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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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ダイイング・アイ*東野圭吾

dyingeye.jpgバーテンダーの俺は時々記憶が曖昧になる。自分が死亡事故を起こしていたことを知らされ、その事実に愕然とする。なぜそんな重要な記憶が失われているのか。俺の記憶は蘇るのか?事故を巡る関係者達が徐々におかしな動きを見せ始める…何かの策略にはまってしまったのだろうか?ミステリーかホラーか、最後まで予断を許さない異色作。
(東野圭吾)1958年大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。『放課後』 で江戸川乱歩賞、『秘密』 で日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。主な著書に 『幻夜』 『白夜行』 『片思い』 『トキオ』 『ゲームの名は誘拐』 など。

設定といい展開といい趣向としてはなかなか面白いけれども…やや読者サービス的な表現が多すぎるのとトリックの仕掛けがちょっとイマイチな感じ。一種の狂気を描きたかったのかもしれないけど、その狂気とはどこから来るものなのだろう?

いい感じであるにも関わらずついトリックばかりに意識が行ってしまい、登場人物らの心の動きといったものがやはり見えてこない。主人公はじめみんながみんな、そんなに嫌世的な人ばかりじゃないと思うのですが…。主人公が妙にギラギラして 『いなさすぎ』 というか、この世に未練がなさすぎで、もっと欲を出して欲しいと思ってしまう。

評価:(5つ満点)

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オリンピックの身代金*奥田英朗

olympic.jpg昭和39年夏、オリンピック開催に沸きかえる東京で警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届く。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、1人の東大生が捜査線上に浮かぶ。 戦後急速に経済復興を遂げた時代を背景に、日本社会が持つ格差という病魔への激しい警鐘を描く。
(奥田英朗)1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て作家に。『邪魔』 で大藪春彦賞、『空中ブランコ』 で第131回直木賞、『家日和』 で柴田錬三郎賞、本作で吉川英治文学賞を受賞。主な著書に 『イン・ザ・プール』 『ガール』 『サウスバウンド』  など。

奥田英朗の新境地。と巷で話題の通りの骨太作品。久々に1ページ上下2段組の本を読み、ページが進まない進まない。1冊ですが分厚い上下巻のボリュームがあり十分堪能できます。

この頃の小説は、実は犯人はコイツでした!的な、ラストで大ドンデンというモノばかり読んでいたので、初めから犯人とその周囲について丁寧に追っていく本作は新鮮でした。久々に小説らしい小説で大ドンデン物にはない充足感があります。

昭和39年、『もはや戦後ではない』 と謳われ東京オリンピック前夜の異常な好景気の中、なお色濃く残る敗戦の爪痕が痛々しく表現されています。地方と中央の歴然たる格差、人柱のように働かされ、ヒロポンと呼ばれていた覚せい剤を常習していた出稼ぎ人夫達、東大を中心とする学生運動の堕落した実態、それらすべてを大学院生しかも東大という特権階級に身を置いている自分を通じて島崎は、何を見て何を探ろうとしていたのでしょう。果たして一連の事件はすべて島崎個人に原因があるのだろうか?

ここまで考えるとすぐに思い浮かぶのは、現代の格差社会が生んだ現代のテロリスト達。記憶に新しいのは秋葉原無差別殺傷事件。犯人個人の問題としようとする動きと格差社会が生んだ弊害だとした動き。どちらが正しいとも間違っているとも言い切れない、この 『時代』 が生んだとしか言えない大事件。誰もが幸せを求める時代に、それを求めても与えられない人々がいる、その事実が、重い。そしてその昭和39年(1964)から半世紀近くたった現代でも全く事実が変わっていないことが非常に、重い。

冒頭、島崎が郷里の村の女に頼まれて出稼ぎに行ったまま行方不明になった彼女の夫を訪ねるシーンで、つくづく幸せって何なのだと打ちのめされる。家族と幸せに暮らす、たったそれだけの幸せさえも望んでも叶えられなかった時代。豊かさが目に見えるようになったとは言えいつの時代もその時代を生き抜こうとする強い意志がなければ生き抜けないのだろうか?島崎はその意志が弱かったということなのだろうか?
そうではないと思う、ただ他人の幸せの上に自分の幸せがあることを知ってしまった以上、知らぬフリができなくなったということなのだろうか。

工事現場の飯場での人夫同士のいさかいを見て、島崎は嘆く。自分達をこんな生活に押し込んだ社会体制に対する不満ではなく、同じ底辺にいる者同士が不毛に争う姿を見て、心底嘆く。これも人夫達が単に世の中を 『知らない』 からなのだろうか?

