高い評価を得ている原作に忠実に沿った内容なのでした。映画という映像表現ならではの現在と過去の場面切り替えが巧みなシーンが多く、素晴らしいと感じました。
昭和33年(原作では30年)の広島のセット、背景はCGであることが分かりますがそれでもなお見事ですね。バラック街の様子もよく出来てます。昭和30年代の洋品店、設計事務所の様子、会社の雰囲気など考証がきちんとできているので、見ていて違和感がなく安心していられます。
第一部の 『夕凪の街』 では原作にはない皆実と恋人 打越と、弟 旭との交流が多く描かれているのが、第二部の 『桜の国』 にも繋がっており、物語の軸としているところがいいですね。
田中麗奈は今回も良かったです、彼女の持つ存在感はやはりスクリーン向き、強すぎる個性が私は好きです。彼女に比べると東子役の中越典子はどうしてもどのドラマでも同じ感じに見えてしまってやや残念。もう少し東子の儚い部分や芯の強い部分が出なかったものか…ということを色々考えてみてもやはり映画は女優ですね。
評価:(5つ満点)
女王の品格
ヘレン・ミレンが素晴らしかったです、女王としての品格、威厳、存在感、そして苦悩と孤独を抱える様を見事に体現していました。必見です。
誰もが記憶にあるダイアナ妃のショッキングな事件。彼女の数奇な人生と対極をなす、伝統と格式を重んじるイギリス王室。その中心人物であるエリザベス女王にスポットを当てた本作は、映画の作りが女王贔屓かダイアナ贔屓か、ということよりも、こうした映画が作られたことそのものに拍手を贈りたいですね。
女王一家が休暇を過ごしていたスコットランドのバルモラル城の質素な様子、周囲の広大な自然と鹿狩りの様子、そしてその自然の中でみずからレンジローバーを運転し、川を渡る女王の姿が、痛々しくも凛とした姿で素晴らしかったですね。映像の持つ魅力で余す所なく女王の心情を伝えていたと思います。
評価:(5つ満点)