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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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パラドックス13*東野圭吾

paradox13.jpg13時13分からの13秒間、地球はP-13現象に襲われるという。P-13現象とは一体何なのか。その時を迎えた瞬間、目前に想像を絶する過酷な世界が出現する。自分達以外誰もいなくなった東京を彷徨う人々、他の人々はどこへ消えたのか。そして世界はどうなって行くのか。崩壊してゆく大都会 東京で残された人々が繰り広げる人間ドラマを描く。
(東野圭吾)1958年大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。『放課後』 で江戸川乱歩賞、『秘密』 で日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。主な著書に 『幻夜』 『白夜行』 『片思い』 『トキオ』 『ゲームの名は誘拐』 など。

もう↑これだけで十分映画的なストーリーであることが伺えますが、荒唐無稽とも言える世界の転換が、数学的理論に基づいた結果であるという展開がまず面白いです。奇抜な話なのですが徐々に世界の転換の理由が分かってゆくにつれて、なるほどそういう理論もアリなのかもな?と思わせてくれる、今回のトリック。今回も東野氏の巧さには納得です。が…

警官兄弟の兄 誠哉が、最後まで自身の弱さを他者に見せないところがちょっと出来過ぎで、どうも好感持てないですね。弟 冬樹も警察官でありながらあまりにも幼くて頼りなさ過ぎだし、ちょっと二人ともステレオタイプ過ぎる。

善悪の判断はその状況で変わるもの。人間関係もその状況で変わるものだ。という厳しいテーマをエンタメに取り込んだ、意欲作。ではあるが、あともう一押しかな。

評価:(5つ満点)
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ポトスライムの舟*津村記久子

potos.jpg契約社員ナガセはある日突然自分の年収と同じ額の世界一周旅行の費用を貯めることを決意する。総額163万円。執拗なまでに節約を試みるナガセはついに目標金額を貯めるのだが。お金がなくても思いっきり無理をしなくても、日々人と触れ合い生きていくことで夢は毎日育ててゆける。第140回芥川賞受賞。
(津村記久子)1978年大阪市生まれ。大谷大学文学部卒業。『マンイーター』で太宰治賞、『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、本作で芥川賞を受賞。
(収録作品)ポトスライムの舟/十二月の窓辺

切れ目のない文章が最初やや読みづらく感じるが、すぐに引き込まれてしまった。ナガセと学生時代の3人の仲間を描いた作品、それぞれの立場、置かれた環境が違っても、ひたすらにそれを受け止めそれぞれの立場で精一杯行きようとする彼女達。こういう設定の小説は数多くありながら本作が新鮮なのは、ナガセが目標に定めた【世界一周の費用163万】という、現実的でない163万円という現実、に尽きる。ここが何と言っても巧い。

同時収録の 『十二月の窓辺』 でも同様に、辛くてどうしようもない状況に置かれている主人公達を描きながらもそこで生きる彼女らの想いを、率直に、ただ丁寧に描いている。久々に純文学を読んだと思った、こういうのが純文学と評される、芥川賞受賞作であるべきだと思う。

評価:(5つ満点)

金原瑞人〈監修〉による12歳からの読書案内とれたて!ベストセレクション

12saikarano.jpg人生の道しるべになる本や元気とガッツをくれる本、不思議な世界を冒険できる本など2000年以降に出版された新しい本の中から選んだヤングアダルト向けの95冊を紹介。
(金原瑞人)1954年岡山県生まれ。法政大学社会学部教授、英米文学翻訳家。ヤングアダルトを中心に幅広いジャンルの作品を精力的に翻訳。作家 金原ひとみの父。著書に 『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』 『翻訳のさじかげん』 など。

今回の読書案内の最大のポイントは、発刊されてから10年以内のものを集めたところですね。古典と呼ばれるベストセラーは多く、もちろん現代の子ども達にとっても必読書であることに変わりはないのですが、やはり常に新しい本を知る必要もあります。その中からまた今後 『古典』 に加えられる一冊が出てくるかもしれないからです。