60年代から数えて約半世紀。時代は良くなったか?それとも格差はこれからも依然として存在し続けるのだろうか。幸せはどこにあるのか、考えが止まらない小説である。ぜひご一読を。

評価:(必読。)

ラインマーカーズ*穂村弘

linemarkers.jpg体温計 くわえて窓に額つけ  「ゆひら」 とさわぐ 雪のことかよ
歌人 穂村弘が贈る、甘くて痛く、優しくて怖い想い。既刊の歌集と未収録作品から400首を選び書き下ろしを加えたベスト歌集。
(穂村弘)1962年北海道札幌市生まれ。上智大学英文学科卒業。歌人、翻訳家、エッセイスト。主な著書に 『シンジケート』 『短歌という爆弾』 『もうおうちへかえりましょう』 『本当はちがうんだ日記』 など。

俵万智氏と同世代の歌人、穂村弘氏のベスト歌集。穂村さんは人事課長をやりながら歌人であるという、そのライフスタイルも現代を代表する歌人です。金原瑞人のYA向け読書案内でも推薦のこの一冊、その読書案内によれば俵万智 『サラダ記念日』 が**万部売れたのであればこちらも**部売れてもおかしくない内容、とあり私も買ったわけです。

極度に恋愛恐怖症(?)、対人恐怖症(??)のホムラさんが贈る短歌、詩の数々はやはりキョーレツです。
ホットカルピスを飲んでいた顔見知りの女が、急に私に向って 「カルピス飲むと白くておろおろした変なものが、口からでない?」 と、いった。私はとても驚いて、「でる。」 と反射的に答えながら、この女と付き合おうと決めていた。(穂村弘「ごーふる」より)
という詩の一節など、ちょっと素晴らしすぎるっ。と私もおろおろしたものが出そうなほど興奮(笑)。

短歌なんてどうやって作ればいいのさ、という中高生から短歌って自分でも作ったっけ、と思いだす大人の方まで、すべての世代の方にオススメします。歌集を読んでホムラワールドに一緒に浸りましょう。オタクの世界は案外貴方の世界と近いかもしれませんっ。

評価:(5つ満点)

かーかん、はあい*俵万智

kakan.jpgシングルマザーの歌人である著者が、子どもの成長を見守り育児の中での感動的な発見を綴った朝日新聞夕刊連載のエッセイ集。1歳から3歳児までの子どもの本の選び方の読書案内に短歌を添えた作品。
(俵万智)1962年大阪府生まれ。本名同じ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。元高校教諭。主な歌集に 『サラダ記念日』 『かぜのてのひら』 『チョコレート革命』 『プーさんの鼻』 。

短歌、気になります。短い中に込められた作者の想い。その濃厚な言葉の連なりに、同じ言葉である日本語を操るものとして、激しい嫉妬を感じております(笑)。

気になる読書案内はすべてチェックしている中に、俵万智氏の本書がありました。そして40歳を過ぎてシングルマザーの道を選んだとも。へー知らなかったわ、ということで見てみました。

選んである本は小さい子ども向けでベストセラーとなっている本ばかりで特に珍しいことはないのですが、本書の一番の特徴はそえぞれに添えられた短歌の素晴らしさ。俵氏の子どもさんが気に入った絵本の紹介がほとんどですが、その彼の本に対する思いを母が短歌で代弁している、この見事なコラボレーション。どちらが欠けても成り立ちません。

想いを短歌に込める。その芸術とも言える技を持つ歌人という存在は、やはり眩しいです。

評価:(歌集としてご覧ください)

隠蔽捜査*今野敏

inpei.jpg警察庁キャリアの竜崎は生真面目過ぎて同僚のみならず家族からも変人扱いされている。警察組織を揺るがす大事件に直面した竜崎は、組織をそして自らを守るために決断を下す。霞ヶ関の本庁舎で組織に逆らい孤立無援の闘いに挑む彼に未来はあるのか。吉川英治文学新人賞受賞。
(今野敏)1955年北海道生まれ。上智大学卒業。『怪物が街にやってくる』 で問題小説新人賞を受賞しデビュー。『隠蔽捜査』 で吉川英治文学新人賞、『果断 隠蔽捜査2』 で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。TBSドラマ 『ハンチョウ~神南署安積班~』 の原作シリーズなど著書多数。

今野敏のハードボイルドは、私好みです。今年の課題作家 今野敏はまずこちらから。

偏屈で頑なな警察庁官僚の竜崎。浪人中の息子が現役で有名私大に受かったのに 『東大以外は大学じゃない』 と東大入学を強要したりして家族からも変人扱いされている彼を、好きになれるだろうか…と読み始めたのも一瞬で、みるみる引き込まれてしまいました。表向きは強くありたい、他人にもそう見せたいと常に思い努力している竜崎の、同期キャリアである伊丹への強すぎるコンプレックスがまたいいですね。そのコンプレックスというのは小学校時代に彼から受けたいじめが原因…というのがまたいい(笑)。三つ子の魂百まで、か?

