンをギュ…と握ると離れない。だが手のひらで転がすと手についているわけではない。落とすとペンは、離れる。このようにしてただネガティブな考えを手放すのだと!コレはスゴイ。
3) 【毎日いいことを見つける】 感謝の日記を書く、さらに人に話す、そしてHappyを広げてゆく。第2王子と 『今日あったいいこと報告』 をし合うことにしました。いつまで続くかな…。
4) 【その日のテーマを決めそれに感謝する】 【感謝】 とは 『幸せだから感謝するのではなく、感謝するから幸せなのだ』 とは、まさに至言!!
5) 【自分自身とよく相談する】 書き留める(→既によくしている)。本を開く(→既によくしている)。サイン(啓示)を探す…直感を大切にする。
6) 【宇宙は私の味方】 良く出てくるこの一文、宇宙=世界=神さま、と人によりそのとらえ方は様々と思うが、要するに同じことだそう。 『必ず世界は私の味方だ』 と思えることはとても勇気づけられる。
7) 【付き合いたくない人とは付き合わなくてもよい】 こう言い切ってもらえるのも大きな安心。 『ミラーニューロン』 で人は周りの人の気持ちに影響されてしまう。だから不機嫌な人、怒っている人とは見えない壁や鏡を築いてその影響を受けないようにすること、が大事だそう。
そして最も大切なことは 【人は変わるものだ】 この事実を知ること。私も、人も、変わっていくものなのだ。もちろんそれは良い方向へ向かうことが望ましいことは言うまでもなく。なかなか実用書に手が出ない私なので、こうしてオススメしてもらえるのはとても助かります。またよい本をご紹介ください。
評価:(5つ満点)