時代を反映しているな、と感じるのは本書で紹介されているたくさんのライトノベル。実際にYA世代の子ども達が求めている本を紹介できなくて、何がYAのための読書案内でしょう。ということで大人でも子どもでもいい本はいい、はずですね。自分の目だけではなく人の視点を知るためにも時々こうした案内、ガイドブックに目を通すことは大変有効なことだと思います。

以下はこのガイドから私がチェックした本です。

鷺沢萌 『帰れぬ人々』 文芸春秋
伏見憲明 『さびしさの授業』 よりみちパン!セ  理論社
長野ヒデ子 『ひらがなにっき エルくらぶ』 解放出版社
野中柊 『ひな菊とペパーミント』 講談社
三浦しをん 『私が語りはじめた彼は』 新潮社
穂村弘 編 『日常の短歌 そこにいますか』 全5巻 岩崎書店

評価:(5つ満点)

何もかも憂鬱な夜に*中村文則

nanimokamo.jpg施設で育った過去を持つ僕は、刑務官として夫婦を刺殺した20歳の未決死刑囚 山井を担当している。控訴しない山井はまだ語られていない何かを隠している。生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。 
(中村文則)1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部卒業。 『銃』 で新潮新人賞、『遮光』 で野間文芸新人賞、『土の中の子供』で芥川賞を受賞。

中村文則は 『土の中の子供』 がキツくて読めなかったのだが、やはり今回も辛かった、私には重すぎる。この底のない深さは、辻仁成 『海峡の光』  を思い起こさせた。人のバックグラウンドは、本当に幼い頃の家庭で築かれるものなのだろうとしみじみ思ってしまう。

主人公の退廃的な思いには底がなく、読んでいて始終辛い。辛いと感じることも忘れようとしているその生き様に本当に悲しくなる。痛みを痛みとして感じていられるうちは、人はまだ幸せなのかもしれない、と思った。

評価:(5つ満点)

果断 隠蔽捜査2*今野敏

kadan.jpg警察庁から大森警察署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。管内で強盗犯の立てこもり事件が発生。混乱する現場で対立する捜査一課特殊班とSAT。現場で指揮する竜崎に思い切った決断が求められる。『隠蔽捜査』シリーズ第2作。 山本周五郎賞、日本推理作家協会賞受賞。
(今野敏)1955年北海道生まれ。上智大学卒業。『怪物が街にやってくる』 で問題小説新人賞を受賞しデビュー。『隠蔽捜査』 で吉川英治文学新人賞、本作で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。TBSドラマ 『ハンチョウ~神南署安積班~』 の原作シリーズなど著書多数。

竜崎が帰ってきました!相変わらず 『変人』 ぶりを発揮している竜崎は、左遷で降格人事で赴任した大森署の署長としてのっけから 『会費5000円以下の20名以上出席の立食パーティでない会合だから出ない』 などと建前バリバリを本音で言いまくり、PTAも教育委員会も煙に巻きます。名より実を求めひらすらに我が道を行く竜崎のスタイル、これ以上のヒロイズムがあるでしょうか?

今回も竜崎は家族の悩みを抱えながら大事件に挑みます。妻が倒れ入院、ガンかもしれない。でも現場では冷静に事件に取り組む竜崎。今回もただの立てこもり事件が若干時間がかかったとはいえ無事解決した…と思っていたところへ、とんでもない大ドンデンが待ってます。その仕掛けも見事ですね。
直感と言える違和感を決して軽視せず、全ての捜査員の声に耳を傾ける努力をし、その結果見事に真実を暴いてしまう。うーんこれまたこれ以上のヒロイズムがあるでしょうか?