真実を隠そうとする警察組織に真っ向からたった一人で立ち向かおうとする竜崎。それは正義感というより彼自身の生きるための信念とでも言うべきものか。妻には家を守れ、俺は国家公務員として国を守る、と言い切る竜崎。その滑稽とも言えるまでに無骨な信念を持ち、不器用でただ実直な憎めないヒーロー。

続編もこれから読むのが楽しみです。正統派ヒロイズムが好きな私にピッタリの作家が見つかって嬉しいです。

評価:(5つ満点)

金魚生活*楊逸

kingyo.jpg中国の東北部の小さな町でレストランに勤める林玉玲。未亡人だが美貌が自慢。店の店長が大事にしている金魚の世話係を頼まれている。結婚して日本にいる娘の出産の手伝いのために来日した玉玲は、娘から日本人との再婚を勧められるが…。
(楊逸)ヤン・イー。1964年中国ハルビン市生まれ。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社を経て中国語教師。『時の滲む朝』で芥川賞受賞。他の著書に 『ワンちゃん』。

楊逸の小説に登場する中国人女性は皆、たくましい。つましい暮らしに不平不満を言わず、それをありのまま受け入れる、というたくましさ。本来人は皆そうであったはずなのに、どこで日本人は間違ってしまったのだろう?

玉玲は日本で暮らす娘の出産を手伝うため来日する。日本語も分からず右も左も分からない彼女が出会う日本社会。そこで暮らす森田と名乗る中国から帰化した女性、日本人として暮らす道を選んだ彼女の存在と発言、考え方を通じて日本という国が抱える歪みを垣間見ることができる。何でも揃っていて人々は豊かで満たされているはずなのに、玉玲が強く感じるのはその豊かさに対する憧れではなく、国に残してきた内縁の夫のこと。彼の存在そのものと言うより彼を含めた彼女の故郷、帰るべき故郷、ではないだろうか。

望郷、についてしばし考えました。

評価:(5つ満点)

女神記*桐野夏生

josinki.jpg海蛇の島の大巫女の家系に育ったカミクゥとナミマの姉妹。姉は生命を司る昼の巫女、妹は死を司る夜の巫女となる運命だった。ナミマは掟を破り恋人と島を抜けるがやがて命を落とし、女王イザナミが司る黄泉の国に落ちる。自分の死の真相を知りたいナミマは黄泉の国で蜂となり現世に戻るが、そこでナミマが目にしたものとは。古事記をモチーフにした 『新・世界の神話シリーズ』 の一冊、世界20カ国で翻訳/発売予定。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。

読み始めるまではあまり気が進まなかった本書ですが、読み始めた途端一気に読んでしまいました…久々にご飯の支度しながら立ち読みしましたよ(笑)。
古事記のイザナキ・イザナミのエピソードをナミマという架空の島の巫女を語り部にして脚色し、見事なストーリーに仕上げた桐野氏はやはりさすが。イザナミから見れば、彼女を捨てた非情な夫イザナキが彼自身の持つ永遠の命、すなわち 『死ねない運命』 という宿命に苦しむ姿を描いたのも、見事です。

イザナキ・イザナミがそれぞれ陰と陽を表すように、島の昼の巫女であるカミクゥと夜の巫女であるナミマを作り上げ、それぞれの悲しい運命とその運命から最後まで逃れられない苦しみを、見事に神話の世界と連動させています。新・世界の神話、面白い試みです。

評価:(5つ満点)

29歳

29sai.jpg結婚、出産、恋、仕事、夢、迷い、あきらめ、自信…。何かが終わり、始まる。ふと自分を見つめる時とは。29歳独身女性8人の等身大の物語。 『日経ウーマン』掲載を単行本化。
(収録作品)私の人生は56億7000万年(山崎ナオコーラ)/ハワイへ行きたい(柴崎友香)/絵葉書(中上紀)/ひばな。はなび。(野中柊)/雪の夜のビターココア(宇佐美游)/クーデター、やってみないか?(栗田有起)/パキラのコップ(柳美里)/憧憬☆カトマンズ(宮木あや子)

アンソロジーは思わぬ作家に出会えるという幸運もありますが、たまにすごくハズレな短編をムリクリ読まなくてはならない、という苦痛?を伴うこともあります。今回は宮木あや子を目当てに読み始めましたが、8編のうちアタリは以下の通り。
クーデター、やってみないか?(栗田有起)
パキラのコップ(柳美里)
憧憬☆カトマンズ(宮木あや子)

日経WOMANは読者層を非常に意識して作っている(それはどの雑誌もだ)から、掲載小説もこうなるのは仕方ないのか…つまり私はもう日経WOMAN世代じゃないってことなのだ。栗田有起、宮木あや子はやはり今回も小気味いいです。あまり私好みじゃないと思っていた柳美里が今回なかなか私にハマり、良かったです。正直嫌いかもと思っていただけにあまり最初の印象だけで決めず柳美里ももうちょっと読んでみないとだな。と思いました。中上紀、宇佐美游は初読です。

評価:(5つ満点)
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今週の私
急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
只今読破中
木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
読書 映画鑑賞 観劇
かぎ針編み プール
ハマッてます:
車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
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