『隠蔽捜査』 で初めて出会ったノンキャリア刑事の戸川とは、本作を通じてこれからも深い因縁で付き合って行きそうな雰囲気です。続編がいつも楽しみなシリーズになりました。

評価:(5つ満点)

NANA*矢沢あい

nana.jpg東京に住む彼氏と同居するため上京する小松奈々、ミュージシャンとして成功するため上京する大崎ナナ、2人のNANAは新幹線の中で出会う。その後ひょんなことから奈々とナナは同居することとなり、二人の生活が始まった。ナナの所属するBLACK STONESとナナの恋人の本城蓮が所属するTRAPNEST、2つの人気バンドのメンバーたちを交えて物語は進んでいく。
(矢沢あい)1967年兵庫県生まれ。漫画家。市立尼崎東高校卒業。大阪モード学園中退。主な著書に 『ラブレター』 『天使なんかじゃない』 『ご近所物語』 など。

巷で話題のNANA、映画化もアニメ化もされたNANA、ついに友人のおかげで21巻まで一気読みができました。それにしても昔は20巻位2日で一気読みが軽かったはずなのにいつからこんなにマンガが読めなくなったのだろう…不思議だ。ということでゆっくり拝読させていただきました。

読む前から 『小松奈々(ハチ)がムカつきます』 という意見をあちこちで見ていたので、好かれるNANA(ナナ)と嫌われ者のNANA(ハチ)の物語なのね、と思っていたらちょっと違いました。どちらのNANAもみんなのアイドルです。でも小松奈々の方はあまりにも他力本願で人生生き抜いているのでムカつくという意見が出るのも納得です、ちなみに私も小松奈々はキライ(笑)。かといって大崎ナナが好きかというとそういうわけでもなく、20代前半だというのに芸能界の真っ黒い面を知り尽くし、そこで生き抜こうとしているブラスト(※バンド名)やトラネス(※これもバンド名)の皆さんに痛々しさを感じつつ現実味を感じることができない、というあまりにも大人な視点でしか見ることのできない自分に、ちょっと寂しさを感じてしまいます。

華やかすぎる芸能界と、その裏の厳しすぎる現実に(薬物中毒とか他人依存症とか)、気が滅入りつつもちょっと大げさでは?と突っ込みを入れたくなってしまう…。でも登場する女の子達が可愛いからまぁいっか、さすが少女マンガの世界。少女マンガはこういう華やかさがないとねぇ。奈々が生んだ子ども達が妙にオトナなのも、ぜってーありえねーと突っ込み入れたくなりますが、そこはマンガだと抑えて抑えて。そして展開もジェットコースターで、さすが少女マンガ、ともう 『さすが』 しか言ってないみたいなのですが、今後の展開もやはり見逃せないなと思ってしまう辺りが、やっぱり 『さすが少女マンガ』 。この引っ張り具合の見事さは見習いたい技術であります。

その他にもナナやブラストメンバーのパンクファッションが非常に勉強になりますね、パンクの人ってやっぱりズボンにヒモ?付けてるんですね、あれ何の意味があるでしょう?速く走れないじゃんね?
ナナはいつもヴィヴィアン・ウエストウッドの服着ていて可愛いですね、嶽本野ばらですな。

と、なんだかんだ言っても続きが気になる一冊です。

評価:(5つ満点)

チェーン・ポイズン*本多孝好

chainpoison.jpg一年待てば楽に死ねる手段を差し上げます。謎の人物からの提案に、自殺を1年先に延ばした孤独な元OLは、時間潰しに児童養護施設のボランティアを始める。もう一つの時間軸ではその一年後、連続毒物自殺事件の真相を記者が追う。無関係と思える人物が次々と毒物で自殺を遂げる、その関連性は。孤独な現代社会に『生きる』意味を問うミステリー。
(本多孝好)1971年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業。『眠りの海』 で小説推理新人賞を受賞。主な著書に 『真夜中の五分前side-A/side-B』 『正義のミカタ』 『Fine days 恋愛小説』 など。

今回も大きな謎が冒頭から出てきて読者を楽しませてくれます。毒物自殺をした女性とその自殺を追う記者、その時間軸は1年ずれている。事件を追う記者と自殺への時間を潰すためにボランティアを始める女性。それぞれは徐々に自殺の時へ迫っていき、そして迎えるラストへの大きな場面転換。今回もお見事としかかいいようがない、読者への裏切りです。

人生に絶望した30代のOL、自分でなくてもできる仕事しかなく、自分を求めている人もおらず、自分がこの世の中にいなくても世の中が全く変わらないことに気づいて愕然とする彼女。自殺を考えた彼女に突然謎のブローカー?が一年後確実に安らかに死ねる方法を渡すと行ってくる。その条件は今から一年だけ生き延びること。その条件を満たすために彼女が始めたボランティア活動に、彼女自身が徐々にハマっていく様子。彼女がハマったのはボランティア活動ではなく、そこにいる人々とつながること、関わることだったのだ。

人は人とつながり、関係を持ち、初めて自分の価値を確認することができる。という物語です。それにしてもこの主人公の30代元OLには、よりみちパンセの 『さびしさの授業』 を読むよう勧めたいな。中学生だって人は孤独だということを知っているぞ。もうちょっと頑張りたまえ、それができるはずだ!

評価:(5つ満点)

三四郎はそれから門を出た*三浦しをん

sanshiro.jpgそれでも本から離れられない。筋金入りの活字中毒者かつオタク、三浦しをんの秘密の日常を詰め込んだ、初のブックガイド&カルチャーエッセイ集。 『Gag Bank』 『朝日新聞』 『anan』などの掲載に加え書き下ろし。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『私が語りはじめた彼は』 『しをんのしおり』 『光』  など。 

三浦しをんのエッセイはかなり私好み。ということで本書も十二分に堪能できました。ファッション誌のエッセイ、全国紙連載のYA向け読書案内、それぞれ読者層が違っても炸裂するしをん節!しをんさんと仲良しという弟さんとのやりとりもバッチリ読めます。このオタクぶり、いいなぁ。

読書案内にある本で私が気になるものをピックアップ。

フジモトマサル 『ダンスがすんだ 猫の恋が終わるとき』 新潮社
若き外科医は不思議な猫に恋する。 「この娘、どこの娘?」 「美しいこの娘、医師苦痛」  恋と革命は現実の壁を越え、物語は始めから終わりまで回文で綴られる。全篇笑いと涙のイラストでせつなく魅了する回文絵本。
ひそかに回文について研究している(?)私、この本は要チェック!しをんちゃんも回文が好きだったのか…やはり共通する何かが!?

哀川翔 『翔、曰く』 ぴあ
「肩書きなんていらない」 「仕事は来た順。だってそれが誠意でしょ」 「信じることをはしょっちゃいけない」 哀しい川を翔ぶ一億人の兄貴からの言葉攻め。1984~2003年までの全発言がここに! 
翔兄イのお言葉集。しをんちゃんが感動したのは 『家族は、族。族の掟は絶対。』 というルール…要するに晩ご飯は家族で揃って食べるべし。というのが族の掟。しをんちゃんならずとも兄イの言葉には、泣けそうです。

乙一 『くつしたをかくせ!』 講談社
夜になると大人たちは、おびえながら子ども達に言った。「サンタがくるぞ!」 大昔クリスマスは恐ろしいものだと考えられていました。すべての人に平等に与えられる祝福を描く、あたたかなクリスマスの物語。英文併記。
乙一作のちょっと意味不明らしき絵本。気になりますね…。

寺山修司 『不良少女入門』 大和書房
わたしが娼婦になったなら いつでもドアーは開けて置く 海から燕が来るように。触れるもの全てを詩に変えた天才 寺山修司の多面的世界。詩とエッセイから今も色褪せないその魅力をさぐる一冊。 
そしてしをんちゃんもやはりテラヤマが好きだった…私とやっぱり、同じじゃん!

よい文章を書くには、よい読み手になることです。と中学校の国語の先生も言ってました。あまりなるほどなと思えない方なのですが(失礼!!)この一言には納得しました。よい書き手への一歩はよい読み手となること。そして今日も日々読書に研鑽するのでありました。

私もちょっとオタクかも…という自覚のあるアナタに、三浦しをんを強くオススメします。

評価:(5つ満点)

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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
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